表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
BREAKERZ - 奇っ怪な能力で神を討つ  作者: Maw
自警部•夏祭り編
267/270

法螺吹き - 皇 尚人⑫

生命の最上位神、興禅こうぜん立休りっきゅうを子分みてぇに連れ回して何分経った?


生きてる心地がしねぇぜ。


吉波よしなみ踊りの会場は、徒歩で全部回るには広すぎる。


広すぎるんだが…、もう1周しちまいそうなくらい歩き回ってるぜ…。


おいおい…。


俺のマジの子分ども、“BREAKERZブレイカーズ”は何処に居るんだぁ?


分け入っても分け入っても死体の山じゃねぇか。


BREAKERZブレイカーズ”どころか生きてるパンピーすら出くわさねぇ。


興禅こうぜんの野郎、“皆殺しにした”ってのは大げさでも何でもない。


こいつは祭りの会場に居たパンピーを1人残らず殺しやがった。


興禅こうぜん「おい」


俺の法螺話を信じてずっと黙って着いてきていた興禅こうぜんの低い声が、血生臭い会場に響く。


ちっ、そろそろ限界か。


ちょうど会場を1周して、奴と出くわした場所に戻ってきたところだ。


興禅こうぜん「いつ着く? 同じ所をぐるぐる回る気か?」


俺は、背後から聞いてくる奴の言葉を聞いて足を止めた。


はぁ、いつになく今日はツイてないぜ。“強運”ってのは俺の代名詞じゃなかったのかぁ?


「どうした? 興禅こうぜん立休りっきゅうさんよぉ」


俺はそれとなく返しながら考える。


流石に疑われるか。


どう誤魔化す? 誤魔化したところで奴らに逢えないと意味がねぇ。


そして、1つ……いや2つほど嫌な予感が頭を過った。


興禅こうぜん「まさかとは思うが、嘘を吐いてないだろうな?」


絶体絶命も良いところだぜ。生まれたての赤ちゃんがみでも流石に勘繰ってくる頃合いだな。


嫌な予感、1つ目──。


こいつは、はっきり言ってクソ強い。能力的にも性格的にもなぁ。


神のくらいとやらでも、最上位に位置する生命の神。簡単に言えば、神の中でも最強に近い存在だ。


その上、人を殺すことにも全くの躊躇がないサイコ気質と来た。


BREAKERZブレイカーズ”は、既にられてるんじゃねぇのかぁ?


だとすれば、逢えねぇことにも合点が行く。死体の山に奴らも埋もれてるからだ。


これは俺の運が良いとか悪いとか以前の問題だ。


「ふっ、俺を疑うのかい? 立休りっきゅうさんよぉ」


あぁ、言われなくてもわかってるぜ。俺の語彙力はすこぶる低下している。


もはや名前しか呼んでねぇ。


嫌な予感、2つ目──。


まだこっちはマシだ。

全員死んでるよりかはな。


あいつら…。




陰キャだから祭りに来てないんじゃねぇのかぁ?




『夏と言えば、海! 花火! キャンプ!』


ってのは一般論だ。


あいつらは春夏秋冬、四六時中、家で引きこもってゲームしかしてねぇだろ。


だが、2つ目なら希望はある。


興禅こうぜん「俺を馬鹿にしてるのか? 人間の分際で」


目を瞑ったまま、眉をひそめる興禅こうぜん


「あぁ、此処には居ねぇみたいだな」


俺はゆっくりと振り返りながら、余裕げに笑ってみせた。


そして、バイト着のポケットに手を突っ込みスマホを取り出す。


「これで、()()を呼ぶぜ♪」


仲間っつっても、お前をちのめす俺の仲間……な♪


だが、こいつは…。


興禅こうぜん「なんだ、呼べるなら最初からそうしろよ」


()()()の仲間だと思うよなぁ。


かなり強引だがやるしかねぇ。


“あいつらに電話を掛けて助けを求める”。


回りくどい言い方なんざ、絶対伝わらねぇ。興禅こうぜんには色々とバレちまうが…。


何も、俺はただぼーっとこいつと歩いていたわけじゃねぇ♪ “BREAKERZブレイカーズ”到着までの時間は稼いでやる。


「まぁまぁ焦んなよ、立休りっきゅうさん♪」


俺はこいつに対しニヤリと笑って、奴らのグループチャットを開いた。


そして、通話ボタンを押そうとしたその時──。


興禅こうぜんの背後に2つの人影が見えた。


遠くてまだ顔は見えねぇが、2人は死体をまたぎながらこちらに走ってくる。


1人はガタイの良い奴、もう1人は……女の人?


俺は勝ちを確信した。

ついに強運が舞い降りた。


「ヒャハハハハ♪」


興禅こうぜん「うっ! なんだ?」


思わず高笑いしちまった俺にビビったのか、奴は1歩後ずさった。


女の方は知らねぇ。だがもう1人のあの体格、あの動きは知っている。


よりによって、最強の中の最強の男が俺の元にやって来た。


あいつは──“BREAKERZブレイカーズ”最強の特質持ち。


地球を鼻くそ穿ほじりながらでも壊せる規格外の化け物。


王撃ワン・ビート”の…!



俺は笑いながら両手を広げて、彼を歓迎した。


「探したぜぇ♪ 鬼塚おにづかぁ!!」


後ろに振り返る興禅こうぜん


こちらにやって来る2人の顔が月に照らされ露わになった。



翠蓮すいれん「ダメだ、母さん!!」


鬼塚おにづか母「うそ…。なんで…?」



…………。


翠蓮すいれんかよ…。


んで、もう1人は……鬼塚おにづかのお母さん?


妙にガタイが良いとは思ったぜ。鬼塚おにづかはもっと小柄で、見た目に関しては翠蓮すいれんの方が強そうなんだが…。


致命的な見間違えをしてしまったぜ。動きとか雰囲気似すぎだろ。血は争えないってかぁ?


最強の特質を持つ鬼塚おにづかとは違って、弟の翠蓮すいれんには何の能力もねぇ。俺と同じ、そこら辺のパンピーって奴だ。


鬼塚おにづか母「翠蓮すいれん、行きなさい。お母さんがあいつを食い止めるから…!」


質素な見た目と頼りない細身の体型のお母さんだが…、食い止めるってことは何かしら力があるのか?


翠蓮すいれん「何言ってんだよ! 一緒に逃げるんだよ!」


鬼塚おにづか母「言うこと聞きなさい! ほら、お母さんだって覚醒するかもしれないじゃない!」


生命の最上位神の前で、死体が転がる中、日常的な口喧嘩を始める鬼塚おにづか親子。


肝っ玉は世界最強クラスってかぁ? 話を聞いた感じ、こりゃおかんもパンピーだな。


興禅こうぜん「生き残りか」


奴が言い合いしている2人に対し、そう呟いた瞬間だった。


ハハッ♪ 来たぜ、あの感覚がな。


先にキモさが脳に来る。


つまり、()()()は大成功ってことだ。


棒立ちのまま何の動作や予兆もなく、光の速度で攻撃できる異能を持つ興禅こうぜん立休りっきゅう


そんな奴が、ピッチャーのような構えをとってこう言った。



興禅こうぜん「4番バッター、興禅こうぜん立休りっきゅう__()()()()



俺はその言葉を聞いて、奴の元へと駆け出した。


奴は、野球ボールを投げるように、鬼塚おにづか親子に向かって大きく振りかぶる。


興禅こうぜんの光の異能──。


奴自身から事細かく聞いた俺は、その能力をこう名付けてやった。



興禅こうぜん線分光矢ライト・アロー



振りかぶった奴の手が眩く光り出す。


“キモさ”も万事健在♪


視える、キモい、大振りの三拍子。


光が親子に放たれる直前、俺は奴の背後から振り上げた腕を掴み、もう片方の手で首を締め上げた。


興禅こうぜん「があ゛っ…!」


俺が教えたとおりにできてやがる♪


飲み込みが早ぇ優秀な奴だな。


腐っても神ってかぁ?


だが、1つだけ違う。



「ピッチャーな」


ドン!



俺はそう耳打ちしてから、自分の身体ごと奴を地面に叩きつけた。


軌道が上に逸れた直線状の光が夜空を照らす。


鬼塚おにづか母「きゃああ! ほら、危ないでしょ!」


翠蓮すいれん「あ、あれは……すめらぎ先輩?」


悲鳴を上げながら注意する母親に対し、翠蓮すいれんはこちらを見て俺の名前を呼んだ。


改めて久しぶりだな、翠蓮すいれん


人工物くせぇ不知火しらぬいもどきとり合った時以来かぁ?


興禅こうぜん「クソがっ…!」


興禅こうぜんと俺は、同時に身体を横転させて立ち上がった。


立ち位置が入れ替わる。


俺の背後には鬼塚おにづか親子。


修羅場と化した祭りの会場。


俺は振り返ることなく、翠蓮すいれんと母親にこう言った。



「走れ、パンピー親子! 最強のお兄ちゃん呼んでこい!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ