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神の狂喜

「ふむ、交渉は不可と、考えるべきか」


「グレスアさん、それを貴方が言うのですか?」


「ふむ、違いない。それでも、私は考えを改めるつもりは無いがな。精々、抗いたまえと言いたいが、この場合、抗うのは私のようだ」


 オールグローリアはグレスアめがけ、支配の糸を放つ。どこまで影響を受けるのか未だ把握できはしないのだが、だからと言って試しに捕まってみる訳にはいかない。斧を一閃し、糸を弾くも、この糸自体が操作されているものである。いくら弾こうが、避けようが、何処までも追ってくる。


「誰もが、個を奪われてはいけない。目を覚まして」


 グラビはオールグローリアめがけて電撃を放つ。グレスアを追わせていた支配の糸を引き戻し、近くにあった岩を支配下に置く、そして、岩を操って電撃を防ぎつつ、そのまま投げつけた。


「グラビさん、私は目を覚ましたのです。全ての人を救うには、生半可では想いでは達成できないと。だからこそ私は、貴方達にも力を振るいましょう!」


 グラビは投げつけられた岩を回避する。その隙にグレスアは一気にオールグローリアに接近する。支配の糸を集中させるも、まるでコマ送りにでもなっているかのように、瞬間移動を繰り返すグレスアには届かない。


「力を振るうのならば、振るわれても文句は言えんだろう?」


 接近してきたグレスアは斧を振るうが、オールグローリアは異次元の穴を開きその中に逃げ込む。この状態では攻撃が届かない上に、逃げ込んだ穴の他にも、様々な所に異次元の穴が発生した。これでは、何処から来るか解らない。


「確かに私は、力を振るわれても仕方ないのかもしれません。ですが、それも届かなければ、意味なんてあるでしょうか」


 オールグローリアはグレスアやグラビから離れた位置の異次元の穴から腕だけを出し、支配の糸によって近くのものを投げつける。回避するなり、弾くなり、対処するのは簡単であるが、近づけばすぐに腕を引っ込められてしまい、攻撃は出来ず、何時不意を打たれるかも解らない状態だ。


「ふむ、それが君の戦い方と言う訳か。中々に姑息であると思わないかね?」


「私は手段を選んでいられる程、強くは無いのですよ」


 どこかの異次元の穴から腕だけ出しては、支配の糸を使い、支配を試みる、もしくは近くのものを放り投げるという行動を繰り返している。今の所はグラビもグレスアも、影響は受けていないし、大したダメージも受けていない。だが、それはオールグローリアにも言える事であり、今の所はどちらが有利か、一目瞭然である。


「己を知る事は、折れぬ自我にも必要な事だ。だがね、君は大切なことを忘れている」


「何を忘れているというのですか? いえ、関係ありません。貴方も支配してしまえば同じことです」


 グレスアの頭上に空いている異次元の穴、そこから腕を出すオールグローリア。このままこっそりと支配の糸を放ち、支配下に置いてしまうつもりだ。一度支配下に置いてしまえば、他者に糸を千切られない限り、抵抗することは出来ない。


「戦うというのは、相手の事も知らねばならない。抗えるなら抗って見せろ、そのまま動くな!」


 グレスアを支配するべく、異次元の穴から出していたオールグローリアの右腕は、支配の言葉によって動きを止められた。数秒という短い時間であったが、その腕を掴む分には、十分すぎる時間と言えただろう。


「これは、困りましたね。力比べでは勝てそうにありません」


「ふむ、解っているではないか。では、このまま引きずりだすとしよう」


 グレスアとオールグローリアでは身体的な力に大きな差がある。捕まった状態では異次元の穴を使い逃げる事は出来ない。接近戦となってしまえば勝ち目は無い。何としてでも、支配の糸の影響下に置く必要がある。


「その前に、腕と言うものは二本ある事を忘れてはいませんか?」


 引きずりだされる前に、グレスアの背後にあった異次元の穴から既に支配の糸を放つ準備の出来ている左腕を出し、糸が身体の至る所に繋がれてしまう。


「権限を解き……」


「もう既に、貴方の身体は私の支配下にあります」


 支配の言葉を言い終える前に、オールグローリアは身体を操りその口を閉ざさせる。その様子を見ていたグラビが、支配の糸を切るべく電撃を放つ、支配されているのが身体だけであるのなら、そこから解放するのは容易い。だが、グレスアはその電撃を持っていた斧で弾いてしまう。何せ、身体が支配されているのだから。


「……。どうしたら良いの」


「グラビさん、諦めた方が良いですよ。グレスアさんには勝てないでしょう? それに、まだ右手が残ってますので、私も戦えるのですよ」


 オールグローリアの左手はグレスアを支配するので精一杯だが、支配の糸は右手でも使用する事が出来る。異次元の穴から出て来て、右手をグラビに向ける。もう隠れる必要なんてない、強力な駒を支配したのだから。


「グラビ、動きを止めたまえ」


 実体の無い存在には、支配の糸は通じない。だが、グレスアの支配の言葉は別だ。その隙にグラビの居る地面の辺りに支配の糸を放つ、そのまま地面を支配して、砂の中にグラビを埋める。エネルギー体であるからこそ、それだけで力を奪われてしまう。


「後は、洗脳を完了させるだけ……」


 オールグローリアはグレスアの洗脳に集中しようとしたところで、何者かが近づいている事に気づいた。どうやらその存在、ファーアは隠れるつもりは無かったらしく、堂々と歩いてきていた。


「ハッハッハ! バレたか、俺は隠れるの苦手だからな!」


「隠れるつもりなんてありませんでしたよね? まぁ、良いですけれど、私とグレスアさんの二人に勝てると思っているのですか?」


「ハッハッハ! まぁ、なんだ。少しばかり歯を食いしばってくれよ!」


 斧を構え接近するグレスアと、右手で支配の糸を準備しているオールグローリアに向けて、ファーアは拳を突き出した。そして、二人は吹っ飛ばされる。

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