表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
BREAKERZ - 奇っ怪な能力で神を討つ  作者: Maw
新・生徒会編
65/270

不快 - 皇 尚人①

はぁ……だりぃな。


俺は学校の屋上のベンチに座って曇り空を見上げながら、コーラを片手に溜め息を吐いた。


授業サボって屋上でコーラ飲むとか初めてだぜ。


普段は大好きなコーラだが…。

何だよこれ…何か違う。


缶のコーラとペットボトルのコーラ、そして今飲んでいる水筒に入っているコーラ。


確かに入れ物によってコーラの味ってのは変わってくるが、そういうレベルの違いじゃない。


何か……昨日の朝から根本的に不愉快なんだよ。他に例えようのない感覚だ。


俺の名前は、すめらぎ 尚人なおと……って自己紹介しなくてもわかるよなぁ?


これまでに輝かしい功績を残してきた俺を忘れる奴はいないはずだ。


あまり覚えてない奴に軽く説明すると……、



①校章の件で付きまとってくる某ストーカーを牢にぶち込まれるように誘導。


②特質持ちを探し出し、ジミーズを結成して牽引。戦争を仕掛けてきた3校をボコり、学校の平和を守り抜く。


③粗大ゴミと間違われたゴリラと田んぼを耕すトラクターに轢かれそうになっていたオケツを救出。



まぁいわゆる、影の功労者ってところだな。


ジミーズって名前、今思うとクソダサいから後で変えるぜ。リーダーは俺だから、誰も反論しねぇだろう。


今、何時だ?


俺は制服のポケットからスマホを取りだして時間を確認する。ちょうど1限始まって10分くらいか。


スマホも何かキモいんだが…。ヤバい、目に映るもの全てがキモいぜ。


俺は病気にでもなったのかぁ? コーラ飲みすぎて脳みそ狂ったとか?


いや、そのせいじゃねぇ。コーラは俺にとってお茶のような存在だ。


お茶を飲みすぎて病気になる奴なんているはずないだろう。


俺の身体がいつも通り健康なら、異常なのは俺を不快にさせるこの世界だ。


ゴクリッ…


水筒に入ったコーラを飲み干して、俺はベンチから腰を上げた。


行動しないと何も変わらねぇ。とりあえず、校内を歩いてみるか。


俺はこの不快感の正体を探るため、屋上のドアを開けて階段を降り、2年の教室へ向かった。


ぱっと見、何も変わらない授業風景。


俺は後ろに手を組み、教室の中を1つ1つ覗きながら廊下を歩いていく。謎に見回りに来る先生になった気分だ。


真摯に授業を受けている水瀬みなせ


キモっ…。あいつを見ると悪寒がするぜ。


真摯に授業を受けていると見せかけてゲームをしている剣崎けんざき


こいつはまだマシだな。だが、不快なことに変わりはない。


机に突っ伏してはなから聞く気のない樹神こだま


こいつはブロッコリー。


一通り教室を見て前に向くと、誰かがこちらに向かって歩いてきていた。


遠くにいるからわかんねぇって思ったが、ロン毛の金髪で金属バットを担いでる奴なんて新庄しんじょう以外にいないだろう。


ある程度、距離が縮まったところで、彼はこちらに気づいて声をかけてきた。


新庄しんじょう「よぉ……お前、誰だっけ?」


いや、キモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモい……!


軽く手を上げてくるこいつと目が合った瞬間、身体中を蟲が這いずり回っているような感覚に襲われた。


「キモっ! お前、ジミーズ、クビなぁ♪」


あまりのキモさについ、笑みが零れて反射的に指をさしてしまう。


逆にすげぇだろ。蟲が這ってる気がしてならねぇのに俺は嗤えるんだぜぇ?


新庄しんじょう「あ…?」


低い怒りのこもった声を出し、眉間にしわを寄せる新庄しんじょう



パリリィン!



次の瞬間、こいつはぶち切れて、いつも持っている金属バットで廊下の窓のガラスを叩き割った。


こんなにキレやすい奴だったか?


ハハ………ハハハ……。




だいぶ、わかってきたぜぇ♪




不良に対する()()()の偏見がもろ反映されてやがる。


我慢だ、笑いを堪えろ。あいつはネチネチしてるから。


どこで見てるかわかんねぇからなぁ♪


新庄しんじょう「お前、舐めてんのか?」


新庄しんじょうは、割れた窓ガラスに突き刺さったバットを担ぎながら、俺を睨みつけてくる。


おぉ、恐い恐い。その兵器で殴るなよ? まぁ、殴れねぇだろうが♪


「悪い、ちょっと具合悪くてな…。八つ当たりしてしまったぜ」


今にも暴れ出しそうな険しい顔つきをしている新庄しんじょうに対し、俺は素直に謝った。


いつもなら煽ってたのしんでいるかもしれねぇが、今はそうするべきじゃない。


新庄しんじょう「お前は知ってる顔だからよぉ、1度目は許してやる。2度目はないと思え。俺は不良だからな。次はぶっ殺してやる」


あ、やべぇ♪ 笑いそう。自分で不良って……普通、言わないだろ。


彼はすれ違いざまにわざとらしく肩を当ててから、どこかへ去っていった。まぁ、大目に見てやろう。


新庄しんじょう…。最後に会ったとき、あいつは停学になるかもしれないと言っていたはず。


気になるが、キモい新庄しんじょうに直接聞くのは悪手だ。何となくわかってきたが、問題はどうすれば良いか…。



「おい、お前」



聞き覚えのある声だ。俺は後ろから呼ばれて振り返った。


俺の後ろに立っていたのは、生徒の間で最恐と名高い村川むらかわ。こいつも普通にキモいな。


村川むらかわ「お前、授業中のに何しとんねん。早よ教室戻らんかい」


いつもは若干恐ぇと思う村川むらかわだが、全くもって恐怖を感じない。その代わりといったらなんだが、とにかくキモい。


面倒くさい奴に遭遇してしまったぜ。いちいち授業に参加していたら、解決方法なんて見つからねぇ。



キーン コーン カーン コーン


キーン コーン カーン コーン



どう切り抜けようか考えようとしたちょうどそのときに、授業の終わりを知らせるチャイムが鳴った。


やっぱり俺、何か持ってるなぁ♪


最高のタイミングで鳴ってくれたぜ。


俺は村川むらかわに人差し指を立てて左右に振る。


「授業、終わりましたよ?」


村川むらかわ「…………。今回は堪えたるわ。次、サボってたら反省文書かすからな!」


強く怒れなくなった奴は、少し苛立ちながら去っていった。


休み時間になると、廊下に出てくる生徒が何人かいてキモさが充満する。


あぁ、こいつら見てると発狂しそうだ。何となくだが、見分けがつくようになってきた。


さぁ、どうする? そもそも、神経質なあいつが造ったものに抜け目なんてないはずだ。


クソッ…俺1人では何もできねぇ。なら、あいつらに協力させるかぁ?


仮に奴の目を出し抜けたとしても、オナラによだれ、ブロッコリーとゴリラじゃ無理があるだろ。


気づけば俺は人気ひとけのない場所まで歩いてきていた。水瀬みなせが面接に使った生徒指導室はこの近くにある。



コツコツコツ……。



前方から誰かの足音が聞こえてきた。


また誰かが歩いてきてんのか。


ここはあまり日が差さない。かなり近づかねぇとわからねぇな。


薄暗い空間から向かってくる人影は、ある程度歩いてきたところで姿を露わにした。


おいおい~。











こいつ、のこのこと出て来やがったぜぇ♪











文月ふづき「数日ぶりだな、すめらぎ


文月ふづきのクセにキモく感じねぇのは地味にムカつくな。


文月ふづき「訳あって僕の懲役は免除になった。これから、僕はお前らと同じ普通の学校生活を送る」


間違いない、こいつは本物だ。俺は自分の直感を疑わない。


本物が出てくれば超余裕だぁ♪ こういうときのために俺は()()を持っているんだぜ。


俺はポケットからあるものを取りだして奴に見せつけた。


「これ、わかるよなぁ?」


そう、これはずっと前にこいつから奪った校章だ。


奴の制服を確認するが、校章は着いてねぇ。


はい、俺の勝ちは確定♪ プライドの高いこいつは絶対に新しく買ったりしない。


俺がこの校章を持つ限り、お前は俺に従順になるしかねぇよなぁ? なんでいつも俺に負けるのか、死ぬまで考えてろ。


奴は何も言い返せずに立ち尽くしている。


「ヒャハハハッ! わかったらさっさと俺たちを解放しろ」


こいつを屈服させるのは超絶快感だ。理性が吹っ飛んで甲高い勝利の笑い声が自ずと上がる。


しかし、俺の予想とは裏腹に文月ふづきは小さく溜め息を吐いてからニヤリと笑った。


文月ふづき「はぁ…、いい加減、幼稚な争いは止めないか?」


何だ、こいつの余裕は…。いつもは校章についてネチネチ言ってくるクセに。


俺の直感は基本的に当たる。

この空気は………圧倒的不利だ。


奴はポケットからあるものを取りだして制服に着けた。



文月ふづき「新しいのを買ったんだ」


「何……だと……?」



新品でキラキラと輝いている校章を見せつけられた俺は絶望する。


プライドの塊みたいなお前が取り返すのを諦めて新しいのを買うなどありえない。


クソッ、俺としたことが完全に裏を掻かれたぜ…!


奴は焦りを隠せない俺を見て、狂気に満ちた笑顔を見せる。


文月ふづき「お前は僕を手駒にできると勘違いしているようだが…。僕が本気を出せばお前は何もできない」


どうする? こいつ、絶対ホログラムだよな? だが、今ここで逃すわけにはいかねぇ。


文月ふづき「時間がない。今、校章のことはどうだっていいんだ」


どうにか足止めしようと考える俺に対し、奴は真剣な表情でそう言った。


何だ、こいつ? 何、味方っぽい空気出してんだよ。


敵じゃないのか? でも、こんなことするのはお前以外にいねぇよな。


文月ふづき「休み時間が終わるまでに見せたいものがある。ついてこい」


奴は俺に背を向け、奥へ歩いていった。


癪だが、俺はこいつの言うとおりについていく。廊下の突き当たりを文月ふづきは左に曲がった。


俺はすぐ後ろからついて行っていたが、曲がった瞬間、奴の姿は忽然と消える。


消えるの早ぇな。何もねぇ、ヒントぐらい出せよバカヤロー。


突き当たりを左に曲がった先は行き止まりで1つの教室しかない。


そう、ここが特質持ちを集めるのに役立った生徒指導室だ。


この中に何かあるってことかぁ?


「どうも~。風紀委員でぇす♪」


俺は生徒指導室のドアに手を掛けて横に引いた。


薄暗い室内から、鼻をすするような音が微かに聞こえてくる。






「何だ、こいつ?」






暗い教室の端っこに、うずくまって泣いている小さな何かがいた。


「…………誰?」


()()は俺の存在に気づいて、すすり泣くのをやめる。


こいつと対面したタイミングで2限目の開始を知らせるチャイムが鳴り響いた。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ