神の陰謀
結局、あれからグレスア以外のイニシエンの従者がオールグローリアの元を訪ねる事は無く、もう既に数年の時が経っていた。メビウスが訪れる事も、エンシェントの従者が再度現れる事も無く、本当に変化とは無縁と言っても良いぐらいであった。
「……今日も何か解るような変化はありませんでしたが、やっぱり気になります」
そんな状態であっても、オールグローリアには気になる事があった。グロリアス正教の祈りの中に、最近は悪意のようなものが混じっている。最も、そういったものは始めからあったが、それの割合が増えてきているようなのだ。別に実害も無いのだから気にしなければ良いと言えばそれまでであったが、どうしても気になってしまう。
「少し、外の空気でも吸いましょう……」
オールグローリアは気分転換の為に権限を使用し、適当な外に出た。そこまでは良かったのだが、目の前にドラゴンが居て、しかもこちらを見つめているとしたら、気分が急降下してしまう。ただ、昔に会ったあのドラゴンとは別個体のようだ。
「私は、制御AI19、トアと申します。メッセージがあります、再生しますかY/N」
「ドラゴンは、皆同じなのでしょうか……」
もしかしたら前に会ったドラゴンとは違い、まともに会話できるかと期待したオールグローリアであったのだが、淡々とよく解らない事を話す様子を見て落胆した。そんな様子もこのトアには関係が無いらしく、淡々と話を続けている。
「メッセージを再生します。繝峨Λ繧エ繝ウ縺ョ鬲ゅ�谿サ縺ョ繧医≧縺ェ繧ゅ�縺�縲ゆココ縺ョ鬲ゅr菫晁ュキ縺励∽ク也阜縺ョ蟷イ貂峨r縺ッ縺ュ縺ョ縺代k」
「いや、ですから。何を言っているのですか?」
相も変わらず言葉にノイズが混じっている。その声は本質的に気分が悪くなるようなものであって、多くの祈りを受けとるオールグローリアでさえも、長い間聞いて居たいものでは無い。もういっそのこと、強引にでも逃げ出そうかと考えてしまう。
「受取人は誰ですか。受取人は誰ですか。縺�縺後∽ク也阜縺ョ蟷イ貂峨r蜿励¢縺ェ縺�°繧峨→險縺」縺ヲ縲∽ココ髢薙↓菴輔′蜃コ譚・繧九→縺�≧縺ョ縺九る峺縺ョ譏�蜀呎ゥ溷ク梧ァ九�迴セ螳滉ク也阜縺ォ縺ゅk縺ョ縺�縺九i」
「知りませんよ……。私はもう帰りますよ」
適当に散歩でもして気分転換をしたかったオールグローリアであったが、こんなよく解らないものに絡まれていたら気分が良くなるどころか、精神的にダメージを受けそうですらある。諦めて自分の出てきた異次元の穴を逆戻りし部屋に戻ると、行きの時には居なかった存在が当たり前のように居座っていた。
「オールグローリア。どこかに行っていたのか?」
「ハイドワンエルさんですか、少し散歩に行ってきただけですよ」
ハイドワンエルがやってくるのは久しぶりの事であった。相も変わらず無表情で何を考えているのか解らない。最も、身近にいる人たちは皆して自由人であり、訳の分からない行動をする存在ばかりだといえば、その通りかもしれない。
「そうか。単刀直入に言っておく。信者を監視しておけ」
「どういうことですか?」
祈りを受け取る存在であるオールグローリアに、わざわざ信者を監視しておくように言うのは不自然と言える。今までも協会員としてグロリアス正教の様子を聞きに来ていたが、こんなにストレートに言ってくるのは初めての事だ。
「グロリアス正教は、エリヤ協会と繋がっている」
「それは、確定ですか?」
「あぁ、確定と言って良いだろう」
エリヤ協会の有力者であるハイドワンエルの情報であれば、殆ど確定と言っても良いだろう。ただ、祈りとは思いでもあり、その中に何か混じっていても良さそうなものであるのだが、オールグローリアには覚えが無い。もしかしたら、直接支配して全てを打ち明けさせれば、何か解るかもしれないが、そこまではしたくないと思うのだ。
「私は、どうしたら良いのでしょう」
「……。いや、お前はお前の方法で解決するべきだ」
ハイドワンエルは何かを思いついたようだが、それを伝えるつもりは無いらしい。もしかしたら、信者を洗脳して聞き出せといった事かも知れない。少なくとも、オールグローリアにはそれ以外に思いつかないし、出来る事ならそんなことは避けたいのだ。
「もう少し、様子を見ようと思います。洗脳すれば聞き出せるかもしれません、ですが、それが善い事であると思えないのです」
「……そうか。そう考えるのであれば、それを貫くべきだ」
「どういう事ですか?」
「いや、気にするな。確かに俺達は善き事を目指すべきだ。例え、それがどれだけの希薄な望みだとしても、それに縋るしか無い」
ハイドワンエルはそれだけを言うと、オールグローリアのなんの事かと呼び止める声を無視して去っていった。そして、その頃。信者の中に紛れ込んでいる存在が居た。レイトアは、ただひっそりと笑う。いつか訪れる最悪を期待して。
「人の悪意から逃れられると思うなよ。脆く無防備な心に、悪意の剣を突き刺してやろう。根源に潜む最も醜いものに耐える事は出来るかな?」
嫉妬の存在は、元々持っている存在を標的に動いていた。自分の持っていないものへの羨望を、動力源として。




