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BREAKERZ - 奇っ怪な能力で神を討つ  作者: Maw
鬼ごっこ編
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1日目 - 文月 慶②

新庄篤史しんじょうあつしを捕まえろ」


僕の指示を受けた全ての鬼は、奴にゆっくりと近づいていった。


もうすぐ鬼ごっこの1日目が終わる。


吉波よしなみ校の生徒たちには3日間と告げたが、明日の朝には全員確保できそうだ。


政府には人質と要求を既に伝えてある。今、世間はどうなっているだろうか。


ふと気になり、自分の家から盗ってきた液晶テレビをつけた。


……………。


視聴可能なチャンネルを巡ってみたが、どこも報道していない。


『ここで臨時ニュースをお伝えします』


あ、今から報道されるのか。


『今日の夕方頃、吉波よしなみ町で…』


もう後戻りはできない。ここから僕と国、政府、国民との戦いが始まるんだ。


『ゴリラが走り回っているとの通報がありました』


…………は?


『そして、このゴリラなんですが、近くにゴリラを飼育している動物園がないため、出所が不明な模様です。専門家は野生の可能性もあると述べていますが……』


政府は大量の人質より1匹のゴリラのほうが大事なのか?


世間には知らせず、この事態を丸く収めたいというわけか。まぁ、高校生が国内でテロを起こしてるなんて報道するとパニックになりかねないからな。


人質のために僕の要求を呑むのか、人質を捨てて強行手段に出るのか。


まずは、政府の出方を見てやろう。


僕はテレビを消し、新庄篤史しんじょうあつしに目を移した。


『おらっ! 死ねよ!』


愚かにも金属バットで鬼に殴りかかろうとしている。


無駄なことを…。放送で言ったはずだが、理解できなかったのか?


僕が造った鬼の装甲には、あらゆる銃火器が効かない。


この不良なりに、


“銃火器は効かないとは聞いたが、金属バットが効かないとは聞いてない”


みたいな限りなく屁理屈に近い考えが通用すると踏んだのかもしれないが…。



バキッ。



残念だっ……え? そんな馬鹿な。金属バットごときに壊されるだと?


まさか、あいつの持っている()()は…!


いや、そうだとしても人間には強すぎて扱えないはず。だから、棄てたのに何故あいつが…?


仮にあのバットだとしたらまずい! 


「火力全開! いっせいに畳みかけろ! 先にバットを奪え!」


鬼は僕の指示通り、最大速度で新庄しんじょうに迫っていったが…。





………ダメだ。次々に倒されていく。間違いない、あのバットだ。でも、どうやって?


普通なら握った瞬間に耐えきれず死んでしまうはずなのに…。





____________________






クソッ!


悔しさのあまり、僕は机に拳を叩きつけた。


全滅だ。脳死でバット振り回してるだけの奴に負けるなんて…。


どれだけ苦労して造ったと思っている。


お前のやったことは………政府と大して変わらない…。クソ野郎が…。


……………。


叩きつけた拳を数秒見つめてから荒い呼吸を整える。


仕方ない、気持ちを切り替えよう。常に冷静でなければ何事も上手くはいかない。


所詮、様子見で学校に送った30体が壊されただけだ。もっと多くの鬼で囲んでアレさえ奪えば、奴はただの人間でしかない。


『じゃあ、よろしくな! じいちゃん2世』


勝手に変な名前をつけるな。


それは僕が造ったんだ。ネーミングセンスの欠片もない奴め。


既に日は暮れている。夜に動くのは危険だと思ったのか新庄しんじょうは体育館に入っていった。


今、中途半端に送っても壊されるだけ…。こいつは後回しだ。


今度はカメラに指示を出す。


水瀬みなせ友紀ゆうきを映し出せ」


モニターに水瀬みなせが映し出された。何を考えているのか知らないが、川を泳いでいる。


この場所に10体の鬼を向かわせよう。


同じ場所をずっと平泳ぎで往復している。すごい体力だな。移動する気はないのか?


機械だから水に弱いとでも? 残念、こちらは完全な防水機能付き。


普通なら陸の方から向かわせるが…。気づかれないように、あえて泳いで向かわせる。そして、囲い込んでから浮上。


もし、魚のように速くて追いつけなかったら困る。さっきのこともあるからな、念には念を…。


10体の鬼は水瀬みなせを囲った状態で浮上した。もう逃げ場はない。


「さぁ、捕まえろ」


『何だよ! 驚かせるなよ!………ベシッ』


おい、何してる? 泳ぎすぎて気でも狂ったのか?


次の瞬間、彼は潜った。ただの煽りか? よくそんな余裕を持っていられるな。


鬼ももちろん潜って追いかける。潜ったところで何もないと思うが…。











………しばらくたっても出てこない。もう10分くらいはたったか?


鬼に呼吸の概念はない。だが、人間だといつか限界は来る。諦めろ、水瀬みなせ






……………。一向に上がってこない。そんなに深かったのかこの川。








………深い?







「まずい! 水圧だ!」




奴の思惑に気づいたが、もう遅い。


水瀬みなせは上がってきたが、鬼が上がってくることは決してなかった。


やられた。防水はしていたが、水圧の対策はしていない。彼は水圧による故障を狙っていたんだ。


これは僕に不備があったわけじゃない。まさか、10分以上も深く潜れるとは誰も思わないだろう。


2連敗ってとこか……クソッ。良くないことは立て続けに起こる。


どちらにしろ、後はお前たち2人と今日休んでいた奴1人だけ。


他の生徒は全員捕まえた。お陰で丸々二日間、君たちに鬼を集中させられる。


鬼を倒された悔しさや絶対に捕まえるという決意からか、僕は拳を握り締めて歯を食いしばった。


捕まる覚悟を決めて待っていろ。もっと大量の鬼を送り込んで必ず捕まえてやる。









【鬼ごっこ1日目、終了】




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