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第二巻発売中! ダンジョンマスター班目 ~普通にやっても無理そうだからカジノ作ることにした~  作者: 有山リョウ


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第百九十四話

 第百九十四話


 メグワイヤから、マダラメが賭場の権利を人間たちに譲った話を聞いたシルヴァーナは、マダラメの行動が信じられなかった。

 あまりにも愚かとしか言いようがないからだ。

 だがメグワイヤ曰く、マダラメの狙いはさらに深いらしい。


「以前から、マダラメの動きに妙なところがあると思っていたんだ。奴が転移陣を用いて、行き詰まっているダンジョンの救済に乗り出しているのは知っているな?」

「ああ、私も一応噛んでいるからな」

 シルヴァーナは顎を引く。ダンジョンの経営に失敗して崩壊間近のダンジョンを、マダラメは転移陣を用いて救済しようとしていた。

 まだ試験期間中だが、いくつか経営の立て直しに成功している。これが軌道に乗れば、シルヴァーナも傘下のダンジョンマスターを救済する運びになっている。


「奴が救済に声をかけているダンジョンにだが、いくつか偏りがあることに気づいてな」

 メグワイヤが部屋に置かれた資料の数々に目を向ける。どうやらこの部屋にある書類の山は、マダラメの行動から奴が目指しているものを推測しようとした結果らしい。


「この地図を見てくれ」

 メグワイヤは立ち上がり、壁に貼られた地図に歩み寄った。五大強国の版図が全て収まる大きな地図だった。

 地図にはマダラメのダンジョンがある場所に、大きくバツ印が書き込まれていた。さらに地図全体に赤い点が五十ほどあり、そして青い点が二十ほど地図の上に散っている。


「この赤い点と青い点はマダラメが救済を打診しているダンジョンだ。奴は七十三のダンジョンに救済の打診を行なっている。ほとんどが奴の傘下のダンジョンだ。だが中には、傘下でない者を勧誘していたりもする」

「奴の切り崩し政策だな。自分の勢力を強めようとしているだけではないのか?」

 マダラメの救済案は、あからさまな人気稼ぎだ。庇護下に入れば自主性は失われるものの、安寧を買えるとあって靡く者も多い。


「ああ、大半はそうだ。だが中にはいくつかおかしなところがある。それが青い点のダンジョンだ」

 メグワイヤが地図上に点在する青い点に目を向ける。


「マダラメが救済しようとしているダンジョンを調べれば、一定の傾向が見られた。やつは一定の基準を下回ったダンジョンに手を差し伸べている」

 メグワイヤの話に、シルヴァーナは頷く。

 マダラメでなくとも、同じ様な方法を取るだろうとシルヴァーナも思うからだ。


「だが青い点は、その基準に満たないダンジョンだ。この連中はダンジョンの経営に苦労しているが、再建可能な位置にある。これが証拠だ」

 メグワイヤが机に置かれた書類の束を見せる。シルヴァーナは一枚目に目を走らせた。


 書類にダンジョンの経営状況が書かれていた。かなり経営が悪いことが見てとれる、しかしよくよく見てみると、確かに挽回可能でもあった。


「絶対におかしい、マダラメはこいつらを使って何かしようとしている」

 メグワイヤが断言する。その答えを否定するつもりはない。だが……。

「よく気づいたな」

 シルヴァーナとしては、ただただ驚くばかりだった。


 マダラメも馬鹿ではない。気づかれないようにするため、救済しても怪しまれない様なダンジョンを選んでいるはずだ。だがメグワイヤはわずかな違和感を感じ取り、七十三もあるダンジョンの全てを調べ上げたのだ。


「まぁな。以前我が配下のダンジョンだったのが二つあってな。一つなら気づかなかっただろう。運が良かった」

 メグワイヤが首を振って唸る。だがそれは謙遜というものだろう。少なくともシルヴァーナであれば、その程度の違和感は見過ごしている。メグワイヤはかつてないほど冴えわたっている。


「しかしマダラメめ、一体何を企んでいるんだ」

 シルヴァーは顎に手を当て地図を練らんだ。奴が何かをしているのはわかるが、何を企んでいるかまではわからない。


「それだが、昨夜地図を見ていて気づいた」

 喋りすぎて喉が渇いていたのか、濃い茶を飲んでいたメグワイヤが口を拭いながら地図を指差す。


「本当か?」

「ああ、青い点がある場所をよく見てみろ。何か気づかないか?」

 メグワイヤが地図を顎で指すが、シルヴァーナが何度見てもわからない。

 意地悪をするなとシルヴァーナが視線を送ると、メグワイヤが薄ら笑いを浮かべる。


「青い点がある国を見てみろ」

 メグワイヤがヒントを出してくれたので、シルヴァーナは再度地図に目を向けた。


 地図に記された青い点がある国といえば、エスパーラ国に三つにオルレア公国に四つ、ステイヴァーレ国に四つにフィンドル連邦が三つ。そしてデーン帝国が四つだ。


「これは……!」

 シルヴァーナは青い点の意味に気づいた。全てマダラメと会談した列強国家だ。そしてシルヴァーナはマダラメの狙いに気づいた。


 マダラメが推奨しているダンジョンの再建案の骨子は、転移陣を用いての人の流入にある。もし奴が各国にあるダンジョンと自分のダンジョンを繋げたとすれば!


「そうだ。それが奴の狙いだ。あいつは列強国家と自分のダンジョンを繋げようとしている」

 メグワイヤの言葉に、シルヴァーナは息を飲んだ。


 マダラメのダンジョンが躍進したのは、奴のダンジョンとシルヴァーナたちグランドエイトのダンジョンを繋げたためだ。

 たった八個のダンジョンと繋げただけで、マダラメはおどろくべき効果をあげた。そしてやつは今度、世界の強国とつながろうとしている。その効果は計り知れない。


「この後の予想だが、おそらくマダラメはこの線をさらに伸ばしていくだろう」

 メグワイヤは地図に歩み寄り、ペンを手に取りマダラメのダンジョンを中心にダンジョンとダンジョンを繋げていく。線は次々に伸びていき、マダラメのダンジョンを中心に蜘蛛の巣のように線が伸びる。だが通常の蜘蛛の巣とは違い、縦の線はあれど、横に伸びる線はない。


「おそらくマダラメは自分のダンジョンが中心に来るようにし、転移陣の交通網を構築するはずだ。これは各国にとっても都合がいい。他国と通じる転移陣がいくつもあれば、防衛に支障をきたすからな。一方でこれはマダラメにとっても都合がいい。他国に移動する際には、必ず自分のダンジョンを通過せねばならないからだ」

 メグワイヤの説明を聞き、シルヴァーナは絶句した。この予想が実現すれば、マダラメのダンジョンには世界中の人間が集まるようになるからだ。


「なんとしても阻止したいが、俺たちにはこれを止める手段がない」

「そうか、ダンジョンルールか!」

 シルヴァーナは唸った。

 ダンジョンマスターには、覆すことのできないダンジョンルールという法によって縛られている。そしてこのルールの一つに、転移陣をつなげる際には、グランドエイトの許可が必要であるという項目が存在するのだ。


 マダラメはグランドエイトの頂点に君臨している。シルヴァーナもグランドエイトの一人だが、マダラメの勢力が多数派であり、多数決となれば数で押し切られる。


 シルヴァーナは歯を噛み締めた。

 なぜなら転移陣に関するダンジョンルールを追加したのは、他でもないシルヴァーナ自身だったからだ。かつては自分の地位を盤石にするために設けたルールが、今や敵を守るための障害となっている。


「俺の試算だが、この図が完成すれば、奴の一日の純獲得ポイントは、一千万を超える」

「いっ、せん、まん。だと……」

 シルヴァーナは声を絞り出した。そんな数字聞いたことがなかった。


「一日一千万。十日で一億。百日で十億」

 メグワイヤが単純な計算を呟く。

 あり得ない、あり得ない。


「千日で百億。上がりだ」

 メグワイヤの宣告に、シルヴァーナは顔を顰めた。

 ダンジョンマスターの目標は百億ポイントを貯めることにある。だがこれを真剣に考えているものはいない。かつてグランドエイトの頂点にいたシルヴァーナでさえ、百億など夢のまた夢であるからだ。しかしやつは三年かからずに達成するという。


「……マダラメがダンジョンマスターとなって、そろそろ二年だったか?」

「ああ、そうなるな」

 メグワイヤが呟く。

 思い返せば一年前だ。シルヴァーナたちは新人マスターとなって現れたマダラメを呼びつけた。当初は簡単に捻り潰せると思っていた。しかし蓋を開けてみれば、半年と経たずに立場を逆転された。それだけではない。シルヴァーナたちが何年かかっても達成不可能と考えていたことを、やつは五年で成し遂げようとしているのだ。


「このままでは……」

「わかっている。奴を独走させるわけにはいかん」

 メグワイヤがメガネの下、目を光らせて頷く。


「地下の状態はどうなっている?」

「今五人に減ったところだ」

 メグワイヤがメガネの奥で目を細めた。


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― 新着の感想 ―
[良い点] いつもワクワクしながら読んでます [一言] これからの展開が楽しみです。
[良い点] あれからサイトウはどんだけ進化を繰り返したのか!?
[一言] うーん、作者が無駄に話盛り過ぎてグダグダしてるね。
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