文月の手帳【 ver1.0 】
僕が計画した鬼ごっこがきっかけで一部の生徒たちが覚醒した。
いや、鬼ごっこによって覚醒したかは定かではないが…。
実際のところ、原因は不明。発揮する機会がなかっただけで元々あった能力かもしれない。
“特質”
彼らが有する能力を僕はこれからそう呼ぶことにする。
現在、発覚しているのは4名。
囚人生活はあまりにも暇なので、この手帳には特質持ちの者やその特質の詳細などを随時、記録していく。
____________________
No.01
【名前】新庄 篤史
【特質】轟
【特質の概要】
僕が昔、造った莫大な電力を纏い絶大な破壊力を誇る金属バット“轟”。それを使いこなせる唯一の人間。その威力は僕の造った鬼570体を一撃で屠るほど。なぜ持てるのかは不明。“轟”を手にしてから彼の髪色は黒から金に変化した。莫大な電力と相関があると思われる。
【判明している技】
『カミナリ大根切り』
ただ全力で金属バットを上から振りおろすだけ。剣崎の唾液の相乗効果かもしれないが、この一撃で鬼が全滅し辺りは焼け野原と化した。
____________________
No.02
【名前】剣崎 怜
【特質】唾液使い
【特質の概要】
唾液を自在に操ることができる。唾液の分泌量、成分の調整、その他特殊効果付与などが可能と思われる。この特性を活かし鬼の動きを唾液で封じた。
【判明している技】
『粘縛唾液』
粘着性に特化した唾液。これが付着した者は一切の身動きが取れなくなるだろう。何せ僕の鬼が封じられたのだから。
『唾液滑走』
自身の足の裏に唾液を塗りつけ滑走する技。車にも引けをとらない速さで移動する。本人曰く格ゲーで動体視力を鍛えているため、どんなに速くてもぶつかることはないらしい。また自動車とは違い急な方向転換、急停止なども可能。
『飽和粘縛電解唾液』
彼が一度に出せる最大量の唾液。それに加わり粘縛唾液と同様の粘着性。そして、この唾液は非常に電気を通しやすい。新庄との連携で使用。
____________________
No.03
【名前】立髪 斬斗
【特質】モヒカッター
【特質の概要】
両手をこめかみに添え振りおろしながら繰り出す髪の斬撃。地面を抉りながら進むさまは一見、強そうだが威力は鬼のメッキが剥がれた程度。しかし、人質を収容していた鉄の檻は切れたため人に使えば即死は間違いないだろう。
【判明している技】
モヒカッター以外、特になし。
____________________
No.04
【名前】日下部 雅
【特質】放屁師
【特質の概要】
その名の通り、オナラ使い。用途が幅広く激臭のするオナラを出して攻撃したり、オナラを連続的に出して空を飛んだりすることができる。空からの激臭攻撃に僕は為す術なく敗北した。
【判明している技】
『昏倒劇臭屁』
超絶に臭い屁を放つ。少しでも吸ってしまえばその悪臭に頭がふらつく。まともに喰らえば一瞬で気絶してしまうだろう。一度放てばしばらく空気中に留まるため、直撃しなくても時間差でじわじわと効いてくる。「人がいなくなるスプレー」みたいなもの。
『宙屁』
放屁の力で空を飛ぶ。この屁は無臭で周りに危害を加えない。つまり、彼は攻撃と移動を器用に使い分けることができる。どれくらいの間、滞空できるのかはまだわかっていない。
『併合型・宙撒布劇臭屁』
恐らく“昏倒劇臭屁”と“宙屁”を組み合わせた技。空を飛び回り、辺り一帯に激臭を撒き散らす広範囲かつ高威力な必殺技。異なる屁を同時に出すこの技は身体に負担がかかるらしい。強力だが連発するのは難しいと思われる。これをまともに喰らった僕は気づけば留置場にいた。
____________________
以上が現時点で判明している特質を持つ者たちだ。
どれも奇怪なものばかりだな…。特殊能力と言えばもっと見栄えが良くかっこいいものだと思っていたが…。
あれはマンガやアニメの話で現実はそうはいかないのか。
今のところ、彼らの“特質”の名前は僕がつけている。せめて名前だけでもかっこよくしてあげよう。
え? “モヒカッター”はダサいって?
あいつは個人的に嫌いなんだ。テンション無駄に高い奴と不良は苦手。
それに立髪本人がそう言ってるんだから良いだろう?
新庄の特質もダサくしてやりたかったけど彼の特質の半分は僕の発明品が関わってる。
仕方なく金属バットの名前をそのまま特質の名前にしておいた。
本人からの要望があれば名前は変える。まぁ、それも場合によるが…。
そして特質かどうか曖昧な者が3人いる。
樹神、こいつのアフロブレイク。僕は“叫び”と言っているが…。
大して面白くないのにほとんどの人間が立てなくなるほど爆笑しのたうち回った。
かなりの緊張感の中だったからと言うのもあるから断定できないが、何かしらの能力を持っている可能性は否定できない。
2人目は水瀬。彼は本当に微妙なところ。
気になった点は2つほどある。1つ目は川にいた時間だ。
晩から朝にかけてずっと泳いでいた。いくら水泳が得意とはいえ、異常な体力だ。
まぁ、長時間泳げるといっても何か利点になることはなさそうだがな。
2つ目は地味に頭が切れるところ。そもそも僕の鬼と人間では力の差は歴然。捕まらずに逃げるのはまず無理だ。
その差を自身の知識や知恵を活かし打開した。
特質と言うには大げさかもしれないが、捕まらずに僕のところに来れたのは凄いと思う。
そして、3人目。3人目というか3匹目と言うべきか?
あの謎のゴリラだ。後日、ニュースでも報道されたが結局、保護されず忽然と姿を消してしまったらしい。
あいつも元は人間で変身する能力だとしたら…。
それに人質を助けた辺り、僕らと同じ学校の生徒の可能性がある。
彼ら3人も含め、また新しい特質を発見したらここに書いていこうと思う。
それが今、僕の唯一の楽しみだ。本当に暇すぎる。
まぁ、この後すぐ学校がヤバいことになって忙しくなるんだが…。
新章
【学生大戦編】
始動。




