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神の狂乱

「最近、何かあったかね?」


「久しぶりですね、グレスアさん。何年ぶりでしょうか、これだけの時間が経っていれば色々と変わりましたよ」


 あの戦争の後、オールグローリアは生き残った信者達を集めて、グロリアス正教を再建した。積極的に勢力を広げていき、今や一番伸びている組織と言っても良い。〈機鋼都市連合〉はあれから不安定になって弱まった、敵味方区別しない殲滅に走ったのだから当然だ。〈エリヤ協会〉はメビウスとハイドワンエルが去ってしまい、そのまま崩壊してしまった。〈赤光王国〉も〈エリヤ協会〉が機能しなくなった事で弱まった。


「確かに、大きく変わったようだね。特に君は、中々傲慢になったようだ」


「そうかも知れません。ですが、私の傲慢さで多くの人が救われるとすれば、それに後悔なんて無いのですよ」


 グロリアス正教は、積極的に他の勢力の人員を取り込んでいる。それも、オールグローリアの力、支配の糸の力によって、洗脳しているのだ。そして、信者は増えていき、祈りの力が更に集まり、支配の糸の力は増していく。もはや、止められる者は殆ど居ないだろう。


「ふむ。そんな君に聞きたいのだ、レイトアの行方を知らないかね? ここ数年見かけないのだよ」


「私は知りませんよ。新体制のグロリアス正教になってから会ったことはありませんし、私の力が他の従者に効くのか、未だ試していないのです」


 グレスアは、レイトアが居なくなったのはオールグローリアによって洗脳されたせいでは無いかと考えたが、どうやら違うらしい。それと同時に、支配の力がどれほどのものか図るのが出来なかったと言う訳だ。


「それは残念だ。君の力を警戒するべきか、把握する事ができないのでな」


「その必要はありませんよ。私も丁度、この支配の糸がどれだけの力を持っているのか、知りたかったのです。そして、グレスアさん、貴方の支配の力は、私に足りないものを補う事が出来ます。これも全ての人を救う為、抵抗は、しないでくださいね」


 オールグローリアは支配の糸を呼び出す、この糸に触れてしまえば、従者であっても影響を受けてしまうかも知れない。だが、グレスアは余裕を崩さない。何か、考えでもあるのか、それとも効かないと確信をしているのか。


「まぁ、待ちたまえ。私は逃げも隠れもしない。だが、その前に、君と話をしたい者が居るようだ」


「誰の事でしょうか?」


 グレスアの隣に、何らかの力場のようなものが発生している事に気が付いた。力場から、何かバチバチと、静電気のようなものが発生し始めた。そして、その電気は徐々に形を形成している。輪郭はハッキリしないが、どうやら人の姿になろうとしているらしい。


「私の事、覚えてる?」


「貴方は、グラビさんですか。勿論、覚えていますよ」


 グラビは、自分の姿を手に入れようとしている。かつて言われた、貴方は貴方でしょうという言葉、自分が、自分になる為には、姿と言うものがどうしても必要になる。それを今、オールグローリアの目の前で形にしようとしているのだ。


「私は私だと、言ってくれた」


「そうですね、確かに言いました。そして、貴方は姿を得ようとしています。……何と言えば良いのでしょうか、おめでとうございます……でしょうか? とても、大変だったでしょう?」


 意思なき物が、意思を手に入れるには、一体どのような事をすれば良いのか、初めから意思を持っていたオールグローリアには見当もつかないが、それでも、前に進むことの出来たグラビを祝福する。それだけ、大きな前進なのだ。


「私は私、そう教えてくれた。だけど、他の人は、違う? そんな筈は無い」


 そう、オールグローリアはグラビに個と言うものを指し示したが、信者達には、支配の糸を使用して洗脳している。つまり、これは個を奪う事に他ならない。個を奪い、一つの集合体として扱おうとしているのだ。グロリアス正教は個の集まりでは無く、一つの集団として動いている。洗脳によって、無理やり一つの方向に向けさせられてしまっている。


「解っていますよ。私のしている事は、個を見出した貴方からしてみれば間違っているのでしょう」


「それなら、どうして」


「個が正しいとは限らないからです。あくまで個ですから、他の個とぶつかってしまいます。思想とは、簡単には変えられないものなのですよ。例え、一人と折り合いをつけられたとして、それは全ての人とは可能でしょうか? いえ、それは無理と言うものです。そうでしょう? グレスアさん」


「ふむ、そうだな。現に、私は意思を曲げるつもりは無い」


 思想が、意思が、ぶつかり合って争いが生まれるのなら、それをぶつからないように誘導するしかないのだ。グレスアのように簡単に変えられるものでないのなら、それを強引にでも捻じ曲げるしか、方法は無い。だからこそ、オールグローリアは相手を支配する事にためらいは無い、相手の個を奪う事にためらいは無い、相手の自由を奪う事にためらいは無い。全ての人が救済されるには、必要な事だから。


「故に、私は、揺らぐことをやめたのです。全ての人を救済するには、この方法しかない。全ての人の思想を統一する事で、争いの無い、誰もが傷つく事の無い、世界が生まれます。そして、何かを信じる事は心を支えるのです。純粋なる祈りだけが、世界を希望で満たす! その為の神と、私は成るのです! さぁ、貴方達も祈りましょう! 私はその為の(偶像)なのですから!」

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