1回戦 - 水瀬 友紀⑧
「「「よろしくお願いします!!」」」
僕らのチーム“自警部”と“ベースボウズ”の試合は、この挨拶から始まった。
お互い礼をして握手を交わしてから、それぞれのポジションに散らばる。
中央に置かれたボールの前に立つのは、相手チームのフォワード。
キックオフは相手ボールから。
ピピーー!!
そして、五十嵐先生が吹いたホイッスルの音と同時に、ボールは前に蹴り出された。
体格の良いフォワードの選手は、もの凄い剣幕でこちらに向かってくる。
後ろにいる味方に、パスを出す気はなさそうだ。
一瞬、恵まれた体格と鋭い目つきに圧倒されそうになったけど問題ない。
“EvilRoid”や神憑たちと比べれば…。
ボールを蹴りながらこちらに迫ってくる彼に対し、僕はいたって冷静だ。
僕と少し距離を取って横に立っている陽に、目で合図を送った。
これが最初の作戦だ。フォーメーションと同時に解説していこう。
サッカーのことはよく知らない。だけど、勝つためにはそれなりの知識が必要だと思った。
戦術や陣形について調べて、僕らでもできそうなものは取り入れたつもりだ。
サッカーやバスケにおける選手の配置のことを、フォーメーションと言う。
サッカーのフォーメーションには定番があり、使われるものは何通りかに絞られているんだ。
その中で僕が採用したのは、1番シンプルでわかりやすくバランスも良いとされる“4-4-2”と呼ばれるものだった。
ゴールの近くで守るディフェンスが4人。
シュートを決めて点を取るフォワードが2人。
そして、コートの真ん中でパスを繋いだりボールを運んだりといった両者のサポートをするミッドフィルダーが4人。
僕と陽は、ミッドフィルダーのボランチと言われる役割を担っていた。
サッカーのポジションは大きく分けて上の3つ。その3つの中にも、戦術やフォーメーションごとに違う役割があり、それらの名前は多岐に渡る。
僕と陽の役割であるボランチは簡単に言うと、本当のど真ん中。
フォーメーションにもよるけど、“4-4-2”のボランチ2人に1番求められるのは敵の攻撃を停滞させることだ。
相手のパスをカットしたり、マークと言って、1人の選手に張り付いて自由にさせなかったりといった邪魔をする。
ここでボールを奪いきれるのが理想だけど、ボランチの位置でボールを奪うのは難しい。
パス、ドリブル、ロングシュート。
コートのど真ん中は、選択肢が豊富だからだ。
動くなら、攻撃側の意図を読まないといけない。読みが外れたら一気に崩される。
かと言って、様子見しすぎても好きなようにプレーされて苦しくなってくる。
臨機応変に立ち回らないといけないボランチは、初心者にとっては1番難しい役割になるだろう。
だけど、僕らには能力ありきの作戦がある。
様子見なんてする気はない。
陽が動く最初の作戦を以て……、
ボランチで必ず奪いきる!
最初の合図を受け取った陽は右手を大きく振り上げた後、人差し指でボールを持つ相手を指さした。
陽「僕、生徒会長は一般生徒である君たちに命令する! 大人しくボールを……ぐはあぁっ!」
ドサッ…
一瞬の出来事に、僕の頭の中には多くのハテナが浮かぶ。
作戦を遂行しようとした陽の顔面に、野球ボールが直撃したんだ。
もちろん無事じゃすまない。仰向けに倒れた彼の鼻は、ありえない方向に曲がっている。
止まる余地のない大量の鼻血は、グラウンドの砂を赤に滲ませた。
どういうことだ…? この野球ボールはどこから?
理解できずに立ち尽くしている僕の髪を、白い何かが撫でてくる。
野球ボール…? 正面から真っ直ぐに…。
僕は倒れている陽から、ボールを持って迫ってきていた相手に視線を移した。
もう彼の足元にサッカーボールはない。その代わり、金属バットを片手に向かってきている。
凄く獰猛な目つきだ。勝つことしか考えていない。
ーー
いつの間にか金属バットを持っていた彼は、“消える魔球児”こと吉持 肩八狼。
水瀬は彼をよく知らないが、吉波高校の問題児としてはそこそこ名が知れている。
先日ダンプカーにはね飛ばされたばかりだが、丈夫な身体とあの外科医の腕によって早々の復帰を果たしていた。
ーー
だけど、なんで金属バットや野球ボールを? 出る大会間違えたのかな?
普通に野球のユニフォーム着てるし。
「あの…、野球は向こうでやってるんだけど」
僕は親指で後ろを指しながらそう言ったけど、ここで1つ疑問が浮かぶ。
さっき呼ばれたとき、野球をしている方から来たよな。じゃあ、間違えているわけじゃないのか?
吉持「俺のフルスイングで逝きやがれぇ!」
目の前までやって来てバッターのような構えをとった彼は、僕を見据えてそう叫んだ。
やっぱり、“ベースボウズ”の彼らは間違えている。ちなみに、みんな坊主じゃない。
誰がどう見ても、彼らがしようとしているのは野球だ。でも、こんな危なっかしいスポーツだったっけ?
「待ってくれ! ここはサッカーコートだ!」
僕は説明しようと彼に手の平を向けたけど…。彼はいっさい聞く耳を持たず、僕に向かってバットを振り抜いた。
ゴンッ……バキッ!
吉持「ああぁぁぁぁぁぁ!!」
ちょうど半分に折れた金属バットは宙を舞い、彼は手首を抑えて悲鳴を上げる。
こうなるのも無理はない。どんなにガタイが良くても、彼は普通の人間なんだ。
僕らの間に割って入って…、
鬼塚「獅子王くん、大丈夫?」
倒れた陽の心配をしている琉蓮には誰も敵わない。
その気になれば地球を破壊できる彼は、“BREAKERZ”最強の特質持ちだ。
彼のポジションは、右サイドハーフ。
コートの右のラインぎりぎりに突っ立っていた彼は、守備をしにボランチまで戻ってきた……というわけではない。
鼻が曲がって流血している陽のことが心配になったんだろう。
僕もさっき掠ったけど、当たればこうなっていたかもしれない。
吉持「てめぇ…! ふざけんなぁ!」
腫れた手首を庇いながら立ち上がった彼は拳を作り、琉蓮に殴りかかった。
腰をかがめて心配そうに陽を見下ろしていた琉蓮は、真っ青になる。
鬼塚「やめて!? そんな勢いよく僕に触れないでえぇ!?」
バコッ!
…………。
これは、安心して良いのだろうか?
でも、大事にならなくて済みそうだ。
彼の放ったパンチは、力を振り絞って琉蓮の前に立った陽の顔面にめり込んでいた。
ドサッ…
再び倒れ込む陽。
鬼塚「獅子王くん…! そんな…、彼を庇って…」
琉蓮は涙目になりながら、崩れるように両膝を着いた。
ピピーー!!
もの凄い剣幕で笛を吹きながら走ってくる五十嵐先生。
五十嵐「お前、何をやっている! レッドカード、家に帰れ!」
痛めた手首を抑える獰猛な彼に対し、先生は怒鳴りながらレッドカードを提示した。
吉持「おい、なんで俺なんだよ、先生ぇ!」
五十嵐「連れていけ、実行委員!!」
不服そうな彼の抗議は無視される。
そして、近くで待機していた実行委員だと思われる十数名の生徒が、暴れ回る彼を引きずってコートの外に連れ出した。
内申点は上がるけど、実行委員って大変だよな。
皇「見たか! これが俺たちの王、鬼塚琉蓮の超能力だぁ♪」
前方、フォワードのポジションにいる皇はベンチの方に両手を大きく広げてニヤリと笑う。
彼の言動に対し、ベンチにいた数少ない観客の顔はピクリとも動かない。
期待していると言ってくれた副会長の京極も、意味がわからないといった様子で首を傾げていた。
「行こうぜ。何かバスケが盛り上がっているってよ」
1人の生徒の発言を皮切りに、みんなぞろぞろと体育館へ歩いていく。
皇「はぁ? 金属バットが折れたんだぜぇ? ちょっとはビビれよパンピーが…」
思惑通りにはいかず愚痴を零す皇。
確かに、金属バットが折れること自体珍しいし、それが人を殴って折れるってなったらもっと衝撃的だとは思うけど。
超能力って言葉が期待を煽りすぎたのかもしれないな。
皇からは少し焦りを感じる。御影教頭が不在による絶好のチャンスがプレッシャーになっているんだ。
自警部復活に向けて彼が何をするのかは詳しく知らない。注目を集めようとしているのは何となくわかるけど。
「皇、決勝まで進んだらみんな戻ってくるよ。今は勝つことを考えよう」
皇「はっ、興味ねぇなぁ。どうせ勝つだろ? 俺らがサッカーで負ける訳がねぇ♪」
彼は僕の発言を鼻で笑って、自分のポジションへ戻っていった。
よし、みんな定位置に着いてるな。
琉蓮は、ちゃんと右の端の線の上にいる。あそこならみんなと接触することはないし、なりかけてもコートの外に出て避けられるから安心だ。
「先生、再開してください!」
五十嵐「待て! そいつは大丈夫なのか?」
五十嵐先生は、僕の足元を指さしてそう言った。
あれ? 陽、まだ治ってなかったのか。
鼻とかひん曲がっているし、何か死にかけの人みたいにヒューヒュー言っている。
「すみません、ちょっと待ってください!」
僕は先生に謝ってから、屈んで陽を見下ろした。
「“生徒会長絶対命令戦法”はダメだったけど、君のお陰で相手を1人減らせたよ。さぁ、頑張ろう!」
どんどん青白くなっていく彼から、僕は空に目線を移す。
雲1つない快晴だ。“EvilRoid”と戦ったあの日のように。
僕はちょうど真上に位置する太陽を指さした。
「今日は快晴だ。みんな待っている。早く“あきら”と2回言って立ち上がるんだ!」
陽の特質。太陽を見てゴリラに変身すること。
それだけじゃないと聞いている。変身前にどれだけ傷を負っていても、変身後に何ら影響はない。
つまり、変身を繰り返すことで何度でも万全な状態のゴリラに戻れるんだ。
太陽が出ている内は実質不死身。
今ゴリラになってすぐ人間に戻れば、折れ曲がった鼻や死にそうな人あるあるの掠れた呼吸も完治する。
だから、うっかりしていたんだ。もうとっくに回復していると思っていた。
獅子王「ヒューヒュー…。みんなに見られるから……ヒュー……ゴリラは無理」
え…?
その言葉を最後に、彼の呼吸は静かになった。
「実行委員、助けてくれええぇぇぇ!! ゴリラが……人間が……死ぬうぅぅ!!」
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よし、作戦の話に戻そう。
あぁ、陽なら大丈夫。
屋上で学校内を見張っていた怜が彼を担いで、保健室まで運んでいったから。
怜は元々、サッカー大会のメンバーに参加していない。
政府の2人が不在というのもあって、彼も敵の襲来を警戒しているんだ。
だから大会には参加せず、屋上から何か異常がないか見張ると言っていた。
ピピーー!!
笛が吹かれ、お互い1人減った状態で試合は再開される。
さっき少し話した琉蓮のポジションでもあるサイドハーフやサイドバックについて説明しよう。
両方ともコートの左右の端に位置するポジションで、サイドバックはディフェンス、サイドハーフはミッドフィルダーに分類される。
シンプルに右側にいる彼らを右サイドバック、右サイドハーフと呼び、左側にいる場合は左サイドバック、左サイドハーフと呼ぶんだ。
ラインの近く“サイド”に位置するポジションも重要な役割がある。
主には、スピード重視の攻撃や守備、フォワードの頭を目がけてボールを供給するセンタリングなど。
サイドハーフならドリブルで勝負を仕掛け、相手の守備を切り崩していかなければならない場面もあるだろう。
またサイドバックは自陣のゴール前を守るディフェンス、センターバックと連動して動かないといけない。
守りの連携が取れないと、パスやドリブルで一気に崩される。
ディフェンスが突破されたら後はもうキーパーしかいない。
そんな重要な役割を担う僕らのサイドバック、サイドハーフには彼らがいた…。
まず、さっきも言ったとおり、右サイドハーフには琉蓮がいる。
彼の1番の役目は、“誰にも触れず、怪我をさせないこと”。
彼自身も学校のみんなに危害を加えたくないと思っているだろう。
右端の白い線の上で直立不動で突っ立っている。
そして、今は試合中。
僕らの左サイドハーフがいる所へボールが転がっていった。
「行ったぞ、樹神あぁ! 取ってくれ!」
左サイドハーフにはブロッコリーの王様、パチンコ中毒の樹神寛海がいる。
彼は何だか頼りない。寝不足なのか虚ろな目をしていた。
樹神「お、なんだなんだ? あぁ、この白と黒のボールを止めたら良いんだな!」
彼ははっとした表情でそう言って、自分の元へ転がってくるボールを踏みつけようと足を上げる。
そして、目の前までやって来たボールを目がけて足を勢いよく下ろした。
つるんっ
樹神「あぁ~~~れえぇ~~~~!!」
いや、なんでそうなるんだよ…。
足の裏で止めようとボールを踏みつけた樹神は、まるでバナナの皮を踏みつけたかのように滑り、両手を大げさに広げた状態でひっくり返って背中を打ちつけた。
見ての通り、僕らのサイドハーフは機能していない。
誰も怪我させないようにコートの端っこで静かにしている右サイドの琉蓮と、運動神経が悪すぎる左サイドの樹神。
なら、右サイドバックと左サイドバックは?
サイドハーフがダメでも、サイドバックが優秀なら守備は何とかなるって思うよね。
僕らのサイドバックを担当するのは、彼ら2人だ。
僕は左の前方にいた樹神から、後ろの2人に視線を移した。
「やぁ、こんにちは。きれいなチョウチョさんだね」
あれが僕らの右サイドバックだ。今はたまたま飛んできたモンシロチョウと笑顔で対話している。
彼の名前は、志鎌 緑夢。通称“グリムのぐっさん”らしい。
全体的に主張のない薄く青白い顔に華奢な体型の彼は、どこか心配になる。
“BREAKERZ”だけでは11人揃わなくて、足りない人数を補うために参加してくれたのは嬉しいんだけど、今のところ戦力になってない。
試合が始まってからずっとあんな調子だ。ボールや僕らには目もくれず、飛んできた虫や密かに生えているグラウンドの雑草と会話している。
そして、左サイドバックも助っ人として来てくれた人なんだけど…。
國吉「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁぁぁぁぁぁ!! 球技大会楽しいぃぃぃぃぃ!!」
彼もボールにはいっさい興味を示さず、ずっとあんな感じで叫んでいる。
國吉 旺我。皇いわく、若干背の高いうるさい坊主頭だ。
つまり、僕らのサイドは全く機能していない。戦えるのはサイドの4人を除いた中央の5人とキーパーだけ。
陽が怪我をしてなければ、6人で戦えたんだけど…。
まぁ、これだけグダグダでも……、
的場「必殺__エイムショット!」
彼がいれば勝てるんだよな。
的場が蹴ったサッカーボールは、またゴールの隅に突き刺さった。
現在、15 vs 0で圧倒中。
皇と同じく、フォワードのポジションにいる的場にボールさえ渡せば、どこにいても決めてくれる。
たとえ自分のゴール前にいても例外なくだ。
狙った場所へ確実に蹴り込むのはもちろん、遊び心からか大きくS字を描くようなカーブシュートも披露している。
こんなのサッカー部のキーパーでも取れないだろう。
皇『俺らがサッカーで負ける訳がねぇ♪』
彼がそう言っていたのは、僕らが現役サッカー部かつ特質持ちの的場を擁しているからだ。
そして皇、彼のドリブルも何か凄い。
彼はサッカーの経験なんて全くないって言ってたけど、独特のリズムで野球部たちを躱していっている。
皇「道を空けろ! 雑魚ハゲ共おぉ!!」
ちなみに、彼らはハゲてないし坊主でもない。野球部だけど、ちゃんと髪はフサフサだ。
皇のドリブル、あれも直感で避けているのだろうか? もしかしたら、サッカーの才能が芽生えかけている?
15点中2点は彼の得点だ。まぁ、的場がゴール前でパスを出してそれを決めただけなんだけど。
そして、皇は試合終了間際、大量失点で戦意喪失したやる気のないディフェンスを掻い潜り、自力でゴールを決めた。
皇「見たか! ハットトリックだぁ!!」
サッカー自体には興味のなさそうな皇だったけど、ハットトリックとなる3点目を決めて喜んでいる。
ピピーー!!
ここで笛が鳴り、“ベースボウズ”との1回戦は16vs0で完勝した。
2回戦、3回戦以降も流れは同じような感じだ。
皇のセンスと運、直感の詰まったドリブルと、的場の“外れないシュート”で圧勝。
一度昼休みを挟んでからも勝ち続け、残るはサッカー部との決勝戦のみとなった。
僕らは決勝戦が始まる前、もう一度円になって手を合わせた。
「後1試合。これに勝ったら優勝だけど、今回はひと味違う相手だ。相手は全員サッカー部。最後はみんなで戦おう!」
僕がそう言うと、みんな口々に話し始める。
皇「観客用のベンチは満席♪ 良いねぇ、ここが正念場だぁ♪」
みんな観客用のベンチに腰を掛けたり、その周りでうろうろしながら試合が始まるのを待っているようだ。
そんな彼らを見て、皇はニヤリと笑った。
どうやら、サッカーの決勝戦が1番最後らしいんだ。
他の競技の決勝はもう終わったみたいで、みんなぞろぞろと僕らの所へ集まってきている。
文月「大した訓練にはならなかったな。的場以外は何の力も使ってない。能力を持たない一般生徒では役不足だったか…」
簡単に勝ち上がれてしまったことに対し、慶は不満な様子だ。
確かに最初の陽の作戦以外は全然使ってない。それくらい簡単だった。
獅子王「と、とりあえず頑張ろう! 最悪の場合、僕もゴリラになってサッカーするよ」
陽も完全に復活して、ここに戻ってきている。
人気の無い校舎裏でしれっとゴリラに変身して戻ったらしい。だから今は全快だ。
「サッカーの決勝、どことどこ?」
「ええと、サッカー部と自警部ってところ~?」
「えぇ? それぜってーサッカー部が勝つじゃん。つまんねぇの」
賑わうベンチからは色々な話が聞こえてくる。
「いや、わかんねぇぞ。バスケの決勝だって良い試合してただろ? 途中まであの子たちの方が勝ってたし」
「あの子とか言うなよ!? シメられるぞ?」
バスケの試合も見てみたかったな。
怜が言ってたけど、結構盛り上がってたんだっけ?
「自警部って何だっけ? どっかで聞いたことが…」
「あれだろ? 超能力が何とかって言ってた…」
“超能力”という言葉を聞いてか、皇から狂気的な笑みが零れる。
「え、何かそれ地味に楽しみなやつじゃん? ほぼ嘘と思うけどな」
五十嵐「これより、サッカー大会、決勝戦を始める! “吉波高校サッカー部”と“自警部”、コートに入れ!」
パチパチパチパチ!!
決勝ということもあってか、僕らは大きな拍手で迎えられ、最後の試合に足を踏み入れた。




