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第二百三話

 第二百三話


 大鬼の一団を殲滅したサイトウは、火傷と毒の治療をしながら部屋の内部を見回した。

 四角い部屋には物は何も置かれておらず、六体の大鬼の屍があるだけだった。壁には二つの扉がある。一つはサイトウが入ってきた扉だ。そしてその反対側にもう一つ扉があった。


 扉は鋼鉄製で、固く閉ざされている。しかししばらくすると解錠音が鳴り、閉じていた扉がわずかに開いた。


 サイトウはすぐには扉に向かわず、大鬼たちの死骸から衣服や装備を剥ぎ取る。

 使えそうな物はあまりなかったが、売ることぐらいはできるかもしれない。

 大鬼の死骸を裸に剥いた後、サイトウは鋼鉄の扉を潜った。


 扉の先は小部屋だった。向かいの壁には扉があり、部屋の隅には寝台と机、それに椅子が一つ。机にはパンや干し肉、果物が盛られた皿と大きな水差しが置かれている。


 もう何度目かの光景であった。


 ラケージたちと別行動をとったサイトウは、一本道の通路を進んだ。

 道の先には大きな部屋があり、部屋には決まってモンスターが居た。次に進むには部屋のモンスターを倒さねばならず、モンスターを倒した先には必ず体を休めるための部屋が用意されていた。


 ここのダンジョンマスターがサイトウに何をさせたいのか、それはおぼろげながら理解できていた。そしてそれゆえに飽きが来ていた。さっさと終わりにしてほしい。

 サイトウはため息をついて寝台に横になった。



 寝台の上で目覚めたサイトウは、起き上がりあくびをかいた。そして机にあるパンや干し肉を貪り、水を飲み果物を平らげる。


 食事を終えた後は、入念に武具の整備をした。手入れが終わると装備を身につける。鎧の留め金がしっかりかかっていることを確認したのち、入ってきたのとは別の扉を抜けた。


 扉の先は長い回廊となっている。きっとこの先にはまた部屋があり、モンスターが居て戦うことになるのだろう。

 面倒だが仕方がないと、サイトウは気合を入れ直して前へと進む。


 しばらく回廊を進むと、予想通り扉があった。サイトウは気配を殺し、慎重に扉に近づく。

 扉の周囲に罠はない。扉のすぐ向こうに、誰かが潜んでいる気配もなかった。扉には鍵がかかっており、向こう側から開けることはできない。開けるタイミングはこちら次第だ。


 サイトウは剣を抜くと、扉の前に立ち鍵を開けた。そして勢いよく扉を蹴って開けると、飛び込むように部屋に突入した。

 部屋にモンスターが待ち構えていた場合、突入の瞬間は生死を分ける場面と言えた。扉から入った瞬間は、他に逃げ場がないからだ。ここに爆裂魔法を叩き込まれると、一撃死の可能性がある。


 部屋に飛び込み通路から脱したサイトウは、部屋の内部を素早く確かめる。室内は広く、戦うには十分なスペースがあった。

 これはいつものことだが、意外なことが一つ。部屋にモンスターの姿がなかった。


 敵の姿は見えない。しかしサイトウは油断しなかった。透明化が可能なモンスターは多いし、見えないほど小さなモンスターや擬態が得意なモンスターもいるからだ。


 サイトウは魔力の波を放ち、索敵用のレーダーとして使用する。だが敵の姿は確認できなかった。


 サイトウは警戒を解かず、再度部屋を確認する。おかしな点が一つあった。

 サイトウが入ってきた扉の正面の壁には、サイトウが入ってきたのと同じような扉が一つある。だが右手側にも、一枚の扉があった。こちらはサイトウが入ってきた扉よりも、若干大きい。


 サイトウはしばし思考した後、まずは正面にある扉に歩み寄った。

 扉の周囲に罠はなく、扉に手をかけても開かなかった。

 次に三つ目の扉に歩み寄る。


 この扉は他の二つの扉よりも若干大きい。扉の大きさに意味があるのかどうかわからない。だが意味があるとするならば、こちらの扉の方が重要ということだろう。


 さて、何をしろという意味か。


 サイトウが扉の前で考え込んでいると、背後で鍵を開ける解錠音がした。サイトウは即座に振り返り剣を向ける。

 音がしたのは、サイトウが入ってきた扉の正面にあったもう一つの扉だ。

 サイトウは油断なく構え、じっと扉を見つめる。しばらくするとゆっくりと扉が開き一人の男が入ってきた。


「お前は……」

 サイトウは目を見張った。

 扉を開けてやってきた男。それは背が曲がり子供のような矮躯をしており、腰には短剣を帯びていた。

 少し前に別行動をすることとなったカスツールであった。




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― 新着の感想 ―
[良い点] ???「そこで今日は皆さんにちょっと殺し合いをしてもらいます」
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