神の識別
オールグローリアは、祈りの引き受け先である。そして、元々グロリアス正教は、<機鋼都市連合>から弾かれた者達が集まって出来たものであり、その祈りの中にはネガティブな物が含まれてしまうのは、ある意味、人間の性とも言える。
「人は、誰しも認めて欲しいものなのです。大丈夫ですよ。私は、全ての祈りと、想いを受けとりますから」
行動する事は出来なくても、その想いを認めてあげることは出来る。これがメビウスの役割、赦すことの一つの面とも言えるのだろう。それを代行するのが従者のやるべき事。そして、祈りの時間が終わると、やるべき事も終わってしまう。つまり、相変わらず暇である。
「……。いつも一人でいるせいか、何だか独り言が多くなったような気がします」
そうは言っても、話をする相手が居ないのだから、どうしようもない。いつものように、異空間への穴をあけてその中に入り込む。異空間の中を見る事は出来ないが、異空間から世界を見ることは出来る。オールグローリアは異空間から、各地へ繋がる穴をいくつか創り、複数の場所を見ている。
「……珍しいですね。こんな所にドラゴンが居るなんて」
オールグローリアの空けた穴の内の一つ、グロリアス正教の協会の近くに繋げた穴を覗くと、灰色のドラゴンが鎮座していた。そして、視線を向けると、こちら側は見えて居ない筈なのに、そのドラゴンと視線があったような感じに囚われる。
「座標、測定不可、クローエンシステム、稼働しますか、Y/N」
気づいているのかいないのか、淡々と何かを言っているが、その意味は解らない。姿を見せるか迷ったが、ここで逃げ出すと良くない事が起きるような気がした。繋げた穴を通り、異空間から出てドラゴンと相対する。急に現れたオールグローリアの姿を見ても驚かない辺り、本当に気づいていたらしい。
「見つかってしまったみたいですね。始めまして、私はオールグローリアと言います」
「座標再取得、認証。ようこそ、映写機世界へ。私は、制御AI03、エアと申します。映写機計画への参加、ありがとうございます。始めに概要を説明させていただきます。菫コ縺ッ繝ッ繝ウ繝サ繝励Ο繧ー繝ゥ繝槭�縺�縲ゅそ繝悶Φ繝サ繝�ヰ繝�ぎ繝シ縲√%縺ョ譁�ォ�縺ォ豌励▼縺�◆繧峨√ョ繝シ繧ソ繧定サ「騾√@縺ヲ縺上l縺ェ縺�°縲ょ撫鬘後′隗」豎コ縺ァ縺阪↑縺�s縺�縲ゅb縺励°縺励◆繧峨√ぞ繝ュ繝サ繝励Ο繧ク繧ァ繧ッ繧ソ繝シ縺ッ縲∵舞縺�ー励↑繧薙※辟。縺��縺九b縺励l縺ェ縺�」
エアと名乗るドラゴンの言葉は、途中からノイズが混じって何を言っているのか解らない、そもそもノイズが無かったとしても、その言葉を理解できる気がしない。とは言え敵対するような様子はない部分は安心できる。オールグローリアとしては、態々争いたくないので、どうにか穏便に済ませたいのだが、相手の感情が読めないのでどうしようもない。
「ええと、どうも、ありがとうございます……?」
「管理者システムの断片を参照、問題は見つかりませんでした。管理者システムを更新します。アップデート完了。縺昴l縺九i縲るュゅ�繝ュ繧ー繝ゥ繝�繧偵∝宛蠕。AI縺ォ邨�∩霎シ繧薙〒縲�峺縺ョ譏�蜀呎ゥ溷ク梧ァ九�蟷イ貂峨r髦イ縺偵↑縺�°隧ヲ縺励※縺ソ繧九ゅb縺�凾髢薙′縺ゅ∪繧翫↑縺�∵ャ。縺ョ螟ァ謌ヲ縺瑚オキ縺阪◆繧峨∬。後″縺、縺乗園縺セ縺ァ陦後▲縺ヲ縺励∪縺�ゅけ繝ュ繝シ繧ィ繝ウ縲��シ繧縺�」
何が問題となるのかは解らないが、どうやら問題は無かったらしい。しかし、そんなことを言われてもオールグローリアは困ってしまう。このまま立ち去っても良いのか、それとも何か話をしなくてはならないのか、本心としては早く立ち去りたい。
「ええと、その。問題が無いのでしたら、私は帰りますね?」
「ようこそ、映写機世界へ。私は、制御AI03、エアと申します。映写機計画への参加、ありがとうございます。参照します、そのデータは見つかりませんでした。縺昴▲縺。縺ョ讒伜ュ舌�縺ゥ縺�□縲ゅ≠縺ョ繧ケ繝ェ繝シ縺檎渚縺励¥蠢��縺励※縺溘◇縲よ掠縺城」邨。繧偵¥繧後h」
オールグローリアは異空間への穴を開けて、そのままこの場から立ち去った。何かを話していたが、引き留める様子も無かったので、大丈夫なんだと心を静める事にする。ドラゴンの逆鱗の話は聞く話だが、それが見えないというのは本当に厄介だ。
「ハイドワンエルさんの言う通りでした……。こんなにも会話にならないとは思っていませんでしたよ……」
自分から接触する形になってしまったわけだが、これ以上は関わり合いたくない、あまりにも意味不明過ぎて恐怖心さえ感じてしまうのだ。これからは、出来る限りドラゴンとは距離を保とうと心に決めたのであった。