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BREAKERZ - 奇っ怪な能力で神を討つ  作者: Maw
鬼ごっこ編
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2日目 - 水瀬 友紀⑥

れいの作戦で何とか切り抜けることに成功。新庄しんじょうのバットは思った以上に凄まじいものだった。


こんなことになるとは…。これではどっちがテロリストかわからない。


強力な武器だけど使う場面は限られる。


幸い近くに人の気配はなかった。誰も巻き込んではいないと思う。


昨日の時点でこの辺りの人たちは避難していたんだな。


剣崎けんざき「2人に聞きたいことがある。あの黒い者たちは何者なのか。機械のように見えるが。そして昨日、一体何があった?」


彼は、ぼーっと炎を眺めている僕らに声をかけてきた。


そう言えば逃げてばかりで奴らについて何も話してなかったな。昨日、休んでたれいは何も知らない。


奴らはけいの造ったロボットだということ。


そして、けいがそれを使い、“鬼ごっこ”という名目で僕らの学校の生徒を追いかけ回し、人質として捕まえていることを話した。


でも、人質として捕まえているという確証はない。


けいの発言を信じているのと、そうあって欲しいと言う僕の願いから、れいにはそう言い切ることにした。


けいれいも僕と同じ中学で、一応は顔見知り。自分の知り合いがテロまがいなことをしていると聞いて驚いている様子だ。


剣崎けんざき文月ふづき氏がまさかそんなことを…。いったい何故そのようなことに至ったのだ?」


理由はわからない。僕だって知りたい。


彼は中学の頃からいろんなものを造っていた。時にはイタズラをして人を驚かせたりしていたけど、犯罪に手を染めるような奴じゃない。


彼の話を聞きたい。どんな経緯いきさつで、どんな気持ちでこんなことをしているのか。


僕はれいに対して首を振る。


「わからない。だけどけいは友達だ。僕はこれから彼を止めにいく。2人はどうする?」


正直、彼らがついてきてくれると頼もしい。


唾液を自在に操れるれいと、鬼を一撃で蹴散らせる武器を持っている新庄しんじょう


だけど強制はできない。けいのところへ行けば、より多くの鬼を相手することになるだろう。


無理に着いてきてもらって2人が危険な目にあったら面目ない。


だから、あくまで彼らの意思を尊重する。


新庄しんじょう「はぁ!? 何言ってんだ! 危ねぇだろ。止めとけって」


若干不機嫌そうな顔をして、口調を荒げる新庄しんじょう。怒っているようにも見えるけど、心配してくれているのがわかる。


そりゃそうなるよね。確かにかなり無謀なことを言っていると思う。


ずっと不良で柄の悪い危ない奴だと思ってたけど、悪い奴じゃなかったんだな。


でも、僕はたとえ1人でも行く。最悪捕まったとしても、人質として彼の元へ行けるなら話は聞けるだろうから。


新庄しんじょう、彼はけいの元へ向かうのを反対。


れいは顎に手を当て少し考えた後、深く息をしてからこちらに振り向いた。


剣崎けんざき「私は水瀬みなせ氏に同行する。新庄しんじょう氏はあまり面識がないかもしれないが、私が知っている限り、文月ふづき氏は極悪人ではないのだ。きっと乱心に違いない。何か気に病むことでもあったのだろう。私は友人として彼を心の闇から救ってやらねばならないのだ」


ありがとう、れい。正直1人で行くのは心細いと思っていた。本当に2人とも良い友達だ。


れい、ありがとう。なるべく危ない目に合わないように努力するよ。新庄しんじょうも心配してくれてありがとう」


僕は2人に礼を言う。そして、新庄しんじょうに右手を差し出して別れの握手を求めた。


新庄しんじょう「マジかよ。行くのかよ…。じゃあな、俺は帰るぜ」


彼は僕の手を取ることなく、バットを担いで背を向ける。心配そうな横顔に寂しそうにも見える背中。


本当は一緒に来たいんじゃないかと思ったけど、仲良く安心安全なピクニックにいくわけじゃないから無理には誘えない。


「じゃあ、けいを止めてくる」


剣崎けんざき「達者でな」


僕とれいは手を振って、彼とは反対の方向に歩きだした。


必ず無事に戻ってくる。退屈だけど平和だった学校生活を絶対に取り戻すんだ。


あれだけ詰まらないと思っていた日々も、今となっては恋しく思う。


いつも当たり前にあるものって、なくなってから初めて素晴らしいことだと気づくって誰かが言ってたっけ?


日常が戻ったら自分の将来についてちょっと考えてみよう。


剣崎けんざき「ところで、文月ふづき氏はいずこに?」


学校の方向へ歩いて向かいながら、僕らは話をした。


「実はわかってないんだ。けど昨日、けいは放送室をハッキングしている。そこに記録が残っているかもしれないから学校に戻ろうと思ってる」


せっかくついてきてくれたのに行き当たりばったりで申し訳ない。


もし記録がなければ、そのときは僕が鬼に捕まろう。


居場所を知る方法はこの2つしかない。


そして、ずっと鬼に追いかけられていたせいで結構参っているんだけど、実は悠長に歩いてる暇はない。


水瀬みなせ「多分だけど、けいは僕らを監視している。あれだけ統率の取れた動きをただのロボットの鬼が考えてやってるとは思えないんだ」


もし、僕らの行動を把握できていて居場所を突き止められたくないとしたら…。


監視されているかもしれないことを伝えると、れいは少しだけ歩くスピードを速めた。


剣崎けんざき「なるほど…。もし、我々を監視しているとしたら…。居場所を探っていることに気づいた時点で記録を消そうとするだろう。急いだ方が良いというわけだな」


呑み込み早くて助かる。


勘づかれるのも時間の問題だ。それにけいなら記録を消すことなどたわいもないだろう。


れい、さっきのことで疲れてるとは思うけど一緒に走ろう! 急がないと!」


軽トラでまぁまぁな距離を走った分、ここから学校まで決して近いとは言えないけど。


それでも走るしかない!




………ぉーい。




そう思って走りだそうとしたとき、後方から僕らを呼ぶ声が聞こえてくる。


夕日を背負い、バットを担いで走ってくる新庄しんじょうが何だかかっこ良く見えた。



新庄しんじょう「やっぱ暇だからついていってやらぁ!」




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