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EP.5 - 37

 テラスからユーシィが去り、一人になったキースはヒリヒリと痛む左頬を撫でながら、自分の何がいけなかったのかと悩んでいた。


 ユーシィの気持ちを理解しているつもりであった彼は、胸の内を素直に打ち明けたうえで自ら結婚を申し出た。

 すると今まで笑顔で話していたユーシィの表情がみるみる怒りの形相に変わっていき、彼女の鋭い平手打ちがキースの頬を襲ったのだった。


 今まで散々アプローチをしてきた彼女が、望み通りの結果を得られた途端怒り出した事が、キースには全く解せなかった。


 ユーシィは神父の家に嫁ぐことで窮地に陥った己の家を救おうとしていて、自分に好意を抱いているわけではない事を知っていたが故に、不信感を抱きながら接してきたキース。

 しかし全てを円満に解決する為に自ら折れる事を決意した。


 キースは先ず、その事を素直に彼女に伝えた。

 すると彼女は一瞬引きつった表情をしたが、感謝の言葉を述べると直ぐに笑顔に戻った。


 ユーシィの表情の変化を、好意が無い事を指摘されて驚いた為だと判断したキースは、この機会に言っておいた方が良いだろうと思い、話を続けた。


 話の続きはエスティと、ユーシィの姉サーラの事である。


 キースは、好きでもない癖に神父の持つ権威を得る為に自分に言い寄ってくる巫女候補たち全てに不信感を抱いていた。

 ユーシィだけでなく、エスティやサーラも自分に好意を持っていない事は気付いていた。

 夫婦という仲に子供染みた幻想を抱き、好きでもない者同士が結ばれることに疑問を抱いて結論を後回しにしていた自分のせいで二人は命を落としてしまった。

 好きでもない、権威しか価値の無い男の為に死んだ彼女らには本当に悪い事をしたと思っている。

 もうこれ以上悲しい出来事は起こしたくない、コアンとはこれまで通り仲良くやって欲しいので、ユーシィと結婚する事に決めた。


 と、ここまで伝えたところでユーシィが豹変した。

 キースの頬を平手で打ち、大きな声で一言罵声を浴びせると、彼女はテラスを後にしたのだった。


 痛みの残る頬を撫でながら、自分が何をやらかしたのかを考えているキースのもとに、マークェイ夫妻が慌てて駆け寄ってきた。


 二人は申し訳無さそうに頭を何度も下げて、娘の行為を詫びた。


 マークェイ家の者達がここに居るのは、この夕食会が二人の結婚の前祝のようなものだからだ。

 キースがユーシィとの結婚の意志を固めたと家の者に伝えると、大急ぎでマークェイ家へと使いを向かわせ、夕食会に招待したのだ。


 お家再興の望みが出てきたところでの娘の暴走だ、気が気では無いだろう。

 どうせ保身の事で頭が一杯で、本当に悪いとは思っていないのだろうと、二人が謝罪する姿を面倒臭そうに眺めていたキースは、ふと思い至った。


 こういう考えが、ユーシィの自尊心を傷つけてしまったのではないだろうか、と。


 同じ事柄でも、自分で卑下するのと他人に揶揄されるのでは捉え方が違ってくる。

 ユーシィが神父の権威を求めて言い寄ってきたのは事実だろうが、それを自分が指摘してしまったのは間違いだったかもしれないとキースは考えた。


 謝りにいかなければならないなと、テラスから見える食堂の出入り口をキースが見ると、丁度モエナが小走りに食堂を出て行くのが見えた。

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