1日目 - 新庄 篤史①
さっき帰りのホームルームが終わって俺は今、残らされてる。あの先生…。毎回、話長ぇんだよな。
俺のクラスは他のどのクラスよりも1番遅く終わる。いつもは終わったらさっさと帰るんだけどよ…。さすがに遅刻しすぎた。反省文原稿用紙4枚書くまで帰るなだと。
最悪だよ。俺、文書くのめちゃくちゃ嫌いなんだけど。遅刻の反省に4枚も書けるわけねぇだろ。
だって何書くんだよ。遅刻しまくった理由を3枚書いて残り1枚がどう改善するかみたいな?
ふざけんなよ。遅刻する理由? 朝弱いクセにパズル&ダイナソー周回やって寝るの遅くなるから。
で、どう改善するかって? 目覚まし5重にかける。
…………。
これ以上、何書けってんだよ。
あぁ、ほんと最悪だわ。もうスタミナ回復したから早く周回しなきゃなんねぇのに…。
俺は名前しか書いていない原稿用紙から目を離して辺りを見渡した。
多分、先生来ねぇよな? 10分だけ周回しよ。
俺の名前は、新庄 篤史。
先生によく言われるのは、髪長すぎだから切れとか物騒なもん持ち歩くなとか…。制服の着こなしについても何か言われてた気がする。
さっきも言ったけど、俺はめちゃ朝に弱い。そのせいで起きれなくてほとんど遅刻してる。
ゲームしてるからだって? いや、多分早く寝ても結果は同じ。してもしなくても寝坊すんならしたほうがいいだろ?
それだけで周りからは不良扱いだぜ? 真面目すぎかよ。不良って人殴ったりガラス割ったりタバコ吸ったりする奴のことだろ?
俺、どれもしてないんだけど。
この金属バットをいつも持ち歩いてるのがダメなのか? これは俺のじいちゃんの形見でずっと持っておきたいだけだ。
別に振り回したりしねぇし、物騒なもんなんて言われる筋合いもねぇ。
あ、でも授業中にスマホいじってるな。ああいうのって悪く見えるんだろうか?
仕方ねぇじゃん。イベントがいつも授業中に開催するんだから。
よし。周回一旦やめて反省文書きますか…。だるいけど書かないとマジで帰してくれなさそうだし。
「ぼくが遅こくした理由は、っと」
ピンポンパンポーン
ピンポンパンポーン
ピンポンパンポーン
せっかくやる気になって書き始めようとしたってのに…。
ここは生徒指導室。静かで集中できる場所だけど、今の放送の音のせいで俺の集中力は切れてしまった。
そんで3回も鳴らすなよ、うるせぇなぁ。
ん? 全然、喋んねぇじゃん。早く言えよ。こっちは今、ムシャクシャしてんだよ!
『…ザッ…ザザッ……あー…あー……ザッ…聞こえてる?』
あ、喋った。てか、ザーザーうるさくね? マジで集中できねぇ。早く放送終われよ。
『あ、その様子だと…ザザッ……聞こえてるね…ザッ…電波悪いな…ザッ……さすがに遠いか』
うるせぇ。こんなにうるさかったか? あぁ、ダメだ。集中できねぇ。放送終わるまで周回しよ。
何かテキトーに聞いててあんまわからんねぇけど、鬼ごっこをするらしい。
クラス対抗戦か何かの放送か? 悪いけど俺は参加しない。
あ、こういうのをサボるから不良って思われるのか?
うーん……。まぁ、運動にはまぁまぁ自信あるし、たまにはやってもいいかな。
『フフッ…バレたか』
いや、なにが?
『“殺す”とは言っていない。人質だ。後、君たちに拒否権はない。もう鬼たちがそちらに向かっている。笑ってないでそろそろ逃げたほうが良い』
誰に言ってんの? 何か物騒だなぁ。
てか、もう始まってんの? マジかよ!
とりあえず、クラスの奴らと合流して、
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「やぁ、みんな。僕も参加するよ。鬼ごっこ実は大好きなんだ♪ 君たちにこの学校の秘密のルートを教えるよ!(ないけど)」
水なんとかの奴「本当かい? 頼りになるね!」
女の子たち「わぁ、秘密のルート知ってるなんて新庄くん素敵~♪」
頭でかい奴「兄貴いぃ~! 一生ついていきやすぜぇ!」
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みたいな?!
とりあえず不良っていうイメージを拭ってやるぜ!
俺は上々な気分で廊下に飛びだし、自分の教室がある方向に身体を向ける。
何だ、あれは?
廊下の突き当たりにいる黒い何かが俺に背を向けて立っていた。