表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
BREAKERZ - 奇っ怪な能力で神を討つ  作者: Maw
RESET Project編
102/271

視線 - 日下部 雅②

はぁ……はぁ………。






()()()()()()






学校の校門の前に僕はいる。


誰だい? ご都合展開だと言ったのは?


マンガやアニメに対して言いたくなる気持ちはわかるけど、僕は死に物狂いで帰ってきたんだ。


何故か放屁ファートの力を取り戻して飛んで帰ってきたとかではなくてね。


そんな僕に遅刻した理由とかを聞いてきて、ご都合展開だと言うクラスメイトがもし、いたら……今は放屁ファートが使えない代わりにシバくかもしれない。


さて、今は午後の1時になろうとしているところ。もうすぐ昼休みが終わる。


校門の前で倒れている僕の自転車と荷物を回収してさっさと教室に向かおう。



__________________




あぁ、気まずいね。


5限目がもうすぐ始まろうとしている中、僕はゆっくりと教室のドアを開ける。


そして、なるべく目立たないよう、教室の端を歩いて席に着こうとした。


だけど、このクラスになってからもう1年近く。クラスメイトとはある程度顔見知りで、僕は遅刻常習犯というわけでもない。


つまり、どんなに教室の隅を密かに歩こうと目立たないようにするのは不可能というわけさ。


それにこのクラスにはある知り合いがいる。




獅子王ししおう日下部くさかべ、大丈夫か?! そんな傷だらけの身体で…。いったい何があったんだ!」




僕と目が合うや否や、彼は駆けつけてきて大声を上げた。お陰で僕はクラスメイトから注目を浴びることになる。


獅子王ししおう、君にはデリカシーというものが全くないようだね。


こんな想いをするなら、保健室にもっていたかったよ。まぁ、ここ数日は何故か使用不可になってるんだけど…。


「心配することはないよ。寝返りを打った拍子に2段ベッドから転落しただけさ。朝は病院に行っていた、それだけのことだよ」


僕の部屋に2段ベッドはない。これは全て嘘。


お尻の制御ができなくなって、山奥に飛ばされたなんて口が裂けても言えないね。


僕の弁解に対して、獅子王ししおうは首を振る。



獅子王ししおう「でも、日下部くさかべ……僕は知っている。君の自転車が…、荷物が校門前に転がっていたことを」



このゴリラ、本当に空気が読めないようだ。


それに僕の物だと知ってどうしてそのまま放置していたんだい?


自転車置き場に運んでくれても良かったじゃないか。生徒会長なのに見て見ぬ振りをしたっていうのかい…?


彼はこちらに何歩か近づき、僕にだけ聞こえるよう小さな声でこう言った。


獅子王ししおう「誤魔化さなくていい。何かあったのはわかる。そういうときは()()に相談してほしい」


なるほど、君は何となく察していたんだね。


特質や神憑かみつきなどの能力に関する事件か何かに巻き込まれたと思ったんだろう。



「放課後、話そう」



僕も同じく小声で返して席に向かった。これ以上、目立ちたくはない。


何人かに声をかけられたけど、どれも僕を案ずる暖かい声だった。皆に無事だというむねを伝えて着席する。



シリウス「気づいてるかい?」


“__ああ、気づいているさ”。



いつも隣か後ろにいるシリウスの問いに対して、僕は心の中でそう答えた。


どうやら、彼も感じていたようだね。


学校に着いてからずっと感じていたピリピリとした謎の視線。これもあの子の能力か何かだろうか。



シリウス「恐らく監視されているね。帰りはなるべく1人にならないように…。なった場合は、全力の立ち漕ぎで家に帰ること」


“__了解”。



家に着くまで立ち漕ぎは正直言って厳しいけど、彼女に捕まるわけにはいかない。


1つ心配なのが…、獅子王ししおうのような他の能力持ちたちに彼女が危害を加えないかということ。


彼女が僕を狙った理由はわからない。つまり、僕以外の能力持ちを狙う可能性も否定できないというわけさ。



「あの…………」



…………! いつの間に…?


僕の真横に、いつの間にか全く知らない女子生徒が立っていた。


いきなりの出現に驚き、僕の身体は反射的に飛び跳ねる。


上半身を丸々覆えるんじゃないかってくらい長く真っ直ぐな黒髪。


どこか儚げな垂れ目に薄い唇、細身で女性にしては背が高めの彼女はミステリアスな雰囲気を放っている。


一言で言えば綺麗な人だけど、目の下にはくまができていて疲れてそうな感じだね。


神憑かみつき…、ではなさそうだけど。朝会ったあの子の仲間かもしれない。



「我は……今日、転校してきた霊園れいえん 千夜ちよ。朝いなかったから一応挨拶をしておいてやろう。名は何と言う?」



彼女は少し低めで感情のこもってなさそうな声で淡々と自己紹介をした。


自分のことを“われ”と言っている人と遭ったのは男女関係なく初めてだね…。


ただのクセのある転校生といった感じかな? シリウスも無反応だし、警戒する必要はあまりなさそうだね。



キーン コーン カーン コーン


キーン コーン カーン コーン



5限目の開始を知らせるチャイムが鳴った。


僕のクラスの担任、小林こばやし先生が受けもつ数学の授業だ。


数学の教科書を鞄から取り出しながら、僕は霊園れいえんさんを見上げる。



「なるほど。慣れないこともあるだろうから、そのときは聞いてね。僕は日下部くさかべ み……」


ドサッ…



そして、名前を名乗ろうとしたそのときだった。


頭が少しフラついた彼女は、床へ豪快に倒れ込んでしまったんだ。


原因はわからない…。今日は保健室が使えない。


教室に入ってきた小林こばやし先生は、すぐ病院に電話を掛けて救急車を手配してくれた。


彼女が救急車に乗せられ、運ばれていったのを見送ってから5限目が始まる。


10分程度遅れて始まった数学の授業だったけど…。



“__シリウス、気づいているかい?”。


シリウス「僕が気づかないと思うのかい?」



どうやら今回は、あの女の子だけじゃないようだ。


組んでいるのか、はたまた別の派閥はばつかは知らないけど。


後者だとすれば結構、ややこしいことになりそうだね…。



とりあえず、今日は獅子王ししおうと一緒に帰るとするよ。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ