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BREAKERZ - 奇っ怪な能力で神を討つ  作者: Maw
新・生徒会編
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真相 - 文月 慶②

さぁ、どこから話そうか。


とりあえず、目の前にいるこの英語教師の正体や目的について明かしていこう。


学生大戦が終わり、僕がいつも通りあの刑務所で高級料理を食べようとしていたときに彼女は現れた。


学校を支配する英語教師とか頭のおかしいことを言っていたが、それは偽りの姿だ。


提示してきた契約やその報酬から、僕は彼女の正体を見破った。


彼女自身は英語教師で突き通すつもりだったらしいが、相手が幼稚園児でもない限り無理な話だ。


契約とは、主に彼女と協力してあるものを造ること。そして、その報酬は“BrainCreateブレインクリエイト”の完成版。


そう言われると誰でもわかると思うが、彼女は政府から送られた人間だ。


ちなみに教員免許は持っていて、一応英語を教えることもできるらしい。


御影みかげの正体がわかったことでいくつかの疑問が沸いてくるだろう。


英語教師より羽柴はしばの代わりが務まる歴史を教えられる政府の人間はいなかったのか?


政府の人間である御影みかげ神憑かみつき? 政府はその存在を知っている?


彼女と協力して僕が何を造ったのか………とか。


僕がわかる範囲で順を追って話していこう。


まず、歴史を教えられる人間はいなかったんだろうな。正確には、歴史を教えられて御影みかげのような能力を持つ人間が…。


そう、彼女は神憑かみつきだ。彼女たちは自身を“契約者”と呼んでいたが。


そして、自身に憑いてる神を完全に認知していて対話することができる。


黒いもやのようなものが見えたり見えなかったりする羽柴はしばのような神憑かみつきとはまた違う。


憑かれていることに気づいていない無自覚、認知、対話といった段階でもあるのだろうか?


神との対話ができる御影みかげだが、奴に憑いてる神にはコネがあったと言っていた。


向こう側の事情かどうかは知らないが、人に憑きたくてたまらない知り合いの神が2体いたらしい。


そいつらを合意の元で、猿渡さわたりに憑かせたとのこと。


彼は政府に協力しようとした1人。彼への応酬は、行きたい大学への裏口入学だ。


無償で大学へ行けて人智を超えた能力まで授けられた。これだけ与えられても生徒会長の座に固執していたのは理解できない。


獅子王ししおう、お前は嫌われすぎだ。奴はゴリラアレルギーか?


そしてもう1人、生徒会側に神憑かみつきがいたな。


景川かげかわ 慧真けいま、模範生徒の代表みたいな奴。こいつはイレギュラーだったらしい。


猿渡さわたりに憑くのとほぼ同じタイミングで彼にも憑いた。


これも向こう側の事情か。日下部くさかべの身体を借りたシリウスと言い合いになっていたな。


ちなみに、僕は日下部くさかべを毒殺しようとはしていない。これは後で説明する。


御影みかげ神憑かみつきだということは、政府もその存在をもちろん知っている。


ずっと前から知っていたわけじゃない。不知火しらぬいを幽閉していたあの団体が政府にその情報を開示するまでは…。


政府が最初に能力持ちのことを知ったのは鬼ごっこのときだろう。


その謎の団体が神憑かみつきの情報を開示したのは、僕らがあの3校に奇襲を仕掛けたとき辺りか?


奇襲の情報漏洩やカプセル型転送装置が他校に渡ったのも政府が関係しているかもしれないな。


まぁ、あれは終わったことだし、今となってはどうでもいいが。


話を戻そう。次は政府や御影みかげの目的についてだ。


これには、僕が協力して造ったものも関わってくる。


簡単に言えば、彼らの目的は統制すること。


この吉波よしなみ高校には多くの特質持ちや神憑かみつきがいて、たびたび問題が起きている。


それも国民を巻き込んでしまいかねないレベルの問題がな。


だからと言って、この学校を軍事的に制圧するわけにはいかない。


政府側にいた神憑かみつき…、御影みかげの能力を駆使して政府直属の支配下に置けないかと考えた。


それができれば、これ以上問題が起きることはなくなるだろう。


僕は御影みかげの能力を知っている。彼女の能力は支配には向いていない。


人を操るとかそういった類いの能力ではなかったからだ。


だが、奇跡が起きた。コネで猿渡さわたりに憑いた神はそれを可能にしたんだ。


階級ヒエラルキーの神。全生徒を支配し統治するという目的には最適な力だった。


あいつの能力は常時発動型とでも言っておこうか。かなりの広範囲に影響し、学校の敷地くらいなら余裕で覆えるだろう。


恐怖心や、他人の責任と指示で行動しているときに現れる僅かな安心感を助長させて心を支配する。


つまり、猿渡さわたりの言いなりになるわけだ。


弱点としては、その効果が確実ではないこと。猿渡さわたり自身もその弱点には気づいてなかったみたいだな。


残念ながら、水瀬みなせ鬼塚おにづかには全く効いている様子がなかった。


鬼塚おにづかは知らないが、水瀬みなせに効かなかった理由はなんとなくわかっている。


猿渡さわたりが助長させる恐怖の数倍以上の経験と安心できない心理状態。


3校との学生大戦に、羽柴はしばとの戦い。


あいつは直接戦ってたわけではなかったが、死ぬかもしれないという恐怖を味わい……それを乗り越えた。


そしてそれがきっかけで、僅かな安心感など軽く打ち消してしまうような普通の高校生らしくない警戒心が備わっている。


あのときにいた奴らは全員、そうなっているはず。実際に戦った剣崎けんざきたちは尚更だろう。


恐らくそれが原因で通用しなかった。


これだけなら中途半端で何かと不便な能力…、あまり脅威にはならない。


鬼塚おにづか雲龍うんりゅうを倒した際、生徒全員が猿渡さわたりの力から解放された。


希望や自信が恐怖を上まわっても効かなくなるわけだ。


しかし、それをカバーするかのようにもう1体の神が憑いていた。


もう1体は、音の神。


こいつのお陰で、指を鳴らす音に階級ヒエラルキーの神の力をのせることができた。


よって、その音を聞いた者の精神を直接、操ったり崩壊させたりすることが可能になる。


それでも鬼塚おにづかには効かなかったみたいだが…。


学校を統制するだけならこいつの力だけで充分だろう。御影みかげ猿渡さわたりに指示を出すだけでいい。


イレギュラーの景川かげかわは、“学校のため”とか言って言いくるめたんだろう。


では、僕はいったい何をしたと思う? 何の役割を与えられた?


それは……、






特質持ちを封印すること。






念には念をだ。政府は鬼ごっこを止め、数人で3校を返り討ちにした特質持ちをかなり警戒していた。


紹介しよう。


“BrainCreateブレインクリエイト”に次ぐ僕が開発した2つ目のアプリ。


神の力と科学の融合。








RealWorldリアルワールド






獅子王ししおうたちが戦っていたのはこの世界だ。


現実とほとんど変わらない空間をアプリ内で再現し、その中に彼らを閉じ込めた。


その世界から自力で抜け出す方法は、死にかけること。


死ぬ寸前に安全機能が作動し、こちら側に無傷の状態で戻される。


もちろん安全機能をオフにしていたら、このアプリの中でそのまま死ぬだろう。


基本的に初期設定のまま使用すると、現実と何ら変わらない世界になる。


僕が手動でイジったのは、不知火しらぬい戦での天候変更とすめらぎとの口論に勝つために出現させた新しい校章だ。


後は閉じ込めた奴らと関わりが深い水瀬みなせ新庄しんじょうの細かい設定。


このとき、僕は新庄しんじょうが停学になっていたことを知らなかった。


その違和感に気づいたすめらぎの直感は最早、特質レベルに値する。


最初にアプリの中に閉じ込めたのは……すめらぎ剣崎けんざき樹神こだま立髪たてがみ不知火しらぬいの5人だ。


特質持ちは全員閉じ込めるよう指示されていたが、政府の言いなりになるつもりはなかった。


生徒会と戦えるように半数くらいこっちに残したつもりだったが…。獅子王ししおう日下部くさかべがやらかしたせいでほぼ全員、閉じ込められることになってしまった。


まぁ、それはそれで不知火しらぬいの特質をより深く知れたから結果的には悪くないが。


僕の金属バット“とどろき”が停学になっていたのも大きな誤算だな。


本来ならこちら側にパワーでゴリ押しの鬼塚おにづか新庄しんじょうの金属バット、完封の日下部くさかべとおまけの獅子王ししおうがいて、いつでも生徒会を瞬殺できる算段だった。


まぁ、やりたいことは全てできて何とかこの状況に持ち込めたから問題ないが…。


これで大方、説明できたか? まだ疑問点があるかもしれないが、僕が知っているのはここまでだ。



_______________________




御影みかげ「騙して悪いと思ってるわ。協力してくれたことにこちらは感謝もしている。他に何か欲しいものは? それで手をうちましょう」


彼女は僕にそう言った。


あぁ、わかっていたよ。危険とみなして押収した“BrainCreateブレインクリエイト”の完成版をそう簡単に渡すはずがない。


お前らは僕を仲間から引き離して手駒にしたかった。政府にとって1番危険なのは、特質持ちではなくテロを起こした僕だからな。


僕はまんまと政府の手に乗せられたわけだ。なら、なぜ返してくれないとわかっていたのに、奴らと契約し要求に応えたのか。


RealWorldリアルワールド”の開発に興味があったから。


神憑かみつきをより詳しく知る機会になると思ったから。


そして、最後に…、






ずっと()()()()を待ち望んでいたからだ。






他の欲しいもので手をうつと言ったな?


僕は御影みかげを指さし、もう片方の手でスマホを耳に当てながらそれに答えた。




「失われた信頼と政府への報復。貴女を倒し、計画を奪うことで手をうとう」



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