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第二巻発売中! ダンジョンマスター班目 ~普通にやっても無理そうだからカジノ作ることにした~  作者: 有山リョウ


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第七十六話

拙作、ロメリア戦記の書籍化が決定しました。

小学館様のガガガブックスより発売予定です。

発売した時にはよろしくお願いします。

https://gagagabunko.jp/

 第七十六話


 四英雄との会談を終えた俺は、支配人スケルトンの憑依を解除した。

 感覚は一瞬で切り替わり、視界はダンジョンの最奥である、ラストフロアに戻る。

 だがそこはいつもの憑依ルームではなく、広大な玉座の間だった。

 玉座は広い部屋を見下ろせるように長い階段の上に作られており、見晴らしだけは良かった。

 今日は憑依ルームではなく、普段座ることのない玉座に腰を下ろし、スケルトンを操ったことを思いだす。


 俺が右を見ると、玉座の右には二体のスケルトンが侍っている。一体のスケルトンの手には毛玉のような姿のケラマが鎮座し、もう一体は長い木箱を抱えていた。

 左を見ると、体の黒い騎士が膝をついていた。

 玉座の前には長い階段が続き、床まで伸びている。階段の下では角を持つ獅子が首を垂れていた。


「マダラメマスターお戻りになられましたか」

 スケルトンの手に乗るケラマが俺を見て頭を下げる。

「うん、四英雄にミーオンを押し付けてきたよ」

「そう、ですか」

 ケラマは俺に異を唱えない。しかしやはり納得がいっていないようだった。


 気持ちはわかる。何せ神剣ミーオンである。持つだけで勇者になれる便利グッズ。敵に渡せば大きな力を与える結果となってしまう。

 サイトウが振るう分にはただの棒っ切れでしかないが、四英雄が操れば骨が折れる。

 救済教の教義や神剣戦争を持ち出し、彼らを信条で縛ったが、場合によっては彼らが使うということもあり得る。

 しかしそれであっても、俺たちがミーオンを持ち続けるよりはましだろう。


「何度も言ったが、俺たちがミーオンを保持するのは危険だったよ。あれは四英雄に預けるしかない」

 俺は未練を引きずるケラマに諭す。

「我がダンジョンは、冒険者が求めるものを、地下ではなくカジノフロアに置くことで延命を図ってきた」

 ケラマを説得するために、俺は改めてカジノダンジョンの在り方を説明した。


「連中が欲しがる富を、ダンジョンの奥にではなく最初のフロアに置くことで、攻略させないようにしてきたんだ。だがミーオンが我がダンジョンにあるとなれば、多くの冒険者たちを刺激することになる」

 俺は言葉を切り、あのまま神剣を持ち続けた未来を想像する。

 伝説の神剣ミーオンを求めて、世界中から腕の立つ冒険者や国家の手先がこぞってやって来たことだろう。

 ただでさえ四英雄を相手にするのに忙しいというのに、他の冒険者や国家までは相手にしていられなかった。


「それに、我がダンジョンは人を殺さない方向で来ている。神剣ミーオンを求めて冒険者がカジノより下に来ることになれば、殺さなければいけない時もやってくるだろう。それだけは避けたい」

 俺としても、ミーオンを渡すのは苦渋の決断だった。

 そもそも、カジノとダンジョンをつなぐ扉を開けたくなかった。だが四英雄が来てからというもの、その前提がなし崩しとなってしまった。


「正直、人を殺さずにやっていく現在の体制を、これからも維持できるかわからない。だが限界までこの仮面はかぶり続ける必要がある」

 以前もケラマに話したが、この仮面を捨てるときは、ダンジョンにやってくる客や上にできた町の住人を全員殺す覚悟がいるだろう。

 しかしそれはやりたくはない。人道的な面からもそうだが、大きな危険をはらむからだ。


「一人殺せば、全員を殺すことになる。客や町の住人を殺せば、大量のマナが手に入るだろう。だが虐殺をすればただでは済まない。世界各国から注目を浴び、問題視されてしまう」

 俺は、虐殺をした場合の危険性を指摘する。

「おそらく国家が排除に乗り出す。数万の兵士を率い、物量作戦で攻略にかかるだろう。数の前に初見殺しの罠は無意味だから、互いの戦力を潰しあう総力戦となってしまう」

 物量作戦に疲弊し、ダンジョンを丸裸にされたところに四英雄を投入されたら、いくらなんでも詰む。抗う術はない。


「国家の物量作戦を跳ね返すには、数ではなく圧倒的な個の力が必要だ」

 戦争は数だと偉い人は言ったが、ダンジョンにおいては違う。戦場を限定でき、数の利を相殺できるここでは、強力な手駒の存在が数を圧殺する。

「アルファスとオーメルガの究極強化が完了するまで、我慢するしかない」

 俺は傍らに立つアルファスと、階段の下で首を垂れるオーメルガを見た。


 現在、アルファスとオーメルガの体内保有マナは二千万ほどだ。

 モンスターの限界保有マナは定かではない。だが一億マナが上限ではないかと言われている。モンスターの強さの上限がどれぐらいかは不明だが、一億のマナを積み上げ、究極強化を完成させれば敵はないだろう。


「はい、わかっております」

 ケラマも深々と頭を下げる。

「それに、今回のことは、悪い事ばかりでもなかった」

 俺はケラマの後ろに立つ、木箱を持ったスケルトンを見る。

 視線に気づいたケラマが、背後のスケルトンに命じて、木箱を開けさせる。

 そこには一振りの剣が収められていた。


 俺は椅子から立ち上がり、剣に手を伸ばし、鞘を抜いて剣を確かめる。

 刀身も拵えも黒く染められていたが、その形状は四英雄に預けた神剣ミーオンと酷似していた。


「素晴らしい、本物と違わぬ手触りだ」

 俺は黒いミーオンの手触りを楽しむ。

 四英雄に渡したミーオンはもちろん本物だが、このミーオンも色以外は本物と寸分たがわぬ品物だった。


「はい、複製機を用いて造りましたので、本物と違いはありません」

 傍らのケラマが答えてくれる。

 本物と見分けがつくように、色を黒くしてもらったが、それ以外は完全な本物だ。


「それでも高くついたがな」

 俺はこれを複製するために、消費したマナを思い出した。

 複製機は、現物があればどんなものでもコピーできる便利な装置だ。

 ダンジョンコアで作るより、一割ほど安く作れるため重宝している。だがそれでもミーオンの複製は九千万も費用が掛かった。


「アルファス」

 俺は黒きミーオンを鞘に納めた後、傍で膝をつく黒騎士アルファスに差し出す。

 アルファスが剣を受け取り、鞘から刃を抜いて構える。すると凄まじい力がミーオンに集まっているのが分かった。

 広大な玉座の間が震え、力が満たされているのが分かる。頭を伏せていたオーメルガが力の奔流に唸り声をあげて応える。


 この玉座の間は最終決戦用にと、飛び切り頑丈に設計してある。だがそれでもアルファスが操るミーオンの破壊に、耐えられるかどうかわからなかった。


「ははっ、これはすごいな」

 アルファスの力を、ミーオンが限りなく増大させている。

これがあれば、たとえ四英雄がミーオンを使ったとしても、互角の勝負ができるだろう。

 俺はアルファスの力にうなずく。少なくとも武装面では負けてはいない。


「ですがマダラメマスター。この費用を捻出するため、ソサエティの権益の一部を手放すこととなりました」

 ケラマが問題を忘れぬようにと、釘を刺す。

「わかってるよ」

 サイトウの出現は、俺たちにとってはいいタイミングではなかった。

 アルファスとオーメルガの強化のため、マナを使い込んでいたし、防衛のためにモンスター軍団を移動させたのにも費用が掛かった。

 ミーオンをコピーするためのマナが足りず、ソサエティの権益を一部手放して工面した。


「権益を買い取ったのはやっぱりシルヴァーナか?」

「はい、すぐに買い取りました」

 ケラマの答えに、俺は顔をしかめる。


 ミーオンコピーを手に入れることが出来たが、本物のミーオンは四英雄に預けることとなった。そして八大ダンジョン最後の一角である、シルヴァーナにも息を吹き返すチャンスを与えてしまった。

 しかしもう済んだことだ。それに総合的にはこちらが得をしている。


「まぁいい。今は目の前のイベントだ。サイトウとはギャンブルで決着をつけよう」

 俺は玉座に座り直し、椅子に片肘をついた。


いつも感想や誤字脱字の指摘、ブックマークや評価などありがとうございます。


ロメリア戦記の書籍化が決定いたしました。

これからも頑張りますのでよろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ちなみにダークパワーっぽいのはナイトが持つと光と闇が両方そなわり最強に見える 暗黒が持つと逆に頭がおかしくなって死ぬ
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