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神の同僚

 グロリアス正教を任されたオールグローリアではあったが、その実、仕事はそんなに多くない。信者達の祈りを受け止める事に尽きる。その祈りを受けてどうするのかは本人次第なのだが、現状動く予定はない。


「……私にも出来る事の限界があります。叶えられそうな願いだけでも、動くべきでしょうか」


 オールグローリアの持つ力は、基本的に心に作用するものであり、即物的なものをどうにか出来るものでもない。だからと言って、世界平和だとか、大きすぎるものをどうにかするような力も無い。そうなると、実際に出来る事は、本当に少ないと言って良い。


「やめておけ。下手な希望は、絶望と変わり無いからな」


 思考の中に沈むオールグローリアの意識を浮上させたのは、いつの間にか背後にいた人物、見た目はどことなくバウトの姿をしたメビウスに似ていて、木で出来た杖を持っている。初対面ではあるが、どうにもこの人物に心当たりがある。


「もしかして、貴方がもう一人の従者ですか?」


「そうだ。名はハイドワンエル。お前が天から見る存在ならば、俺は地上から見る存在だ」


 ハイドワンエルには、オールグローリアのような白い翼も無ければ、頭の上の光の輪も無い。人の中に紛れるには良いのかもしれないが、人外の存在だと言っても、寧ろ信じる事は出来ないだろう。


「いつの間にか後ろに居て驚きました。空間干渉の力を使って転移してきたでしょう?」


 オールグローリアからしてみれば、気配を感じさせずいつの間にか後ろに居たというのは、空間を転移して、後ろに現れたからだと予測した。だが、ハイドワンエルは首を横に振り、否定した。神聖の存在とは、常に事実のみを伝えなくてはならないので、嘘をつくことは無い。


「俺の持つ空間干渉の力は、近くの空間を引き寄せる力だ。簡単に言えば、一歩で数メートル歩くことが出来る。自由に好きな所に転移出来る力では無い」


「それでは、私が貴方に気づけなかったのは、単に不注意という事ですか?」


「いや、俺の力は気配を断つ力だからだ」


 それを聞いて、オールグローリアは疑問に思う。何しろハイドワンエルの根源は希望であり、それが気配を断つことになんの関連性も無いように思えるからだ。権限は根源であり、そこから力が発現するので、関係ないものが出てくるのはあり得ない。


「それが、貴方の希望の力なのですか?」


「疑問に思っているようだな。希望とは、希薄な望みでしかない。それが現実となるなら、最早それは希望では無い。希望の存在である俺は、幻に過ぎないという事だ」


「なんとなく解りました。ですが……ええっと、便利そうな力ですね」


 一歩で長い距離を歩ける力も、気配を断つ力も、従者が持つにしては微妙と言える。オールグローリアは言葉を濁していたが、ハイドワンエルには何が言いたいのか筒抜けであり、微かに苦笑いを浮かべる。持っている力が微妙な事位、本人も理解している。


「お前はもっと強力な力を持っているんだろう?」


「ええっと、人を操る事の出来る、信仰と支配の力と、異空間を通って好きな所に行ける力ですね」


 なんとなく言いにくいオールグローリアであったが、仲間に対して力を誤魔化すのは気が引ける。なので素直に言う事にした。ハイドワンエルにはその気持ちさえも筒抜けだったらしい。


「気にする必要は無い。そもそも、エリヤ協会の概念はメビウスの権限から遠いところにある。そのエリヤ協会を媒体に生じた俺は、大きな力を持てないのは道理だ」


「どうして、わざわざそんなことを?」


 折角従者を創るというのに、わざわざ弱い力を持つ従者にする意味が解らない。ここまで御膳立てしておいて、創るのが弱い力の従者というのは、どう言うことなのか。


「メビウスは完璧主義だ。従者の作成に失敗する可能性、制御しきれない可能性、又は意図しない何らかの可能性を炙り出すには、テストケースがあった方が良い」


「……それは」


 つまり、ハイドワンエルは従者を創る為のテストケースであり、何かあった時の為に、あえて力を持てないようにしたという事だ。理解は出来るが、オールグローリアにとって気分のいいものでは無い。


「後、そうだな。メビウスから話を聞いていると思うが〈機鋼都市連合〉と〈赤光王国〉の戦争が起きる可能性は殆ど無い」


「えっ……それはどういう事ですか」


「〈機鋼都市連合〉は〈赤光王国〉を嫌ってはいるが、その土地を欲しいとは思っていない。そして〈赤光王国〉は領地的な野望を持ってはいるが、それは俺達エリヤ協会が牽制している。技術的な差がありすぎて、分裂してしては戦いにならないからな」


 つまり、〈機鋼都市連合〉の方から戦争になる可能性は殆どなく〈赤光王国〉は技術に差がありすぎて、まともに戦おうと思ったらエリヤ協会の協力も必要になるが、エリヤ協会は協力しない。戦いになる可能性は、どちらにしても低いという事だ。


「メビウス様は、私に嘘を言ったのですか?」


「メビウスは嘘を言っていない。戦いになる可能性はあるからな。その可能性が、限りなく低いだけだ」


「そんな」


「言っただろう? メビウスは完璧主義だと。もう少し、自分で考える事だ」

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