表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

13/236

第十三話 カジノダンジョンへの対処、カイトの提案

お昼の分です

 第十三話


「しゃべる上に人間を襲わないスケルトンだと? しかも宿屋までできただ? ふざけているのか!」

 調査を終えて後発の調査隊と合流した俺たちは、ロードロックに戻りギルド長にありのままを報告した。

 返ってきたのが、ギルド全体を震わせるほどの声だった。


「ふざけていませんよ、ギラン叔父さん」

 俺がなだめようとすると一睨みされた。

「ああ、すみませんギルド長」

 叔父さんは公私の区別をはっきりさせる人なので、ギルドで叔父と呼ぶと怒る。


「まったく、ただでさえ、若い連中がダンジョンに入り浸り、運営に支障が出ているというのに」

 俺も人の事は言えないが、あそこで遊びふけっている冒険者がいることは確かだ。

「それ以上に問題なのが、あそこの景品で出てくる髪油だ。街で噂になっている。この間の競りでは金貨二十枚の値が付いた」

「そりゃすごい、俺も売ればよかった」

 正直ちょっと後悔している。


「でもいくら品質が良くても、そこまでの価値はないでしょう?」

 公平に見れば金貨二枚から三枚ほどの値段だろう。

 十分大金だが、価値以上の値段がついている。


「商人たちの争奪戦が起きている。このままだと暴走するやつが出てくるかもしれん」

「街でもあのダンジョンの風呂が噂になっていますからね、そのうち街の住人がダンジョンに来るかもしれませんよ」

「モンスターが人を襲ってくれれば止められるんだが、危険がない分それもできん」

 ギルド長は忌々し気に歯を噛みしめる。

 危険がないとはいえ、ダンジョンはダンジョン。いつ人間に牙を剥くか分からない。とはいえ、ダンジョンに入るのを止める法律は無い。


「だが放置はできん。問題が起きればやり玉に挙げられるのは儂らだ」

 ダンジョンで起きたことは基本自己責任だ。だがギルド長の言うとおり、何かあれば問題の矛先はこちらに向けられるだろう。

 ただでさえ問題が起きそうな気配があるというのに、ここに来て宿泊施設までが出現したわけだ。このままだとダンジョンに一泊して、周辺を旅行しようなんて物好きが出てくるかも知れない。


「しかしダンジョンはダンジョンだ。攻撃してこないとはいえ、モンスターも出るようになった。このまま放っておく訳にはいかない」

 叔父の言葉に、俺は慌てた。

「まさか、あのダンジョンを攻略してしまうので?」

 つい非難めいた声が出てしまったが、俺の不用意な言葉がギルド長の怒りに触れた。

「それが出来れば苦労はせん!」

 ギルド長がテーブルを叩く。


「……昨日だが、領主のいとこのはとこの知り合いの、まぁ、とにかくどこかの貴族の御令嬢とやらが来て、例の髪油がほしいんだと」

「直々に言われたので?」

 ギルド長が苦虫をかみつぶした顔でうなずく。

 そりゃ凄い。どんな顔をしていたのか見たいぐらいだ。


「もはや潰そうにも潰せん」

 注目の的となっているダンジョンをつぶせば、ギルド長は人気を失いかねない。もちろん俺やメリンダも恨む。まぁ、恨むだけで何も出来ないけれど。

 とはいえ、これは他人事ではない。あそこで長く楽しむためにも、できることはしておかないといけない。


「そうだ、あそこにギルドの警備隊を置いてはどうですか?」

 思い付きを口にしてみる。

「警備隊?」

「はい、冒険者を募って常時武装した警備を置いて、モンスターが暴れないか見張っておくんですよ。そうなれば少しは安全でしょう?」

「その費用はどこから出す。お前らがタダでやってくれるのか?」

 ギルド長は馬鹿かお前はという目で見る。


「あーそれはいやです。ただ、例の髪油ですけれど、ギルドで独占してみたらどうです」

「独占?」

「はい、ずっと人をやっているのですから、順番待ちして独占することは出来ると思います。で、金額を上乗せして販売。差額分を運営費として報酬をまかなう」

 最初はただの思い付きだったが、話している間に何とかうまく行くような気がしてきた。


「商人達が文句を言ってこないか?」

「たぶん言ってくるでしょうけど、でもあそこ一応ダンジョンじゃないですか。で、ほら、確か王国法でもありますよね。ダンジョンで起きたことは罪に問わないって」

 ダンジョンで起きたことは全て自己責任とされ、法律の力は及ばない。人を殺しても罪に問われることはなく、裏社会の暗殺者がたまに利用していたりするし、強盗まがいの冒険者が同じ冒険者を襲ったりもする。


「もちろん殺したりするのはやりすぎですけど、追い出すぐらいならいいはずです。そもそもダンジョンは俺たちの管轄でしょう? 商人達が出しゃばる方がどうかしている」

 俺の話を聞き、叔父さんは唇を尖らせる。考え事をしているサインだ。


 ギルド長の頭の中では、数字と天秤が行ったり来たりしていることだろう。

 独占することに対する不満や、転売するときの上乗せする価格。貴族に対する根回しも必要となってくる。

 しばらく考えた後、ギルド長は頷いた。


感想やブックマーク、誤字脱字などありがとうございます


ロメリア戦記ともどもよろしくお願いします

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ