その一
曰く付きの物を、あの優しい伯父が贈るということはどういうことなんだ?
大好きな恩人の思いのこもった物だから、売らずにおこうと思うのだけど。
到着当日の夜、鏡からオルガンの音が聴こえる。
少し怖い。
到着二日目の夜、やっぱりオルガンの音が聴こえる。
少し怖い。
という夜を一週間送ったので、少し怖いが、今夜オルガンの音が聴こえたとき、鏡を覗いてみよう。
あと鏡の怒りを買って呪われないように、とりあえず綺麗にしよう。
まあ拭き掃除しなくても、その鏡台は綺麗だった。
オークでできた西洋風のアンティークドレッサーは、小ぶりながらも見事な作りだ。
鏡の周りにはゴシック調の浮き彫りが施され、両脇の幼い天使の手に本物か分からないが宝石が埋め込まれている。
脚の部分も挽物細工というか、何やら凝った作りになっている。
なんでこんなの持ってた?伯父よ。
あなた独身だったよね。
伯父は、その昔イギリス人の恋人がいたが、イギリス帰国中事故に遭い召天されたらしい。
彼女の遺品なのかな?
彼女さんの霊なのかな?
あの白髪の、眼鏡をかけのほほんとした、少し冴えない伯父の彼女さんは大美人だったらしいので楽しみだ。怖さが少し薄れたぞッ。。。そう思うことにしよう!