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売られてた奴隷少女にガチ惚れして衝動買いしてしまった  作者: しょー
1章『青年商人と奴隷の少女とメイドさん』
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1-6『悪魔の子』

 



「…………何故だろう、冷や汗が止まらなくなるほどの嫌な予感が過ぎ去ったと思ったら千載一遇のチャンスを逃したような気配を感じるようになったんだが」


「どうかしましたか?」


「……いや、気のせいだろう」



 俺は今、レナータの街を離れて西ファーン地方の最大都市であるフリッツへ赴いている。


 仕事と言えば仕事で来ているのだが、どちらかと言うと事後処理になるか。

 ソフィちゃんと一緒に買って、解放した元奴隷達が居るのだが、その連中の中で故郷へ戻らずに、この国で働く事を選択した者が五人ほど居たので、心当たりのある人を雇って貰えそうな場所へ連れて来たのだ。


 一応、商会の長の身分だし? そんな事は使い走りに任せりゃ良いじゃんとは思うのだが、これも自分がやっちまった事への後始末なのだ。

 俺が自分で動かなきゃならんだろうさ。 というか自分でやれとモニカに言われてしまった。


 自分の雇い主を使い走りにするたぁふてぇ奴である。



「……ではアレクシス様、何から何まで本当にありがとうございました」


「礼はいらないって言ったろ、それより問題はくれぐれも起こさないでくれよ? ここから先はあんたら自身の責任なる。 もう俺は所有者じゃないし、あんた達も解放奴隷って肩書きは付きまとうが自由民だからな」



 話している奴は、買った時に真っ先に声を掛けてきた青年で、名前はオルトと言うらしい。

 最初は帰還希望者だったらしいのだが、どうやら故郷の状況が絶望的だと気付いて、生きる為にこの国へ残る事を選択したらしい。


 オルトからすれば、この国は憎悪すべき敵国だろう。 その選択をするのは難しかったはずだ。 それでも、なんとか生きられる道を真剣に、感情抜きで最善を考えたのだろう。



「……わかっています。 せっかく自由になれたんだ、無駄にはしたくありませんから」


「……ならいいや、これから頑張ってくれ」


「はい、お世話になりました」



 オルト達五人を雇って貰ったのは、このフリッツにある製鉄所だ。

 ここ数十年で急激に技術が発達し、品質は向上し、その上で生産量が増え続けている、今後も伸びる分野の産業である。


 需要は絶対に無くならない場所であるし、どうせすぐに人手不足に陥るだろうから今の内に雇って育てようぜ的な口八丁を駆使して、ここの経営者に人材アピールしてきたのだ。


  骸炭(コークス)卸すの辞めんぞオラァ!! と最終的に発言したのが決定打だったような気もするが気にしない。

 髭面で強面なおっさんが経営者であろうと卸し問屋であり開業の出資者である我が商会には逆らえぬのさ。 ふははははは!!


 ちなみに骸炭(コークス)とは、炭鉱から採取された石炭を高熱で乾留(蒸し焼き)にして、燃焼に不必要な成分を取り除いた燃料の事を言う。

 最近、この骸炭を製鉄に使用する方法が確立されたので、これは儲かると思って色々と動いたのだ。


 うーん、鉱山で使う火の機関といい、技術的な新時代が幕開けしそうな予感がするぜ。



 話が逸れたな、ともかく元奴隷たちへの最低限の援助はこれで終わったので、後は愛しのマイハニーが待っている我が家へと帰還するだけだ。



「……とはいえ、今から戻っても野宿する羽目になるし、宿を取ろうか」



 レナータとフリッツの間には宿場町は数ヶ所点在していて、出発の時間さえ間違えなければ道中で野宿などする必要が無いのだ。 そして今は既に夕刻で、こんな時間に街を出るアホはそうそう居ない。



「よし老いぼれ(ディモティ)、宿場区に行くぞ」


「ブルル」



 俺はディモティに跨がって、宿の食堂で酒でも呑むかと考えながら、フリッツの街中で馬を歩かせた。





 ◇◆◇





「…………ん"あ"あ"あ"~……早く帰りたぁ~い!! ひとりで居てもつまんねぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」



 宿泊する為に訪れた宿、一階の酒場、カウンター席で麦酒(エール)片手に持っての発言である。



「うぃ……酒呑んでんのにお酌のおんにゃのこもいねぇぇぇたぁぁぁどういう了見なンすかねェェェェ!? おぉーウ!?」


「アタシじゃ不満ってかいお客さん?」


「…………いや、恰幅の良い中年女性はちょっと」


「遠慮しないでお飲みよ、ほれつまみもお食べ、料金は銅貨三枚ね」


「いや注文してないけど女将さん!?」


「ご注文毎度ありーーーー!」


「タチ悪いなこの宿!?」



 ……独り酒でくだ巻いてたら宿の女将さんに追加注文の押し売りをされた。 まあ安いから構わんのだが。



「お客さんが構って欲しそうだったからねぇ、女の子と呑みたいなら歓楽街でも行っておいでよ」


「女は金で買う物じゃあないのさ、愛で買うものなのさ」


「気持ち悪っ!?」


「えっ……」



 お金払って好きでもない女性とお酒呑んでも面白いと思わないので、キリッとしながら自身の主張をしたらドン引きされたんだが? え、気持ち悪いの……?



「……お客さん、悪い事言わないから好きな娘の前で気持ち悪い顔で気障なセリフ言うのは止めとくんだよ? 気持ち悪るがられて嫌われるよ?」


「え、あ、はい、すいません……」



 ……あれ? なんで初見のおばちゃんに助言されてんの俺。 え、そんなに気持ち悪いですか? なんか犯罪者を見るような目を向けられている気がするのだが。


 くっ、だが確かに一理ある。 何故なら俺が考えたカッコいい態度という奴で女性に好印象を残した事がないからだ。



「…………くそぅ、やはり顔か、顔なのか……!!」



 もっと美形に生まれてくれれば気障なセリフも似合っただろうに、俺は容姿に関しては評価は散々なのだ。 情けない顔とか、女々しい顔とか、笑顔が下ネタとかよく言われる。 つらい。



「……ごちそうさま」


「お休みかい?」


「いや、ちょっと外で風浴びてくる……」



 なんか、このまま酒をのみ続けていると泣き上戸入りそうなので、もう止めておこう。


 俺は酒場から外へと向かい、酔いが回って火照る身体を冷ますのに、夜の街の中へと立つ。



「…………はぁ」



 今頃ソフィちゃんとリオナはどうしているのだろうか、ちゃんと仲良くやってるだろうか?

 リオナがソフィちゃんをいじめたりはしないだろうが、無意識に馬鹿力見せつけて怯えさせたりしてないだろうか?


 ……まあ、大丈夫……か、少なくとも俺よりは仲良くしてやれているだろう。 ソフィちゃんの方はまだよくわからないが、リオナは本質的には優しい奴だ。


 二人にはなんとか幸せに暮らしていて貰いたい、その為にはなんでもするつもりなのだ、俺は。



「…………そろそろ寝るか、明日はすぐに出発したいし」



 宿の前で夜空を見上げながら色々考えて、火照りも取れたしそろそろ寝ようと宿の中へ戻ろうと、振り返って歩き出したその時。



「…………おお? そこに居るのは坊っちゃんじゃあないですかな?」


「……あんたは……」


「…………」



 街灯の光が揺らめく路地を、我が物顔で歩いて来たひとりの男に声を掛けられたのだった。


 その男は、護衛らしき燃えるような赤い髪をした巨躯の男を後ろに控えさせ、俺に近づいて来た。



「こんな所で会うとは偶然ですな、どうですかな? その後は」


「…………」


「……ふん、相変わらずですな、挨拶すらしたくないのは前と変わらんらしい」



 この男の名前は、バナスと言う。 非常に不愉快だが、俺とは旧知である。


 なんでこんな所に居やがる……ああ、近くに宿でも取ってるのか。


「…………」


「噂は聞いておりますよ、中々に上手く立ち回っているらしいじゃないですか、坊っちゃん」


「…………」


「やはり、商才があるようで……旦那様に頭の出来は似たようだ」


「うるせぇ、失せろ」


「…………取りつく島も無しですか、お互いに利害が一致した事もあると言うのに嘆かわしい事だ」


「…………」



 このバナスという男は、奴隷商人だ。


 そして元は俺の父親、奴隷商人として名を轟かせていた奴の右腕だった男でもある。



「一応、念のためにもう一度お聞きしておきましょうか……儂の所で腕を振るうつもりはありませんかな坊っちゃん? 貴方の才能は放っておくには少々惜しい」


「……二年前に言っただろう、お断りだ、そんで、二度と俺の前に顔を出すな」



 俺はこの男と二年前、糞親父の死に関わる出来事の際に、どうしても関わらざる負えない事情があり、互いの利害が一致し、ただ一度だけ協力した事がある。


 だが、それは特殊な事情からの不可抗力であり、俺はそれ一度以外でこの男と関わるつもりは今後一切無い。



「勿体無い事だ、まあ、今日は偶然出会っただけですしな、その内またお屋敷の方へ挨拶にでも参りましょう」


「来るなと言ってんだよ」


「では坊っちゃん、ごきげんよう……おい、行くぞ」


「…………」



 バナスは、背後の大男に一言言ってから、夜の街の影へと消えて行った。




「………………ちっ……」



 最悪の気分だ。 二度と会いたくない奴に出くわして、あまつさえ会話してしまうとは。



「…………とっとと帰って嫌な気分を払拭したい……」



 先程までも帰りたくて仕方がなかったが、今は更に帰りたい。 とにかく、リオナとソフィちゃんにすぐに逢いたい。



 あんな、悪魔(くそおやじ)と似てるとか言われて気分が悪くならない訳が無いのだ。



 俺はアレとは違う。 誰が何と言おうが俺はあんな奴とは違うんだ。






一方その頃


「……?……猫の耳、ですかこれ?」


「…………そうみたいね、用途がわからない……やっぱりバカなのあいつ」


「そうですねぇ……んっと……」


「…………うっ」


「ちょっとかわいいかも? にゃー」


「……たしかに」


「リオナも、はい……にゃっ」


「…………に、にゃー」


「にゃー」


「にゃー」


「…………ご主人さまの前ではちょっと恥ずかしいですねこれ」


「……そうね、隠しときましょ」


「そうですね……」



コスプレ試着中な二人だった。



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