第一話 ダンジョンマスターマダラメ誕生
ということで、新連載始めました
ロメリア戦記ともども楽しんでいただけると幸いです
第一話
「え? 何ここ? 何処ここ? なんだこれ?」
気が付けば、俺は洞窟のような場所に横たわっていた。
訳が分からない。パニックになりかけている自分を感じて、俺は自分に言い聞かせた。
「落ち着け、落ち着け、班目隆。落ち着くんだ。どんな時も冷静に対処しろ」
自分で自分に話しかける。自分を客観視することで、パニックから遠ざかるメソッドだ。
「まずは覚えていることを思い出せ、最後に何があった?」
確かアパートにいて、腹が減ったから深夜に出かけたのは覚えている。
「家を出たあと確か……そうだ、急にすげぇまぶしい光が照らしたんだ」
おそらくトラックのハイビームか何かだろう。とすると、俺は車にひかれたのか?
すぐに体を調べたが、痛いところはどこもない。それにひき逃げしたからと言って、こんなところに放置するやつもいないだろう。
「もしかして借金取りか?」
実は俺はギャンブルにはまっている。中毒とすら言っていい。おかげで大学も中退してしまった。しかも中退したことが親にばれ、仕送りも止められた。だがそれでもギャンブルが止められず、借金が信じられないほど膨れ上がった。
俺が通い詰めていた賭場は、裏でヤクザが運営している違法カジノだった。
借金取りが業を煮やし、俺をさらったのかもしれない。
「ヤクザってここまでするのかよ、つーかなんだこれ? 石?」
目の前には、一メートルはある大きな球状の石があった。台座の上に鎮座し、淡く青い光を放っている。
こんな不思議な石は見たことがなかったが、おかげで周りが少し見える。
淡い光を頼りに周囲を見回し出口を探すが、出口らしきものがどこにもなかった。
「え? 出口が、ない?!」
周囲は半球状に削り取られた様な空間で、出入り口と思えるものはどこにも無かった。
見間違いではない。ここは光る球状の物体が置かれている以外、遮るものはほとんどなく、何より狭い。六畳もない狭さだ。弱い光でも十分に届き、出口がどこにもないことは一目瞭然だった。
「って言うか、この光る石は何だ?」
こんなもの見たことがなかった、とりあえず危険はないだろうと触れてみる。すると触れた瞬間、光りが強くなったかと思うと、球体の上に不思議な文字が並んだ。
見たことがない文字だったが、おかしなことに問題なく読めた。
「ようこそ、ダンジョンマスター様ぁ?」
なぜかはわからないが、そう読めた。
どうやら俺はダンジョンマスターになったみたいだった。