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EP.1 - 5

パロディは、読んでどうかは別ですが書いてて楽しいのと盛り過ぎたと感じたら簡単に差し替えられるので、完成させる事を第一の目標にしている自分にとって非常にありがたい存在です。

 パンと、別に用意してあったらしい果物を鱈腹食べた狐様は案の定、眠ってしまった。

 ――――ご丁寧にフリップを閉じて。


(変なとこで気を回すなよなぁ~……)


 俺は再び、以前の様に暗闇に包まれた――――わけではなかった。

 カメラを起動し試行錯誤したが結局自撮りモードから切り替える事が出来なかったので、諦めてスリープモードに一旦移行し再度ロック画面を表示したところ、何故かアウトカメラに視覚を移す事に成功したのだ。


 フリップを閉じられた状態、カメラを起動した状態で出来なかった事がロック画面で出来た。その理由は一体何なのだろうか。


 この(アイザック)の仕様というのは本当に不可解である。何か動作をしようとすると妙なところで引っかかる。出来ない筈の事が出来るのに、出来そうな事が出来ない。俺とスマホの機能との間に何か隔たりがある様に感じられる。


(やっぱロックが掛かってるからなんだろうな……)


 誰かにパスコードを入力して貰えれば解決出来るのだが、伝える方法が無い。

 連続失敗のペナルティなんて有って無い様なものだし、総当りで試して貰えるよう仕向けるという強引な方法もあるが、そこに辿り着くまでにどれ程の時間を要するのだろうか。


 時間と言えば、バッテリーについてだ。

 この世界に生まれ落ちてから色々な機能を使い、時間もそこそこ経過しているが表示上は100%だ。


(――――どう見てもチートです。本当に有難う御座います! いや本当に!)


 無限とも受け取れるが、疲労と誤認させている要素にバッテリーの減少値があるとするならば微減しているとも取れる。

 今のところはタイムリミットが有ると考えておくべきか。


(結構盛られてるんだなぁ、チート能力)


 やはり、これだけ色々能力をくれるのなら先ずスマホである事を何とかして貰えなかったのかと思わざるを得ない。


(ええ、そうですよ、言いましたとも、真歩ちゃんの『スマホ』になりたいって。でもなぁ……)


 スマホとして転生してしまった事実は変えられない。

 与えられた能力でなんとかやっていくしかない。

 過去のものになった可能性をいくら考えても無駄な事だ。先の事を考え、そして目の前の問題と向き合っていこう。


 そうだ、向き合っていこう、目の前の――――



 ――――この石畳と。



(カメラ切り替えた意味ねぇじゃねーかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!)



 狐様はフリップを閉じて俺を床に置いた。仰向けにして。

 アウトカメラに切り替えてフリップに依る目隠しを回避する事には成功したが、背面が床と接している為に視界は一面石畳だ。


(はぁ……やる事成す事裏目、裏目だよ……裏の眼(アウトカメラ)だけに……って、うっさいわ!)


 だが、全く得るものが無いというわけでもない。

 視界の切り替えに成功した時、屋内の様子を確認する事が出来た。

 粗さが無い訳ではないが上手く敷き詰められた石畳と、やはり石材によって築かれたであろう壁には大きめの窓が並んでいる。天井は高さがあるようで把握できなかった。現実世界の家と比べると生活感という点に於いては乏しいと感じられるが、手入れされた長椅子が規則正しく並べられているのを見る限り今も人に利用されているのは間違いないだろう。現実世界の建物に当て嵌めると、小さめではあるが教会や聖堂等と呼ばれるものに近いか。


(ここが狐様の住み家なんだろうか……何となく違う様な気がする)


 様付けで呼んではいるが彼女への不信感は拭いきれない。見てくれもそうだし、行動や言動も明らかに子供である。子供は自由だ。その行動原理は単純な様でも、実際に起こす行動は突拍子もない。そもそもこの建物に入る際、駆け込む様な動作だったのは何故なのか。お腹が空き過ぎて気持ちが逸ったからか。では駆け出す直前の挙動はどう説明するのか。



(もしかしてだけど……もしかしてだけど、お前ここで寝てたらマズいんじゃないか? なあ、泥棒狐)



 起こした方が良さそうだ。そう思い至った。


 ――――が、駄目。

 タイムアップ――――時既に、というやつだ。


 足音が聞こえる。

 誰かが屋内に入ってきてしまった。


 彼女が食べた食料は、テーブル――というよりは台座のようなものに置いてあった。そして彼女は現在、入り口から見て台座の裏側で眠りこけている。


(お前それ…………もしかして隠れてるつもりなのか……?)


 足音はどんどん大きくなる。一直線に此方へ近付いて来ている様だ。


 狐を起こそうか迷う。今ここで起こせば、多少ではあるが相手との間合いが開いた状態で行動を開始させられる。だが馬鹿デカい音を鳴らすので存在に気付かれてしまう。かと言って今の状態でやり過ごせるとも思えない。


(…………詰んでね?)


 賭けるとするならばどちらだろうか――――



(ダメだ! 考えてる暇なんか無い!)



 ――ピピピピピピピピピピ!!

「ふぇぁぎゅィッ!?」

≪I'm here.≫



 俺は、けたたましい電子音と渋いイケボ音声を鳴らした。


 と、同時に狐の素っ頓狂な声が聞こえる。


 ――――それに加えて何か硬い物同士がぶつかった様な鈍い音が聞こえ、


 更にそれらの音に混じって野太い男の声が聞こえた気がした。



 音の情報量が少々多かったが流石iZakuroX6、そしてA.I.Zack、見事に全て拾ってみせた。

 そういえば台座の縁が少し突き出していた様な記憶がある。そして狐は恐らくその台座に背を預けて寝ていて、その状態でビックリして跳ね起きたのだ。

 犬が出す悲しそうな鳴き声に似た音が近くで鳴るのを聞いた。痛そうだがお目々パッチリだ良かったな。

 しかし、身を隠しているのに敵の近くで「私はここに居ます」とは、舐めプもいいとこだ。


「うぐぐ……おまえうるさいんだよぉ~~~……」


(スマンな、だがウダウダ言ってる暇は無いぞ。早く誰かが近付いて来ている事に気付け、そして逃げろ!)


 相手は大人の男のようだ、掴まれたら終わりだ。

 だが、足音からすると恐らく一人。小柄さを最大限に生かし上手く立ち回れば外に逃げる事も可能な筈。

 早めに起こして正解だろう――――上手く逃げろよ泥棒狐。


(くっそ~……徳を積まなきゃいけないのに何で泥棒の逃走を手伝ってるんだよ俺は)


「うぁっ!?」


 狐が、驚いた様な声を上げる。


(気付いたな? よし逃げろ、直ぐ逃げろ!)


 床を蹴る音がした。彼女が駆け出したのだろう。


(――って、俺を置いて行くなあああああああああああ!)


「あぎゃッ!?」


 盛大に床を擦る音がした。



 ……。



(…………コケたな)



「うあー! はなせバカー!」



 …………。



(…………詰んだな)



 担ぎ上げられてでもいるのだろうか、わさわさと布を擦る音がする。


「おまえがウルサイからバレちゃったじゃないかー! ばかー!」


(言いがかりだー! 俺は最善を尽くしたぞバカ狐ー!)


 しかし結果的に捕まってしまったのだから言い訳のしようもない。そもそも喋れないけど。

 泥棒狐はどうなってしまうのだろうか、何かで見た童話を思い出してしまう――――いやいや、耳と尻尾はあるがそれ以外は只の生活の苦しそうな幼女だ、血色は良かった様な気がしたけど。

 温情を貰える可能性も無くは……いやどうだろうか、何せこの世界、そしてこの土地に住まう人々がどんな価値観を持っているのか分からない。


(――――うおっ!?)


 体が浮く。

 どうやら俺も捕まってしまった様だ。まあ単に拾い上げられただけだろうが。


 床が遠退き、視界が不規則に動く。

 暫くグルグルと景色が回った後、動きがピタリと止まり、目が合った。


 恨めしそうにこちらを見つめる抱えられた泥棒狐と――――独特の模様が目立つ白い布を羽織った男。


 彼は手に持った俺と脇に抱えた泥棒狐を交互に見つめると、一度溜息を吐く。そして――――



(――――うーん、わからんな、どういうつもりなんだろうか)



 俺は泥棒狐に渡されたようだ。


「おまえ~……つぎうるさくしたら、うめるからな~」


(埋める!? やめてくださいしんでしまいます)


 俺の生殺与奪権は彼女に握られている。そして彼女のそれはこの白衣の男が握っている。スマートの名を冠した俺が最底辺か、世知辛い。




 俺達はどうなってしまうのだろうか。

 ぶつぶつと怨み言を吐き続ける泥棒狐越しに見える男は無表情でこちらを見ていた。

【登場キャラ】

アイザック:スマホイヤーは豊聡耳

泥棒狐:お前だったのか。

白衣の男:やっと新キャラ

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