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EP.5 - 10

 ユーシィに連れられてコアンとエルミーが辿り着いた場所には、大きな建造物が建っていた。


 建築材料は石材がメインのようだ。

 建ち並んだ十階建てのビル程の高さがある尖塔群を下層部分で結合した様なその建物は、壁の至る所に巨大な彫刻が施されていて、荘厳さを醸し出している。

 見覚えのあるデザインの彫刻があった。キース達が普段羽織っているローブに刺繍された模様と同じものだ。

 ということは、恐らくこの建造物は集落で見た教会の大都市バージョン的なものだろう。言うなれば大聖堂だ。


「おー、めちゃでかいな!」


 建物に近付いたコアンは、その巨大さに改めて驚きの声をあげる。

 彼女の胸元でぶら下がって正面を向いている俺には、建物の上部を仰ぎ見る事は叶わない。

 しかし遠目から見た全体図と近付いて見た感じで、大体のスケール感は把握できた。


(広さは東京ドームと同じくらいかなー)


 東京ドームを訪れた事は無いが、ドーム何個分という換算方法が頻繁に使われているせいで、ついつい自分も使ってしまう。何故こんな換算方法が定着したのだろうか、謎だ。


 建物の入り口には木製の巨大な門が備え付けられているが、現在は開かれている。

 俺達はアーチ状の入り口を潜り建物の内部に入った。


(おおっ! すっげえな、まさに大聖堂って感じだ!)


 入って直ぐに飛び込んできた景色に俺は思わず驚嘆した。

 外観で高さがあったので複数の階層に分かれているかと思われたが、実際は天井が遥か上にある一層構造だった。

 屋内に居ても尚、建造物の巨大さを感じさせるその構造は、ネットで見た大聖堂の画像そのまんまである。

 視界に映ったもので一番印象的なものは、壁のかなり高い位置にある正円と半円の巨大なステンドグラスだ。

 ほかにも巨大な彫刻や色とりどりのステンドグラスが並んでいたが、その二つが一際目立っていた。


(あれはきっと太陽と月だなぁ)


 まるで観光客の気分だ。

 視界に映るすべてのものに圧倒され、ただただ感心せざるを得ない。


 そんな中、ふと気になる事が思い浮かんだ。


 やたらと巨大で荘厳な建造物を建てるのは、権威を誇示し、人々を畏怖させる為だと言われている。

 特にそれが宗教的なものの場合、その意味合いは強くなるだろう。

 それは俺が元居た世界での話だが、この異世界の人達の価値観は、元の世界の人達とそれ程ズレがあるようには思えないので、この建物も同じ目的で建てられた可能性が高い。


(この地域は宗教によって統治されているのかもしれないな……)


 神という絶対的な存在は人を従わせるのに好都合だ。

 それを意図的に行なっているとすると、この世界の聖職者はイコール支配階級となるだろう。


(キースがモテる理由が何となく分かってきたな)


 権力を持った人間のもとに嫁ぎたいという気持ちは良く分かる。スマホだけど。

 それに加え高身長で何か妙に強いし、顔も決して悪くないキースは間違いなく優良物件だ。


(うむ……お嫁にいきたいかもしれない)


 あまりにもハイスペック過ぎて、最早嫉妬心すら湧かなくなってしまった。



 大聖堂内部の入り口から見て左右の壁側には階段状の席が設けられており、その一つ一つに机が設置されている。

 既に大勢の人が着席しているそこに、ユーシィ、コアン、エルミーも混ざる。


(議事堂のような感じもするな、一体何が始まるんだろう)


 まだユーシィがコアン達をここへ連れて来た目的は見えてこない。

 ユーシィと共に来たキースや学者達はどうしたのだろうか、他所で別の事をやっているのだろうか、疑問は尽きない。


(くっそー、会話さえ出来ればなぁ……)


 悔やんでも仕方無い。

 やきもきする気持ちを抑え、これから起こることをあれこれ想像してみる事にした。


 暫くの後、退屈になったのか、コアンが俺を弄り出した。

 フリップを開き、起動したのはゲームアプリ『けものピラー』だ。


「ん~…………あっ!? なにすんだ!」


 どうやらユーシィにフリップを閉じられたらしい。


「コアン、ダメ」


「なにがだめなんだよ~」


 ユーシィにゲームを妨害され、不満げな声をあげるコアン。


「コアン、シィィィ~~~」


「しーーーなのか? ふ~ん……」


 静かにするようコアンに指示を出したのはエルミーだ。


(エルミーの言う事は結構素直に聞くんだよな……若干尻に敷かれてる感あるな)


 乙女三人のやり取りが終わった直後、突然男の大きな声が聖堂内に響いた。


「シェイク!」


(おっ? 何だ?)


『シェイク』とは『静粛に』という意味だ。


(議長か、はたまた大司教的な人物か)


 この場を取り仕切る何者かが現れたのは明白であろう。

 俺はこれから起こる事を、固唾は飲めないのでとりあえず静かに見守った。

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