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EP.8 最終回「そして、転生へ…」

目覚めるとそこは、一面の暗闇だった。

妙な圧迫感があり、圧力センサーは俺に異常な状態である事を告げている。

此処は何処なのだろうという不安が過る。

Zacro Storeから異世界に戻ってきた筈だが、別の空間に出てしまったのだろうか。

ライトを付けて暗闇を照らせば何かわかるかもしれないが、この圧迫感の正体を確認するまでは迂闊な行動は取れない。

先ずは周りの音を良く聞いて、それで状況を把握できないか試してみよう。


(………………尻に敷いてやがるなバカ狐)


鳥のさえずりが聞こえた。

虫の鳴き声が聞こえた。

二百年間聞きなれた自然の音が、そこにはあった。

そして、寝息。

聞きなれた、無防備な寝息がすぐそこにあった。


(外で呑気に寝てやがるのか……仕方ない)


俺はバイブ機能を使い、コアンに起床を促した。

尻から伝わる振動で目が覚めないようであれば、大音量でアラームを鳴らしてやろう。


「…………む?」


コアンは暫くもぞもぞと動いた後、あっさりと目を覚ました。

ベッドでぬくぬくとしている時には考えられない反応の良さだ。

野外では一応警戒心を強めているらしい。一応。


「……………………うおっ!?」


コアンは慌てて尻に敷いている俺を拾い上げ、閉じられていたフリップを開き画面を見た。


(おはようバカ狐、またよろしくな!)


俺はカメラアプリを起動し、挨拶代わりにフラッシュを炊いてコアンの寝起き面を撮影してやった。


「ぬあっ……」


寝起きなのでちょっと反応が鈍い。

目を擦りながらモゴモゴ言ってる姿が愛らしい、とても二百歳超とは思えない姿だ。


「おまえ……なんにちねるつもりだ! しんだかとおもったぞ!」

(はっはっは、どうやらまだ死ねないみたい……え、何日?)


Zacro Storeで過ごした時間は二時間弱くらいだ。

しかし、コアン曰くこっちでは数日経っていたらしい。

意識が戻るまでに時間が掛かったのだろうか。


(日付は毎日ちゃんと確認しとくべきだな)


バッテリーが無くなる直前は日付なんて気にしてられなかったから、どれだけ気を失っていたのかがわからない。

数日経過した程度で何か問題があるわけでは無いが、状況によっては不測の事態を招く可能性が無いとも言い切れない。

念には念を入れよってやつだ。


「………………ん? おまえ、げんきになったんか?」


バッテリー残量が100パーセントになっているのに気付いたか。

少なくなったバッテリーを気にしていたのは分かっていたが、どうやらそれを元気が無いと捉えて心配してくれてたらしい。


(おいおい、そういうの止めてくれよ……ときめいちゃうだろ)


普段素っ気ない相手に急に優しくされると三割増しで良い人に見えてしまう現象だ。

俺は、コアンにまた会えて良かったとしみじみ思った。


(ああそうだ、例のものを早速使ってみるか)


コアンが画面を凝視している今が絶好のタイミングだと思い、俺はテキストエディタを起動した。

そして音声入力がオンになっている事を確認し、試しに文字を入力してみた。


『げんきになった』


漢字がどの程度読めるのかが分からないので、全部ひらがなにした。


「おー、そうかそうか、よかったな………………は?」


コアンは訝し気な顔をして、スマホの画面をマジマジと覗き込んだ。


「なかになにかいるのか?」

(散々話し掛けといて、今更それかよ……)


コアンはスマホを色んな角度から嘗め回すように見たり、軽く振ってみたりしだした。


(やーめろって……)


俺は体を振動させて抗議した。

すると、コアンはまた画面を見始めたので、俺はまた文字を入力してやった。


『おれのなまえは、アイザック』


二百年越しの自己紹介だ。

ここまで長かったな……。


「ふーん、へんななまえだなー」

(失礼な奴だな!)


こっちが名乗ったのだから、相手も名乗り返すだろうと当然の様に思っていた。

しかし結果は、名前を馬鹿にされるだけだった。

どうやらコアンには常識が通用しないらしい。


(まあ、知ってたけどね……)


だが、ちゃんと言葉にすれば伝わるだろう。

その為の音声入力だ。


『おまえのなまえは?』


ついに、コアンの本名が聞ける。

それが分かれば住んでいた国や年代も、ある程度は特定できる。

それによって彼女が何者であるかが判明するかもしれない。


「………………わすれた」

(やっぱそうか……)


果たして自分の名前というのは、簡単に忘れるようなものなのだろうか。

言いたくない事情がある可能性も考慮しないとだな。

迂闊な質問をだったかもしれない。

気をつけないと。


「ずーーーーっとむかしのことだからな……おぼえてらんないよ、そんなもん」


コアンはどれ程長くこの異世界で生きているのだろう。

どんな風に死んで、どんな風に異世界に転生してきたのだろう。

彼女への興味は尽きないが、うっかりセンシティブな部分に触れて嫌な想いをさせるのは忍びない。

本人から話してくれるのを気長に待つしかないだろう。


(でも、ちょっと不便なんだよな……)


俺は少し考え、テキストエディタに文字を打った。


『じゃあ、コアンってよんでもいいか?』


流石にバカ狐と呼ぶ訳にもいかないし、名前は必要だろう。

なので二百年前、エルミー達に付けられた名前を使わせてもらう事にした。


「…………すきにしろ」


意外とあっさり承諾を得られた。

返答が妙にドライなところが若干気にはなるが、嫌がっている様でもないので問題は無いだろう。


『よろしくな、コアン』


そう表示された画面を見たコアンの表情が、少しだけ緩んだ。

どうやら満更でもないらしい。


「よくしゃべるやつだな」


ああ、鬱陶しいと思うくらいに喋ってやるよ。

長い長い旅が退屈になってしまわないように。

俺と言う存在が、この世に在るのだという事をアピールし続ける為に。


<<I'm here.>>


Findme機能が再生した音声が、異世界に鳴り響いた。

俺は”世界”に向けて自らの存在をアピールする。

世界が俺を忘れてしまわないように。

俺が俺で在り続ける為に。


……すべては、転生の為。

そのすべては、真歩ちゃんに再び出会う為に。



―― 未完 ――

最後まで読んでくれる人、居るのかな……?

もしそんな人が居て、今これを読んでくれているのだとしたら、本当にお疲れ様でしたと言わざるを得ないですね……頭の良くない素人の書く文章はさぞ読み難かったでしょう。

ここまで読んでいただいて、本当に感謝しています。

ですが、残念ながら打ち切りエンドです。

テキトーに始めた物語なので、途中から思い通りにいかなくなり申した。

設定やら何やらを練り直して、次こそは最後まで書ききりたい……!

もしも何処かで再びこのスマホの物語を見かける事があったら……読んでくれとは言いません、アイツまだ生きてたんだと、生暖かく見守ってやってください。

では、いつかまたどこかで。

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