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神の権限

 従者というのは、元になった管理者の権限の一部を核として存在している。それはオールグローリアも例外ではなく、創造の光と祈りによって肉付けされたとしても、核は依然としてメビウスの権限の一部であるということだ。


「私の持つ権限は……信仰、ですか」


 オールグローリアは、意識を自分の内部へと向ける。そして、自身の核となっている権限を見つけることに成功した。だが、それだけでは力として権限を発現させる事は出来ない。自分自身の力を、見出ださなくてはならないのだ。


「なかなか難しいですね……」


 力を見出だすというのは、権限をスタート地点とする、連想ゲームであり、パズルゲームに近い作業である。そして、その解き方を記憶し、瞬時に式を思い浮かべる事が出来るようになって、ようやくその力をマトモに使えるようになったと言っても良い。

 そういった事情があるからこそ、多くの力を見出だそうとはしない。それをする位ならば、ひとつの力をいくつかの状況下でも応用が効かせられるくらいに、使いこなせるようになった方が効率が良い。


「やはり、私の力を見出ださなくてはならないみたいですね……」


 オールグローリアが思い浮かべたのは、メビウスの使う信仰の力。祈りの力を集め、それによって創造の光に指向性を持たせる。より多くの祈りがあれば、より多くの創造の光を扱うことができ、それを 破壊の力として放てば、信仰の集まり具合次第では、イニシエンの一撃さえも越えることが出来る筈だ。

 だが、オールグローリアは創造の光を持っていないし、そんな莫大な力を制御出来る気もしない。そもそも、そんな力があったとしても、使い道に困るだけである。


「……暴力的な力によって物事を解決するのは、あまりにも悲惨です。私が望むのは、平和的に人々を導く事の出来る力」


そして、自身の内側に向かい合い、どれほどの時間が経ったのだろうか。ようやく、オールグローリアは自身の力を見出す事になる。信仰とは祈りであり、祈りの力とは、心の力と言える。その力に指向性を持たせる。言わば、人の心の方向性に干渉し、それを望む方向へと逸らす。暴力的な心の持ち主も、その心の方向性に干渉すれば、慈悲深い人間となる。それでも、心とは、複雑なものだ。


「なるほど……だから、信仰が必要なのですね」


 好きに心を操るには、心は複雑すぎる。だからこそ、絶対的な指向性が必要になる。それはオールグローリアの大元、信仰へと回帰する。あらゆる人を、信仰へと導くものとして、その力が開花する。信仰へ導く力であり、他者を支配する力となる。


「この力は、心を変えてしまう。心とは記憶の累積であり、それを崩すことになるのでしょうが……。それはその者にとっての慈悲であり、他の人にとっての慈善となるのかも知れません……」


 オールグローリアの手元には、一着のローブがいつの間にかあった。それが解け、糸になる。この糸は、信仰へと導く糸になり、その人を祈る事しか出来なくする支配の糸である。そして、単純化された心は、この糸を通して支配する事が可能となってしまう。


「しかし……。それで良いのでしょうか……」


 オールグローリアは、自分の理想の力とは隔たりがあったようで、不満そうにしている。とは言え、それが見出した力である事には変わりない。それはそう言うものとして、管理者の従者としての力を見つける事にした。管理者はその名の通り、世界を管理する存在。世界とは時間と空間であり、それらに干渉することが出来る。とは言え、実際にしている事と言えば、空間を繋げ、世界の各地に瞬間移動するくらいである。管理者の世界に干渉する力は、かつて五つに分割されているし、完全に扱えるものでは無いようだ。


「世界に干渉する力は、一部でも扱えれば、便利そうではありますね」


 これに関しては、力を見出すというよりも、元々持っているものを見つける作業に近い。一度見つけてしまえば、扱うのに苦労する事は無い。この干渉する力は、そもそもが自分の力では無く、そういった機能を持っている道具を扱うのに近い。そして、オールグローリアは、大した時間をかけずに、その力を使う事が可能になった。


「なるほど……他の空間に繋がるトンネルであり、その物が異空間と言っても良いのかもしれません」


 オールグローリアは目の前の空間に黒い穴のようなものを出現させた。それは異空間に繋がるトンネルと言える。そして、異空間から世界の様々な場所に移動が出来る。これがオールグローリアの世界へ干渉する力のようだ。


「私以外のものが移動する事が出来るのでしょうか……」


 オールグローリアは、試しにテーブルの上にあったカップを黒い穴の中に入れようとしてみる。だが、カップはその黒い穴を通り抜け、オールグローリアの腕だけが穴の中に入り込む。支えるものの無くなったカップは床に落ち音を立てる、割れてはいないようだ。他のものを移動させることが出来るとは思わない方が良いのかもしれない。


「では、これは」


 次に、オールグローリアは支配の糸を黒い穴の中に入れようとしてみる、支配の糸は異空間の中に飲み込まれていった。オールグローリアの力によって創られたものは、問題なく異空間へと運べるようだ。ただ、黒い穴の中に腕を突っ込んでも、支配の糸を取り出すことは出来ない。こちら側から異空間を見る事が出来ないので、どこにあるのか解らないからだ。


「便利なのか、不便なのか……」


 おそらくオールグローリア本人が異空間に行けば支配の糸を取り出すことが出来るだろうが、別に現状は必要としていないし、そのままにしておく。


「力は、使い方次第ですよね」


 オールグローリアの持つ、信仰と支配の力は、このようにして形になっていった。

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