第四十七話
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第四十七話
四英雄が帰還した後、新たな遊戯がカジノに追加された。
スケルトンを打ち倒すというこの遊びは、冒険者はもとより普通の村人などにも受け入れられた。順番待ちの列は長蛇となり、久々の大盛況となった。
さらにカジノでは、スケルトンの他にぬいぐるみ型のモンスターがうろつくようになり、女性や子供の人気となった。
子供たちが同じ人形を欲しがり、その需要にこたえる形で、景品にもすぐに加えられた。商人たちが同じような偽物を作って売り出すなどということも起きた。
また、ロードロックでは遊戯で使われる銃という武器は注目され、商人や鍛冶職人たちはこれを量産できないかと考えている。しかし魔法を込めて飛ばすという部分が技術的にむずかしく、難航しているらしい。
ただ構造自体は単純なもので、魔法を飛ばすことは難しくても、中に火薬を詰め打ち出せばいいのではと誰かが考え、試行錯誤していると聞く。
そして俺はといえば、みんなが新しい遊びに熱中しているのをよそに、カジノダンジョンを一人攻略していた。
四英雄と攻略をしたとき、俺は解説スケルトンに攻略を続けさせてくれと頼み込んだのだ。
解説スケルトンは俺の頼みを聞いてくれ、一日に一回だけ、四英雄と同じ条件で扉を開けてくれることを約束してくれた。
もちろん俺がダンジョンに潜っていることは多くの人に知られ、翌日にはロードロックにいるギルド長に呼び出された。
仕方なくメリンダも連れて、久々にロードロックに戻った。ここが自分の本拠地だったはずなのに、戻るのはもうずいぶんと久しぶりだ。
「どういうつもりだ?」
面会するなり、開口一番に尋ねられた。
なので、あらかじめ考えていた言い訳をギルド長にした。
「俺も冒険者の端くれですから、ダンジョンに挑戦しようかなと」
「ふざけるな! 貴様だって、このダンジョンの攻略に反対していただろうが! あのダンジョンを攻略してみろ。貴様、間違いなく命はないぞ」
これは脅しではないだろう。あのダンジョンは多くの人の生活と結びついている。もしつぶしてしまえば、多くの人の恨みを買い、私刑にあうことは間違いない。
「わかっていますよ、もちろん俺も攻略するつもりなんてありません。というか俺一人で攻略できるわけがないでしょう? そんなに腕もよくないですし」
「そうだな、ひいき目に見ても中の下ってところだ」
叔父さんはひどい、まぁ、実際そうだけど。
「このダンジョンは危険なモンスターは出ませんが、いないわけじゃない。というか、必ずいるはずです。ダンジョンの奥深く、最下層には」
「そりゃぁ……そうだ」
ここのダンジョンマスターはかなりの変わり種だが、自分が狙われていることぐらいわかっているはずだ。ダンジョンコアがあるとされる最下層には、最強の護衛を隠し持っているはずなのだ。
「もし俺が攻略する直前まで行けば、きっとそいつらを差し向けてきて、俺は八つ裂きにされますよ」
当然そこまで行くつもりはないし、いけない。
「だったらなぜ行く」
「それがダンジョンマスターの望みでもあるからです」
「? 矛盾しているな。なぜダンジョンマスターがダンジョンの攻略を望む」
「四英雄が来た理由ですよ。ここは名の知れたダンジョンです。そして奥には開かずの扉。扉の向こう側に何があるのか? このダンジョンの奥底には、世界中の富を集めたような宝が眠っているのでは? そう考えるやつが出てきたとしても、不思議じゃありません」
俺の言葉に、叔父さんがうなずく。実際、少し前に強盗未遂も起きたばかりだ。馬鹿が警備隊の詰め所を襲撃して、シンボルを強奪するなんてことが起きるかもしれない。
「ダンジョンマスターとしても、扉の奥の情報を広めたいのですよ。秘密は何よりも人をひきつけますからね、攻略する価値のないダンジョンだと、思わせたいんです」
「マスターの意向はわかるが、なぜおまえがやってやらねばならん」
当然の質問だろう。
「一つは俺たちの為ですね。このダンジョンが重要なのはわかります。俺も好きです。でも油断するべきじゃないですよね。こっちが油断したところをバクッと来るかもしれません」
広げた手で襲う仕草をして握り締める。
「そりゃぁ、そうだな」
ギルド長は冒険者ではあるが、ロードロックの民でもある。商人の気風が強いロードロックでは、今日仲良くしていても、明日には裏切るかもしれない。
格安で商売敵をつぶした後、独占した市場で一気に値上げするなどよくある手だ。
利用はしても油断はしないのが、裏切られないコツだ。
「四英雄も、このダンジョンは注目しています」
謎解きは全くできない様子だが、人を雇えばいいだけのこと、あえてそうしなかったとみるべきだろう。
「ダンジョンに詳しい人間がいれば、その時有利になれるかもしれませんよ?」
俺がいくつか理由を並べると、叔父さんは鼻息一つ吹いて白い目で見た。
「もっともらしい理由を並べたてやがる。本当のところはどうなんだ? ええ?」
どうやら俺の言い訳は見抜かれていたらしい。
「知りたいんですよ、この奥に何があるのか。誰よりも先に。いけませんか?」
俺の言葉に、おじさんは苦虫をかみつぶした。
「まったく、冒険者ってやつは、ろくでもねぇ人間の集まりだな」
「その長である叔父さんも大変ですね」
言い返しておくと、ギルド長はさらに苦い顔をした。
「だがお前、仕事はどうするつもりだ?」
叔父さんは痛い所をついてきた。それは少し悩んでいる。
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