EP.5 - 23
(ぬあああああああああああああああクソがあああああああああああああああ!)
俺は怒りに打ち震えていた。
勿論、実際に身体も震えていた。
(緊急時にイチャイチャしてんじゃねーよお前らああああああああああああああああ!)
理由は言わずもがな、嫉妬である。
どんな風にイチャコラしていたのかを説明しよう。
お互いに大丈夫かと声を掛け合うキースとユーシィ。
そんな中、身を挺して己を護るキースを案ずるあまり、ユーシィは彼の腕を思わず掴んでしまう。
するとキースはユーシィの手にそっと己の手を添えると、優しく微笑んだ。
ユーシィは心配よりも気恥ずかしさが勝ったのか、慌ててキースの腕から手を離してしまう。
しかしそれでもキースを想う気持ちを抑えられなかったユーシィは、彼の背に身を寄せた。
そんな様子を、ユーシィに胸元辺りで抱えられていた俺は、間近で見せ付けられていたのだった。
(はぁ~……もう、お前ら付き合っちゃえよ……)
危機的状況を共にした男女は緊張感からくるドキドキを恋愛感情と誤認してしまうという学説がある。
今まさにキースとユーシィはその状況下にあり、実際良い雰囲気になってしまった。
(これはもうカップル成立ですかねぇ~)
ユーシィがキースを狙っていたのは間違いないので、彼女にしてみればしてやったりといったところだろう。
(しかしまあ、その為にはこのピンチを切り抜けられなければならんわけで……)
クロスボウを持った相手にキースはどう立ち回るのだろうか。
ナイフが武器の集団に対し無双した彼ならば、或いは勝利して見せてくれるかもしれないが、如何せんここには的となる人間が多過ぎて、やたらに暴れまわれば被害は甚大となる。
(どうするキース……やれんのか?)
俺は不安を抱きつつ、キースの出方を見守った。
――――が、どうやら事態は既に収まっていたらしい。
仲間割れをしたように見えた集団のうち、生き残った者達は死体を抱えて何処かへ去ってしまった。
(えっ……アイツ、何しに来たの?)
例の泥酔男が復讐をしに舞い戻ってきたと思っていた俺は拍子抜けした。
復讐が目的ならばターゲットは当然キースになるわけだが、結局両者が衝突する事は無く事態は収束してしまった。
(ま……まあ、無事ならそれでいいか!)
モヤモヤは消えないが、異世界人達の事情を把握できていない俺は、そう納得するしかなかった。
トラブルがあったせいか、会議はすぐに閉会され、その後ユーシィ達三人はキースに連れられてバカでかい屋敷を訪れた。
(もしかしてここ、キースの実家か……)
屋敷内でのキースの立ち振舞いから見て、ここが彼の実家なのは間違いないだろう。
なるほど、モテて当然である。
調度品の事如くが無駄に豪華な装飾で彩られた客間に案内され、部屋を離れたキースを除いた三人はそこでくつろいでいる。
テーブルに置かれた俺の隣には茶菓子が用意されていて、彼女らはそれを食していた。
その姿は三者三様であった。
ただただ美味しそうに食べるエルミー。
不満げな表情で、食欲を満たす為に仕方なくといった感じで食べるコアン。
ユーシィは行儀こそ良いが黙々と食べ続けていてその手は止まらない、相当腹が減っていたのだろう。
天井を背景に、彼女らの顔が現れては消える光景は中々に滑稽であった。
やがて茶菓子を平らげ手持ち無沙汰になったコアンとエルミーは、スマホのゲームアプリで遊び始めた。
カーアクションゲームをプレイする二人を眺めていても仕方無いのでアウトカメラに視界を切り替えていた俺は、客間の扉を開き入ってくるキースの姿を目撃した。
(ん……誰だろ、あの子たち)
キースは女性を二人連れていた。
一人はクリーム色の長髪が特徴的な長身の女性で、もう一人は茶髪の小柄な女の子だ。
部屋の入り口に背を向ける形で座っていたユーシィは、ゆっくりと振り向き入って来た三人の姿を見ると、
――――悲鳴を上げた。




