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EP.5 - 19

 キースは黒い布越しにユーシィの姿を見た。

 議長に指名され、発言の場である会場中央に向かうところだ、手にはコアンの絵本が握られている。


 その様子を見て、彼女がこれから何をしようとしているのかキースは理解した。

 事前に話していた、絵本が映しだす記憶を証拠にミノーグ家を告発する計画を実行に移すのだ。


 しかし少々歩き方がぎこちない様に感じられた、緊張しているのだろうか。

 或いは自分が予定と違う登場の仕方をしたせいで不安にさせてしまった可能性もあるかなと思いつつユーシィの姿を追っていると、丁度彼女と視線が合ったのでキースは咄嗟に笑顔を作ってみせた。


 一瞬、歩みが止まるユーシィ、どうやら気付いたようだ。


 一先ず余裕がある事を示すことが出来た、これで不安が解消されたのなら幸いだ。

 そんな事を考えながら彼女の姿を見守るキース。

 自分のとった行動が逆に不安を掻きたててしまったとも知らずに。


 この会議の真の目的を知らないであろうユーシィが、現状を見たうえでどのように切り出すのか、キースは興味津々であった。

 感情に任せて即座に行動する様子が目立っていた長女と三女に比べ、次女であるユーシィはしっかりと思慮を巡らせてから行動しているのが日々の様子から見て取れた。

 彼女は商家の娘らしい強かさを持っていて、それが発揮されるであろうこの場に居合わせたキースは、まるで競技を観戦するかの様な心持ちであった。


 ユーシィの起こす行動は非常に計画的だ。

 それ故、キースは強い不信感や恐怖心を抱いていた。


 彼女に思わせぶりな仕草で詰め寄られる度に、キースは怯えていた。

 そういう時の彼女の目は、奥にどす黒いものを湛えていたからだ。


 しかし今は、その恐ろしい眼差しは別の者に向けられている。

 なんとも心強いことだなと、キースは思った。


 ユーシィは早速、コアンの絵本を証拠品として提示する許可を求めた。

 彼女の要求は受理され、議長以下数人の神官に事件当時の記憶を見せる事となった。




 当然といえば当然だが、会場は騒然となった。




 ユーシィがコアンの絵本がどのようなものであるかを説明すると驚嘆の声が上がった。

 続けてミノーグ家と海賊が起こそうとしていた反乱の詳細を語ると、怒号が飛び交った。


 コアンの絵本が持つ能力を理解させるのに苦労するかと思われたが、思いの他すんなりいった。

 その用意周到さは流石ユーシィといったところであった。


 次いで絵本に記された記憶に基づき語られたミノーグ家と海賊の蜜月関係については、少々こじれてしまったようだ。


 怒号の中に聞き捨てならないものが混じっていた。

 マークェイ家とクレイス家が結託し反乱を起こそうとしていたのではないか、とのことだ。


 全く事実無根、というわけではないが、マークェイ家は単なるとばっちりだろう。

 当然、ユーシィは力強く否定し、それはミノーグ家が行なった嘘の告発であると告げた。

 恐らく裏は取れていないだろうが、絵本の記憶が皆に与えた印象のお陰で真実味が増し、少々強引ながら理屈は通ったようだ。


「シ……シェイク! アムノイ、シェイク!」


 騒然となった会場内にて、全員静かにしろという、議長の号令がかかる。

 お前も騒がしくしていただろうにと、キースは心の中で呟き、軽く鼻を鳴らした。


 一同静まり返るが、ユーシィは発言権を主張し、引き続き語り続ける。


 巧みな話術で行なわれる演説めいたユーシィの証言は、着実にミノーグ家を追い詰めていく。

 これにより、全ての罪はミノーグ家に押し付けられ、真に異端であるクレイス家の陰謀は再び闇の中となり、一件落着となった。



 ――――かに思えた。



 ユーシィ、そしてマークェイ家の戦いは終わったかもしれないが、クレイス家の問題は継続中だ。


 ジゼが何かしようとしている。

 キースは、己の直感がそう訴えているのを感じ取った。


 その直後、キースは強烈な足払いを受け、床に倒れ込んだ。

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