超短編小説「ビー玉と雷雲」No50
私は部屋でビー玉で遊んでいた。
ビー玉は複雑な模様と光を放ちながらコロコロと転がる。
見ているだけでも楽しいけれど、一番は転がしたり他のビー玉とぶつけたりして、音や色を楽しむことだ。
と、その時。ビー玉の内の一つがコーンと跳ねっ帰ってそのまま開け放っていた西の窓を抜けて飛んでいってしまった。
飛んでいったビー玉は黒に少し黄色の亀裂が入っていて、私のお気に入りだったのだ。
空にはいつの間にか灰色の雲があらわれ始めている。もし雨が降り出したらビー玉が流されてしまうかもしれない。
まあそれでも庭に落ちていればすぐ見つかるだろう。そうでなければ見つからない。きっと他の誰かの物になるだろう。それはそれで素敵だ。
そんな事を考えていたら、近くに雷の落ちる音がした。私が驚いてもう一度空を見上げると、いつの間にか雲は真っ黒に染まり、亀裂みたいな雷が雨のように降り注いでいた。
私はその無くしたビー玉そっくりの景色を見ながら、妄想を巡らす。
そう、この空はあのビー玉なのだ。
多分ビー玉には空が閉じ込められていて、さっきのはずみでビー玉の中身が出ていってしまったんだ。
私は土砂降りを眺めながら、新しい長靴のことや、近所の公園の芝生の輝く様を想像した。
雨が止むまでビー玉で遊ぼう。しっかり西の窓を締めてから。
お恥ずかしながら、物語を作る仕事を目指しています。先はまだまだまだ遠いですが、少しずつ進んでいきたいとと思います。
アドバイス、お気軽なコメント待ってます。
毎日1話以上の投稿を目指していて、今日で32日目の投稿です