神の友好
「ふむ、エンシェントの従者が来たのか」
「そうなんですよ。調査の為とは言え、部屋を荒らされてしまって、困ってしまいました」
どこで聞きつけてきたのかグレスアがやってきた。誰もかれも自分勝手に来るが、最早今更どうこう言ったところで意味は無いだろう。オールグローリアとしても慣れたものである。だが、いつも暇だと思われているのだろうか。違いは無いが複雑ではある。
「印象はどうだ」
「エンシェント様の従者の事ですか? そうですね、なんだか、自我が薄いというか、自分の意思を持っていないかのようでした」
まさにフロウは機械的な反応をしていたように見える。だが、オールグローリアは個人的にグラビの事が気にかかる、あの質問は一体何だったのか。言う必要も無いかと思い、言わなかったが、グレスアなら何かを知っていたかもしれない。
「ふむ。私達は、在り方が必要である。それは解るな?」
「流石に解りますよ。魂の代わりに、私達をこの世界に留める為のものですから」
「エンシェントの従者は、管理者の腕であるという在り方に囚われ過ぎている。それが自我の獲得の枷になっているのだろう」
従者とは、管理者の役割を分担するために創られたものであるので、その在り方はある意味本来のものである。とは言え、ただシステムのパーツに自我が芽生えるのは難しい事でもあり、エンシェントも気にしていないので尚更である。他人事ではあるが、似た存在のオールグローリアにとっては、何だか寂しい気持ちになるのであった。
「そうですか……。それでも、いつかは自我を得るのでしょうか」
「ふむ。私達の時間は永遠だ。自我を得ないという事は無いだろう。それに、その兆候は見えているのではないか?」
「……そういうことですか」
おそらく、グラビの言動はその兆候と言うものなのだろう。自身への疑問と言うのは、自我を得るための一歩目かも知れない。その次へのステップまで、どれだけの時間がかかるかは解らないが、文字通りに永遠である従者にとっては、些事と考えても良いのかもしれない。
「それに引き換え、その様な枷の無い私達だが、その分自らで在り方を定めなくてはならない。まぁ、強固な自我を持つ私には、関係の無い話だがね」
「貴方らしいですね」
イニシエンの従者には、エンシェントのような枷は無い。逆に言えば、与えられた在り方が無いのだから、自らで見出さなくてはならないという事だ。在り方がハッキリしない事は、従者にとって致命傷でもあり、何かの拍子に存在が消えてしまう可能性さえもあるほどに重要なのだ。世界の転生によって再誕するにしても、早急に見つけるべきだろう。
「そう考えると、君はいい塩梅で存在してるとも言えるな」
「まぁ、否定はしませんよ。とは言え、それでも私と言う存在は安定するようなものでは無いですけど」
オールグローリアは、従者としての枷を受けながらも、エンシェント程の強いものでは無く、それでいて在り方はしっかりと保っているのだ。グレスアの言う通りいい塩梅というものだろう。ただでさえ、メビウスの従者は他者の影響を受けやすく、存在が安定する事はなかなか無い。そんな状態で在り方が無いというのは、他の従者以上に致命傷になってしまうだろう。
「ところで、私から提案があるのだが」
「それ、断っても意味がないですよね?」
「解っているではないか。そうとも、私は意見を変えるつもりはない」
グレスアは自分で言い出した事を変えたことはない。その在り方はまさに傲慢の存在と言えるのだが、相手する側からしてみれば、厄介な事この上無いだろう。オールグローリアは慣れたものだが、それでも苦笑いは隠せていない。
「提案とは、いったい何ですか?」
「ふむ。私以外の、イニシエンの部下と会ってみると良い」
「どうしてですか?」
グレスア以外のイニシエンの従者は、ファーア以外確固たる在り方を見出だしていない。更に言えば、ギレーアとアストアは尚更に不安定であり、その他の存在も安定しているとは言えない。そんな相手に会えというのだろうか。
「君は安定している。それは良いことだ。だがね、なおのこと、不安定なものと接しておくべきだ」
「そういうものでしょうか」
「そういうものだとも。それに、君には拒否権などというものは存在しないのだよ。どうしてもと言うのであれば、盛大に抗いたまえ」
抗えとは言うが、オールグローリアにはそのつもりはない、それはグレスアも理解しているだろう。そもそも、同じ系統の力を持つもの同士、年季の差でどちらが有利かは明白なのだ。
「解りました。私に抗うつもりなんてありませんからね」
「ふむ。では、二人づつ連れてくるとしよう。その方が都合が良い」
「二人ですか、それなら何とかなると思います」
「始めは、グネデアとレイトアにするとしよう。どちらも安定している訳ではないのだが、暴走する事は無いだろう」
「暴走するような人を連れてこられても困るんですけどね」




