私は漢字が書けない
2013年7月23日
小学1年生の林まい子です。この日はわたしのたん生日で七さいになりました。だから、おねえちゃんがかん字ドリルとこのノートをくれました。かん字ドリルというのは、わたしが小学校でべんきょうするかん字をれんしゅうするための本です。おねえちゃんはこの本をくれたときに、まい日かん字ドリルをやって、ノートにべんきょうしたかん字をつかって文しょうをかくといいよ、そしたらおねえちゃんみたいにたくさんかん字をかけるようになるよ、っていいました。だから、わたしはこの本でべんきょうしたかん字をつかって、これをかいています。この文しょうはわたしのノートの一ページ目です。
はじめはわたしの大すきなおねえちゃんについてかこうとおもいます。おねえちゃんは中学生で、わたしより六さい上です。おねえちゃんはやさしくて、わたしのしらないことをたくさんしってます。おねえちゃんにあれはなに?ときくと、おねえちゃんはいつもそれについておしえてくれます。雨の日は本をよんでくれます。わたしはそんなおねえちゃんがすきで、わたしもおねえちゃんみたいになりたいとおもっています。
おねえちゃんは、小学校ではたくさんのことをおべんきょうできて、いろんなことをしることができるとおしえてくれました。わたしはおねえちゃんみたいにものしりではないし、まだ上手にかん字がかけません。だから、たくさんおべんきょうして、たくさんかん字をれんしゅうして、おねえちゃんみたいになれるのが、わたしはとてもたのしみです。おわり。
2014年11月22日
今日は生まれてはじめてディズニーランドに行きました。ディズニーランドはミッキーとかドナルドがいる広いところで、色んなアトラクションにのることができます。わたしはこのディズニーランドに、パパとママと行きました。土曜日の朝早くから出かけて、へとへとになるまであそびました。
夜になってからお家に帰りました。わたしがへやにいると、お姉ちゃんがへやに入ってきて、どこに行ってきたの?と聞いてきました。わたしはパパとママとディズニーランドに行ってきて、たくさんあそんできたと言いました。それから、ミッキーとしゃしんをとったこととか、かわいいふでばこを買ってもらったことをお姉ちゃんに教えてあげました。つぎはいっしょに行こうねと言うと、お姉ちゃんはそうだねと言いました。お姉ちゃんといっしょにディズニーランドに行ったら、二人でミッキーとしゃしんをとりたいです。お姉ちゃんはまだディズニーランドに行ったことがないと言っていたので、わたしがお姉ちゃんにミッキーをしょうかいしてあげようと思います。
2015年10月2日
今日は『ぴあにっしも』というケーキ屋さんのショートケーキをお母さんが買ってきてくれました。このケーキはそもそもまみちゃんの家で食べたもので、それがすっごく美味しかったから、また食べたいと言ったら、お母さんが買ってきてくれたのです。すっごくうれしかった! 箱を開けると、中にはショートケーキが2つ入ってました。わたしはお姉ちゃんの分だろうと思って、部屋にいるお姉ちゃんをよびに行こうとすると、お母さんはそれを止めて、二人で食べようと言いました。
どうしてとわたしが聞くと、お母さんはお姉ちゃんはあまいものがすきじゃないからと言いました。お母さんはうそをつく時、自分の右耳をさわります。そして、さっきのセリフを言った時、お母さんは右耳をさわったので、わたしはお母さんがうそをついているのが分かりました。だけど、わたしは何も気がつかなかったふりをして、そうなんだと言いました。ケーキを食べたいといったのはわたしだし、ケーキは2つしかなかったので、もしお姉ちゃんが入ると、わたしの分が少なくなっちゃうかもしれなかったからです。ケーキはとても美味しかったです。
2016年5月1日
今日は特別話すこともないので、家族のことについて書こうと思う。というのも、最近お姉ちゃんと遊んでないなと思ったから。お姉ちゃんは相変わらずやさしいし、勉強をいつも丁ねいに教えてくれる。でも、わたしがお姉ちゃんとリビングで話したり、お姉ちゃんの話をすると、お母さんとお父さんは少しだけいやな顔をする。今までのわたしはそのことに気がついていなかったけど、一度それに気がつくと、なんだかとても気まずくなって、今ではあまり、リビングでお姉ちゃんとお話したり、お母さんとお父さんの前でお姉ちゃんの話をすることがなくなっちゃった。
お姉ちゃんのことが好きなことに変わりはないけど、やっぱりお母さんとお父さんのことも好きで、だからみょうに気をつかっちゃうしで、なんだかうまく言えないけどストレスたまっちゃうなーっていう感じ。お姉ちゃんがわたしに話しかけてきても、同じ部屋にお母さんかお父さんがいると、うまくおしゃべりできない。多分、ずっと前からお父さんとお母さんはそんな感じだったんだろうけど、昔のわたしはそれに気がついていなかったから、すごく楽しくおしゃべりできていたんだと思う。さびしいな。
お姉ちゃんは昔よく、色んなことを知ったりすることは楽しいことなんだよと言っていたけど、そんなこともないのかも。少なくとも、お姉ちゃんとのおしゃべりは、お母さんとお父さんに気をつかわないで良かった昔の方がずっとずっと楽しかったから。何も知らないまま、何も気がつかないままだったら、わたしは前みたいにお姉ちゃんと楽しくおしゃべりできたんだと思う。
学校でお勉強をして色んなことをしったり、お姉ちゃんからもらった漢字ドリルでいろんな漢字を書けるようになるのは楽しい。だけど、知らなかったことを知ってしまったせいで、こんなメンドーな気持ちになっちゃうなら、何かを知ることが少しだけこわくなってしまいます。
2017年12月19日
わたしは最低だ。最低の人間だ。大好きな大好きなお姉ちゃんにとてもひどいことを言ってしまった。お姉ちゃんがいないときに勝手にお姉ちゃんの本棚からマンガを借りてるのを見つかって、借りるときはきちんと言ってと注意されたのに少しだけむっとして、とっさに言い返してしまった。それがきっかけで、口げんかになって、でも、わたしなんかじゃ当然お姉ちゃんに勝てるわけがなくて、どんどん何も言い返せなくなっていって、だからわたしは苦しまぎれに「養子のくせに!」と言ってしまった。
この言葉がどんな意味をなのかなんてよく知らなかったし、たまにお母さんとお父さんがお姉ちゃんに言ってた言葉をそのまま使っただけだった。でも、わたしがその言葉を言うと、お姉ちゃんは人形みたいに固まってしまった。わたしはしまったと思ったけれど、ごめんねっていう言葉が出てこなくて、ただただお姉ちゃんの今にも泣きそうな表情を見つめることしかできなかった。それからお姉ちゃんは「ごめんね」とだけ言ってそのまま部屋を出ていってしまった。わたしはお姉ちゃんを追いかけて、ごめんねって言うべきだったのに、わたしは何もできなかった。
今もこうして日記を書いている今も泣いちゃいそうになる。お姉ちゃんのことは大好きなのに、ただただ一言貸してって言ってたら良かった話だったのに、なんでこんな風にこじれて、お姉ちゃんにあんな言葉を言っちゃったんだろう。明日、謝ったら許してくれるかな? もうお姉ちゃんはわたしのことがきらいになっちゃったかな? もしそうなら、もうお姉ちゃんと一緒におしゃべりしたり、昔みたいに仲良く遊んだりできないのかな? そんなのいやだよ。ごめんね、お姉ちゃん。
2019年3月9日
今日、数年ぶりくらいにお姉ちゃんときちんとおしゃべりをすることができた。
お父さんとお母さんは友達の結婚式で家を空けていて、私とお姉ちゃんもたまたま外に出かける用事がなくて、リビングには私とお姉ちゃんの二人だけしかいなかった。リビングで同じソファに座って、お姉ちゃんがそろそろ卒業だねって言ってくれて、私はそうだねって答えた。本当は久しぶりに二人っきりになれたのがうれしかったのに、だけどそれと同じくらい胸が苦しかった。それでも私は気持ちを落ち着かせて、ぎゅっと手をにぎって、「あの時、ひどいことを言ってごめんね」ってお姉ちゃんに謝った。
お姉ちゃんが「何のこと?」って聞き返してきたから、一年前の口論で、思わず「養子のくせに」って言ってしまったことだって答えた。お姉ちゃんは気にしなくていいよって笑ってくれた。お姉ちゃんを傷つけることを言ってしまったのに、ずっと謝ることができなかったのに、お姉ちゃんがそう言って許してくれたから、私はうれしい気持ちとごめんねって気持ちでわけがわかんなくなって、思わず泣いてしまった。去年の私はまだ養子という言葉の意味をよく知らなくて、ただ単にお姉ちゃんが私とお父さん、お母さんと血がつながっていないということをぼんやりと知っているくらいで、そのことにどんな意味があるのかなんて私は考えようもしなかった。私が泣きながらごめんね、ごめんねって何回も言うと、大丈夫だよとお姉ちゃんはポンポンと私の頭を優しくなでてくれた。
もし私が小学一年生の時のまま、何も知らなくて、何も気が付かなくて、全然漢字が書けないような幼い子どものままだったら、昔みたいに何のわだかまりもなく、お姉ちゃんとずっと仲良くできたのかもしれない。私がずっと考えていたことを伝えると、お姉ちゃんはこう答えてくれた。
「確かに何も知らないままだったらずっと仲良くいられたかもしれないけど、こうして向かい合って座って、おたがいの目を見て、どういうことを考えたり、感じたりしているかを伝え合うことはできなかったと思うよ」
仲良くいることよりもそれは大事なことなの?と私が聞くと、「これから色んなことを知って、色んなことを考えて、ゆっくり考えればいいと思うよ」と、お姉ちゃんはほほえみながら言ってくれた。
それから私はお姉ちゃんと色んなお話をした。私がお姉ちゃんにもらった漢字ドリルをずっと続けていたことを言うと、お姉ちゃんは「すごいね」って言ってほめてくれた。ちなみにこの漢字ドリルには小学校で勉強する1000文字ちょっとの漢字がのっている。でも、中学生ではさらに1000文字の新しい漢字を教わって、だけどさらに漢和辞典には五万字も漢字がのっているらしい。そう考えると、私は書けるのはまだこの世にある2%ちょっとの漢字だけ。だから、まだまだ私は漢字が書けないということになる。
もちろん漢字だけじゃない。私が知らないことはまだまだたくさんあって、その中には、知らなきゃよかったと思っちゃうようなこともあるかもしれない。知らなくても良いことを知ることは確かにこわい。だけどお姉ちゃんは、それでも何かを知るということは素敵なことだよと言っていた。お姉ちゃんの言うことは私にはまだまだ難しいし、それが本当に正しいのかな?とも思ってる。
だから、またお姉ちゃんとたくさんお話をして、自分の考えていることを伝えて、お姉ちゃんの考えていることを聞いて、それから自分なりの答えを見つけていきたいと思う。いつになく長くなっちゃった。考えることはたくさんあるけど、また明日、それがだめなら明後日考えよう。今日はここまで。お終い。
参考資料 : 学年別漢字配当表
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/new-cs/youryou/syo/koku/001.htm