EP.5 - 47
深夜、会議室と銘打たれたクレイス邸の一室には夕食会に参加した面々が集められた。
例外として、コアン、エルミー、そしてマークェイ家の三女リンネは、まだ幼いからと寝室で就寝させることになった。
キースはジゼに目をやる。
青ざめていた顔には血の気が戻り、表情には余裕が見て取れた。
両腕に添え木をくくりつけられた姿は痛々しいが、悠々と椅子に座るその様を見る限り痛みはもう殆ど無いようだ。
先刻の苦悶の表情は何処へやらである。
それがコアンの不思議な力が齎したものである事は明白だった。
ジゼにその力を使った時の、どう見てもふざけているようにしか見えなかった儀式も、きっと何か意味があるのだろうと、キースは深く考えず納得する事にした。
コアンが人の身体を治癒したり、死んだ者を蘇らせたの。
実際に現場に居た者からすればそれらは疑いようの無い事実であり、疑念を抱く余地などないと理解したからだ。
キースもまた、コアンの力に救われた。
彼女の力が無ければユーシィ共々今頃死後の世界に居たであろう。
故に、疑うことなど許されない立場にキースはあるのだ。
コアンは人智を超えた存在だ。
一介の神父如きが彼女の何を知ることが出来ようか。
今、己がすべき事は他にある。
キースは、コアンの神秘的な力に圧倒されそうになっていた自分自身にそう言い聞かせ、気持ちを切り替えた。
夕食会に参加した者達を会議室に集めたのはキースだ。
その目的は当然、突如起こった襲撃事件の真相究明である。
襲撃者の生き残りからは、目的を聞き出す。
しかしそれだけでは解決には至らない。
何故ならば、襲撃を依頼した誰かが存在している可能性が高く、聞き出せたとしても標的と依頼主の情報が限界だろうからだ。
依頼主が"何故襲わせたいのか"まで丁寧に説明していればその限りではないが、先ずその線はない。
依頼主の目的を推測する為には、標的になったであろう者達の情報が必要になってくると考えたが故に、キースは此度の会議を催したのだ。
キースは先ず誰の話から聞こうかと暫く考え、まだ若いユーシィに徹夜をさせるのは好ましくないという結論に達し、彼女に自身の現状を話させることにした。
ユーシィが胸の内に少なくない想いを秘めていることを、キースは察していた。
今ここでそれを吐露させ、背負った重い荷を降ろさせてやれば、今宵はぐっすり眠れるであろう、などと思いつつ、キースはユーシィの名を呼んだ。
振り向いた彼女の顔は、若干やつれて見えた。
眠気のせいだろうか、それとも疲労がたまっているのだろうか。
早いところ解放してやりたいという思いはあるが、余計な事を言って激高されては困るので、キースは慎重に言葉を選びつつ彼女の胸の内を打ち明けるよう促した。




