代行 - 皇 尚人⑥
村川「うっ…………うっ………おばぇ、ぞの髪型は何やねん……」
死にそうになって恐かったのか知らねぇが、村川は新庄を前にして、膝から泣き崩れた。
このザマを撮影して校内にばら撒けば、世界最恐という思い込みはなくなりそうだな。
だが、そんな余裕はねぇ。不知火もどきはまだ生きてやがる。
「おい、新庄。油断するな。奴は死んでねぇ」
俺はバスの中から、泣き崩れた村川を見て狼狽えている新庄に注意を促した。
あいつは、左胸に槍が突き刺さり地面に磔になっている奴の方に目を向ける。
数秒くらい眺めていると、奴はひょこっと頭を起こして右手で槍を難なく引き抜いた。
新庄「おい、本当に人間じゃねぇんだな?」
その光景を見た新庄は、俺の方へ振り返り険しい顔をして確認を取ってくる。
こいつはバカかぁ? 今の見たらわかるだろ。
「当たり前だバカヤロー。普通の人間なら死んでるぜ。そいつは人工物臭ぇ殺意満点の化け物だ。とっととそのバットで始末しようぜぇ♪」
俺は新庄の持つ金属バットを指さし、ニヤリと笑って見せる。
ハハッ♪ 最悪、人間だとしても正当防衛が余裕で成り立つぜ。
そんなやり取りをしている内に、槍が貫通していた奴の左胸は完全に再生したみてぇだな。五体満足の状態で突っ立っていやがる。
奴は右手で額の汗を拭うような動作をした。
U「ふぅ……。ちょっとヒヤッとしたよ~。君が金属バットの新庄篤史だね?」
ヒヤッと……?
おいおい……こいつ今、盛大に墓穴掘りやがったぜぇ♪
本家不知火とは違って完全な不死身じゃねぇってことか? なら、どこかに弱点があるはずだ。
丁寧に弱点があることを教えてくれるとはありがてぇなぁ♪ 俺の“いやぁ褒め殺し”で心を許したのかぁ?
どこかに傷を負わせることで倒せるんなら、金属バットで何とかなるかもしれねぇ。
それを新庄に伝えたいが、どうやら奴はかかって来るみてぇだな。
「新庄、来るぞ! 気をつけろ!」
一旦、そう言うしか余裕はない。奴のキモさは新庄に向いていた。
新庄が俺の指示を素直に聞き、バットを両手で握って前に構えた瞬間……、
シュッ!
奴はあの俊足で一気に新庄の元へ距離を縮めてきた。
クソ早いが、あいつは反応できるのか…?
奴は新庄の目の前で体勢を低くし、両手の指を鉤爪に変化させる。
U「成体変化・鉤づ……」
新庄「オラァ!」
バキッ!
流石は金髪不良の新庄。喧嘩慣れしてるから、その程度の速さならわけないってかぁ?
不知火もどきが下から爪を振り上げるより先に、新庄のバットが頭を目がけて振り下ろされた。
見事に命中はしたが、威力が高すぎたようだ。文月によると、あの金属バットには莫大な電気が流れている。
あの無敵の鬼をも焼き切るほどの電力だ。
普通のバットなら怯ませたり、吹っ飛ばしたりできたかもしれねぇが、奴の耐久性自体は生身の人間と変わらねぇ。
つまり、どうなったかっていうと……、
シャッ……!
新庄「うおっ! 危ねぇ!」
焼き切られるという形で、不知火もどきの身体は頭から真っ二つに両断されたが、致命傷にならず怯みはしなかった。
両断されたにも関わらず、鉤爪は新庄の胴体に向かっていき、あいつはそれをギリギリのところで躱したといったところだ。
新庄は反射的に仰け反りながら、向かってきた鉤爪を手首ごと切り落とす。
あいつもそこまではバカじゃないらしい。
バットで焼き切っても意味はないと感じたのか、既に引っ付いて再生しつつあった奴の身体を蹴り飛ばした。
どうせ再生するだろうな。ある程度、距離が開いて仕切り直しって感じだ。
それにしてもすげぇ反射神経だな。普通の人間ならあの鉤爪には反応できねぇだろう。
俺と同じような直感でもあるのかぁ? 無いとすれば運動神経がめちゃくちゃ良いってことになる。
U「すごいバットだね! 合流されると面倒って言ってたのわかる気がするよ」
身体を完全に再生させた不知火はそう言いながら、地面に手を伏せた。
来るぞ…。鉤爪のスピードに対応されたからもっと速い攻撃を仕掛けるつもりだろう。
バスを追いかけてきたときの変化に違いねぇ。
「新庄、構えろ! 多分、クソ速えぇぞ!」
U「成体変化・趨豹跳虎」
タッ…!
奴は自分の手足を犬や猫の手足みたいに変化させ、後ろ脚で地面を蹴飛ばした。
さすが法定速度守ったバスに追いつけるだけはある。鉤爪のときとは比じゃねぇくらい速いが、一直線に突っかかるなら結果は変わらない。
ただ、バットをタイミング良く振れば良いだけだからな。
新庄自身もそう思ったのか、バッターのような構えを取って不知火もどきを見定める。
だが、奴は接近する直前で…、
トンッ…
姿を忽然と消しやがった。
新庄「…………へ?」
奴を見失い、バットを構えたまま辺りを見渡す新庄。
奴は消えたんじゃねぇ。
俺ならわかるぜぇ♪ お前の殺意は、いつだってキモいんだよ!
「新庄! 上だあぁぁ!」
俺の声に反応し、新庄は真上を見上げる。
奴の目線の先には、両腕の肘から手の先までを赤黒い剣に変化させた不知火もどきが…。
U「成体変化・黒腫刀」
奴は空中で身体を後ろに反らせ、新庄目がけて剣を振り下ろした。
それに対し、新庄はバットの持ち手と先端を両手で持ち、自身の頭上に添える。
シャキンッ!
普通のバットなら何の意味もねぇ体勢だろうが、まぁ普通じゃねぇもんなぁ♪
U「え……嘘……?」
両手の剣はバットと交差した瞬間に焼き切れた。あいつのバットに流れる莫大な電気のお陰だ。
気味が良いなぁ! 不知火もどきも動揺しているみたいだぜ。
そして……、
新庄「オラァ!」
今度は奴の顔面にパンチを食らわして吹き飛ばす。吹っ飛びはするが、あまり効いてはねぇ。
思い切り吹き飛ばされようが、着地したときには完全に再生している。
あぁ、また仕切り直しって奴か…。
新庄「おら、もっと来いよ! 負ける気しねぇぞ!」
左肩にバットを担いで右手を突き出し、手前に倒して煽る新庄。
アホのあいつは気づいてねぇかもしれねぇが、これは永遠に仕切り直しで決着つかない奴だぜ…。
体力切れたときが新庄の潮時だ。
それを狙ってるのか不知火もどきは挑発に乗り、多様な成体変化で攻撃を仕掛け続ける。
鉤爪、俺に叩きつけようとしてきた膨張した拳、剣や槍など。
何度返り討ちにされようと猛攻は止まらない。
金属バットが壊れるってことはないだろうが…。
新庄「はぁ……はぁ……、まだまだ来いやぁ!」
息を荒げながら、再びバットを構える新庄。
こっちの限界は徐々に迫ってきてやがる。
U「アハハッ! 凄い体力~♪」
もうすぐ仕留められると思ってやがるのか、今まで以上に口角の上がった笑顔を見せながら新庄に詰め寄った。
早く弱点を見つけねぇとな。何かヒントはねぇか?
棘が心臓に刺さったときヒヤッとした。なんでヒヤッとしたんだ?
新庄の家に来てからあのバカでかい棘を出さなくなった理由は……?
U「アハハハッ!」
新庄「はぁ……クソッ……いい加減くたばれよ!」
…………。
あぁ、そんなもんどうでもいいわぁ♪
とりあえず、どこかに傷つけりゃ倒せるかもしれないんだろ?
じゃあ、手っ取り早いのは…。
俺は息切れ寸前の新庄に呼びかけた。
「新庄! お前んち、灯油くらいあるよなぁ!? 場所を教えろ!」
このクソ寒い2月に灯油買ってねぇ家の方が少ないぜぇ♪
新庄は振り返ることなく、不知火もどきに応戦しながら声を張る。
新庄「何に使うのか知らねぇけど、家の裏にタンクがある! 寒いなら家のストーブ使って待っててくれ! こいつぶっ倒したら、俺も暖まりに行くからよ」
どこまでもアホな奴だが、金属バットの使い手を死なせるのは勿体ねぇぜ。
「サンキュー! 死ぬなよ!」
俺は新庄に言われた通り、奴の家の裏へ向かった。
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ここか。
家の裏の壁の近くにある室外機の隣。そこに赤いポリタンクが2つほど置かれている。
だが、ポリタンクのままじゃ使い勝手が悪いんだよなぁ。
俺の運が関係してるのかはわからねぇが、ポリタンクの横にはちょうど良いくらいの青バケツが置いてあった。
よし、これでぶっ殺してやるぜ!
俺はポリタンクに入った灯油をバケツいっぱいに注いでいく。
何を考えてんのかって? 簡単な話だぁ♪
不知火もどきはどこかに弱点を抱えている。左胸とは限らねぇが、そこに攻撃が当たりそうになってヒヤッとしたんなら、もうわかるよなぁ?
灯油全身にぶっかけて金属バットの電気でドカーンって感じだ♪ 弱点もろとも1発で消し飛ばせば何も考えなくて良いんだよ!
バケツに灯油を汲み終えた俺は、零さないように……でも、急ぎ足で新庄の元へと向かった。
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新庄「ぜぇ……ぜぇ……しぶといな、小さいの」
U「君も人間にしては、しぶとすぎるくらいだよ!」
バットを右手に持ち、両手を膝を置いて肩で息をしている新庄と、変わらず無傷で五体満足の不知火もどき。
そして、奴ら2人の周りには棘や剣、礫などの残骸が転がっている。
「おーい、クソチビィ♪ これ何かわかるかぁ?」
そんな中、俺が両手でバケツを抱えて現れたってわけだ。
あと一歩遅かったら新庄の奴、殺されてたかもしれねぇな。
不知火もどきはこちらに向いて首を傾げる。
わからねぇなら言ってやるよ。
「お前を焼き殺すための灯油だバカヤロー!」
俺の発言に、奴は血相を変え、手足を赤黒く変化させながら地面に両手を着いた。
おぉ、使うのかぁ♪ あのバカでかい棘を。
だがなぁ……
新庄「オラァ! 知り合いに手出すんじゃねぇ!」
バキッ
こいつの目の前では悠長に発動できねぇよなぁ♪
新庄は、金属バットで地面に着いた両腕を焼き切った。
多少の灯油漏れは気にせず、俺は小走りで不知火もどきに向かっていく。
奴は新庄には目もくれず、今度は腕を引きちぎり赤黒い槍に変化させるが…、
バキッ
これを投げるのも新庄が阻止をする。
もう俺は目の前まで来たぜぇ♪
俺は満面の笑みで、こいつに灯油をぶっかけた。
「ご愁傷様でぇす♪ やれ、新庄!」
新庄は軽く頷き、バットを両手で掴んで頭上まで持ち上げた。
そして、俺は爆発に巻き込まれないよう猛ダッシュで距離を取る。
U「………! 成体変化・脂塊壁」
咄嗟に自分を守ろうとしたのか、奴は両腕を顔の前で、手首から肘までピタリとくっつけた。
そのくっつけた両腕はみるみる膨張し、四角く分厚い肌色の壁に変化する。
ぱっと見守れそうだが、相手はあの金属バット。その壁の硬さ……せめて鬼……いや、それを凌駕するくれぇ硬くないと話にならねぇぜ。
新庄「カミナリ大根切り!」
目の前に出来上がった肌色の壁に対して、新庄は全く気にすることなくバットを振り下ろした。
ドッ…………!
チッ…! 若干、耳鳴りがしやがる。
金属バットの電気と灯油が相まって、奴の身体は大爆発を起こし、跡形もなく飛び散った。
新庄「やったか?」
おい、フラグ立てんなバカヤロー。今の発言で運気下がった気がするぜ。
まぁ、フラグ云々関係なく油断はできない。
あの浮遊している銀色の球みたいなのは何だ? 野球ボールくらいのデカさだ。
…………。あぁ、あれが弱点だったのか。
「おい、新庄。まだ終わってねぇぞ。あの銀色のボールみてぇなのを破壊しろ!」
あれを壊さねぇ限り、飛び散った肉や血が集まってきて再生する可能性がある。
新庄の目の前で爆発したが、反動で球が後ろに吹っ飛んだんだろう。
少し距離があるが、新庄は急いで球に向かって走っていく。
何だ? この妙なキモさは…。
不知火もどきの気配はねぇが空気そのものがキモい気がする。
走っていく新庄の背中を見つめながら俺は考えた。
おい、待てよ。飛び散った肉や血がキモいんだとしたら…。
「新庄、周りに気をつけ……!」
言おうとした頃にはもう遅かったみてぇだ。
飛び散った全ての血肉が不自然に浮遊し、新庄を囲い込む。
そして、ごく一部の血肉が球の近くに集まり、不知火もどきの口に変化した。
U「血針」
その口がそう言い放った瞬間、肉片は細かく裂けて血に、そして全ての血は固まり、1つ1つが細い針のようになって新庄に襲いかかる。
これを全部喰らうと身体中穴だらけになって死んでしまうだろう。だが、囲まれていて逃げ場はねぇ!
クソッ…、完全に詰んだぞ! キモいのはわかってるが、どうしようもない。
俺は……終わったと確信していたが…。
新庄「うおらぁ!」
ぶんっ!
奴は自己犠牲を顧みず、浮遊している球に向かって金属バットをぶん投げた。
バキッ!
縦に回転しながら飛んでいった金属バットは、見事に命中し球を粉砕する。
それと同時に、新庄は奴の血を全身に浴びることになってしまった。
ボトッ…
浮遊していた口は地面に落ち、それとほぼ同時に新庄の身体も膝から崩れた。
そして、もう不知火もどきの肉体が再生することはなかった。
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いやぁ、危ねぇ♪ 危うく人材を失うところだったぜ!
村川「お、おい…。新庄、お前……」
翠蓮「すみません。僕が非力なばかりに……死なせてしまって」
2人とも全身血まみれの新庄を前に、悲しげな雰囲気放ちまくってるのが面白ぇな♪
俺は両膝を着いて硬直している奴の顔を覗き込んだ。
「生きてるだろぉ? 間一髪だったな!」
後もうちょっと金属バットが遅かったら、こいつは死んでたかもしれねぇな。
こいつにあの血が届く前に球がぶっ壊れたんだ。多分だが、球がぶっ壊れればあの針のような血は効力を失い、ただの血に戻るんだろう。
その普通の血を浴びたってだけで、見かけはグロいが新庄自体は無傷だ。
新庄「あれ? お、俺、生きてんのか?」
自身の身体を両手で撫で回す新庄。
ハハッ♪ 俺に声かけられるまで自分でも死んでるって思ってたのか。
「安心しろ。生きてるぜぇ♪ これからも“BREAKERZ”の一員として働いてもらうから死なれると困るんだよ!」
俺は両手を広げて、新庄を改めて“BREAKERZ”に歓迎した。
こいつはチーム名が決まる前に停学になったからなぁ。
新庄は聞き慣れない名前を聞いてきょとんとした顔をする。
新庄「えっと……お前って……。あ、名前思い出したぞ! 文月じゃねぇか! 何、仲間ぶってんだよテロリスト!」
…………あ゛? こいつ、間違って良いことと悪いことがあるの知らねぇよな。
どこをどう見たらあの野郎と見間違えんだよバカヤロー。
思わず顔面引き攣りそうになったが…。
落ち着け。後で安定剤を飲んで忘れよう。
アホに突っかかっても得はしねぇ。理屈の通じない相手に煽りは効かねぇからな。
「間違えんじゃねぇ。皇 尚人だ。俺が自分から名乗るなんて珍しいぜぇ♪ 光栄に思えよ」
ここはリーダーらしく器の広い対応を心がけようぜ。
俺はいつもの笑顔で握手を求めた。奴も快く握手をしてきたが…。
新庄「おう! よろしくな! えっと……すめ……なんて?」
このニワトリ野郎が。わざとじゃねぇから余計に腹立つよなぁ。
まぁ、良い。さっさとこいつを文月のところへ連れていって報酬を貰うとするか。
俺は学校の方向へ目線を移す。
「行くぞ、学校へ。多分だが、こういうのがゴロゴロいやがるだろう」
バスが使えるんなら便利だったが、串刺しにされたから使えねぇ。
まぁ、チャリで行ける距離だから新庄だけ向かわせるか。
俺らが行っても大して役には立たないどころか、普通に死んじまう。
翠蓮「あの……! 今、あんなのがいっぱいいるんですか?」
学校の方を見ていた俺を後ろから呼びかけてくる翠蓮。
「多分って感じだ。俺も新庄を連れてこいとしか言われてねぇから詳しいことは知らねぇ」
俺が答えると、翠蓮は少し考えるような素振りをした。
翠蓮「良かったら、助っ人を呼んできま……」
ズドーンッ!!
それはマジでいきなりだった。キモさなんて微塵も感じねぇ。
殺意がないのか、格上すぎるとかか?
突如、翠蓮の隣に軽自動車を担いだ翠蓮より少し小さめのガタイマックスの男が降ってきた。
大してデカくはねぇけど、圧がヤバいぜ。敵意がないようには見えねぇ!
新庄「おい、早く離れろ! うおおおぉぉぉぉぉ!」
こいつも同じことを思ったのか、金属バットを持って突っかかっていった。
翠蓮を助け、俺らを逃がすためなら熱い男だぜ。
奴は身構える様子はなく、ただ軽自動車を担いで翠蓮を見つめている。
新庄の振り切った金属バットが奴のこめかみに直撃する寸前…。
翠蓮「敵じゃない! この人は俺の父親です!」
新庄「えぇ? ちょっ……!」
バコッ……
翠蓮の説明は間に合わず、金属バットは軽くこめかみに当たってしまった。
おい、ヤベぇぞ。次は停学じゃなくて少年院行きになるぜ…。
いくらガタイが良くても感電死しちまう……と思ったが、翠蓮の父親はゆっくりと軽自動車を地面に降ろし…、
壮蓮「痛い……」
と軽く呟き、優しくこめかみを撫でるだけで終わった。
ヤベぇ、これが鬼塚家のフィジカルか。むしろ鬼塚の血筋に痛みを与えたバットが最強まであるぜ…。
壮蓮「翠蓮、探したぞ。落ち着いて聞け。お母さんが急に消えたんだ」
翠蓮「え、どういうこと?」
あぁ、一緒にいるときにあのキモい世界送りになったんだろうな。
なんでこの2人と村川はならなかった? 何か送る奴の基準でもあるのかぁ?
まぁ、ただの手違いか。あいつは詰めが甘いんだよ。いつも肝心なところでやらかすんだよなぁ♪
「奥さんの居場所、俺は知ってますぜ♪」
俺はごまをすりながら、翠蓮の父親に近づいた。
壮蓮「本当か? 教えてくれ」
「良いですよ! ただし、条件がある」
俺は超絶丁寧に今までの経緯を説明した。
俺の予想として、母親はあのキモい世界にいて、敵を倒すまでは匿っているんだろうと。
俺が提示した条件ってのは、その敵を倒すのに協力するってこと。
壮蓮「わかった。協力しよう。道理で誰も見かけないわけだ」
案外、簡単に信じて条件を呑んでくれたな。まぁ騙されたとしても、そんだけ強けりゃ力で捻じ伏せれば良いもんなぁ。
それに翠蓮が言おうとしていた助っ人てのも父親のことだろう。
俺、翠蓮、新庄は父親の軽自動車に乗り込んだ。
村川は定員オーバーだから置いていくぜ。
翠蓮を送り届けた後、学校へ向かうって感じだ。
だが、俺は学校へ行く前に寄って欲しいところがあった。
俺は真顔で運転している翠蓮の父親に声を掛ける。
「あの……途中でスーパー寄ってください。コーラとポップコーン買いたいんで」




