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売られてた奴隷少女にガチ惚れして衝動買いしてしまった  作者: しょー
1章『青年商人と奴隷の少女とメイドさん』
6/46

1-4『アレックス商会』

2019/5/27

推敲済。

 


「うーぃ、食った食った」



 昼食後、腹ごなしにと庭へ出向いた俺は、背伸びをしながら何処を眺めるでもなくのんびりとした気分で日の光を浴びていた。


 今日はぽかぽかと日差しの暖かな気持ちの良い日である。 こんな日はこうして頭空っぽにして嫌な事は太陽の力で消し飛ばして貰うに限る。

 よし、俺は別に何も見られていないし、ソフィちゃんもいちいち人の恥態をほじくり返すような真似はしないだろう、全ては過去の黒い歴史として既に風化したのだ、それで良い。


 ソフィちゃんと言えば昼食時に微妙な顔つきをしていたが、何かあったのだろうか。 まあ察するにあのかぼちゃの料理の調理方法でも見てびっくりしたのだろう。


 俺も初めて見た時は恐怖したものだ。 だがまあ、あれ旨いんだよね、複雑にでこぼこした断面や亀裂から味が良く染み込むのか、中々に美味なのだ。 見てくれはちょっと悪いがまあ、ご愛嬌だろう。


 スープの野菜はソフィちゃんが切ったというのはすぐに分かった。 だってウチで出された料理としてはかつてない程に綺麗な切り方した具材だったんだもの。 あれだね、舐め回すように舌の上で転がしながら食べたよ。


 愛の味がしたね、味付けはリオナだろうけど。



「……眠くなってきた」



 時刻はうららかな昼下がり、人間を一番怠惰にする時間である。 身悶えながらも仕事は進めていたが、まだ終わっていないのでのんびりしている暇は無いのだ。



「…………あ"~、無理、やる気が起きん」



 そもそもの話、俺はリオナとソフィちゃんを養う程度、造作も無いぐらいには成功してる商人だったりする。

 そうじゃなければソフィちゃんを無理矢理購入なんか出来るものかよ。 あれだけ容姿の優れた娘なのだ、多少幼く見えても競売に入ればどこぞの貴族さま共が涎を垂らして金を積んだだろう。



「…………あ、やっべ!!」



 庭の真ん中に寝転がり、さあ昼寝でもしようかと眼を閉じて考え事をしていたが、とある事を忘れていた事に気がついてやむ無く昼寝を中断する。



「おーい!! リオナ、ソフィちゃんちょっと!!」



 駆け足で屋敷の中へ戻り、二人を呼びながら自室へと向かう。 外出の準備をしなくてはいけないのだ。



「どうかなさいましたか、若旦那様?」


「ご主人さま、慌ててどうしたんですか?」



 二人は二階へ上がる為に階段の手前に居た。 掃除道具を持っているので二階の掃除でもするのだろう。



「仕事で出掛けて来る。 もしかしたら何日か戻らないかもしれないからその時はよろしく」


「あ、はい、急ですね?」


「今の今まで忘れてた事があった、ちゃんとしとかないと……」


「馬はどう致しますか?」


「乗ってく、準備頼んだ」


「畏まりました。 ソフィ、お掃除は一旦中断してディモティの所へ行きましょうか」


「ああ、馬の名前ですか……でも、老いぼれ(ディモティ)……?」


「ジジイ馬だからね、あれ、でも良く分かったね、外国語なのに」


「本を読んだりするのが好きでしたから、それで翻訳前のものとかを調べながら読んでいたら自然と出来るようになっちゃいまして」


「へえ、頭良いんだな」


「えと、ありがとうございます……えへっ」





 うむ、照れ笑いかわいい。




 それはそうとソフィちゃんは中々の頭脳をお持ちのようだ。 翻訳前の本を調べながら読むという行為も専門家でもなければ中々行わないしね。

 俺も読書が趣味ではあるが、未知の言語の本をわざわざ翻訳しながら読んだりまではしないし。


 うむ、それよりあれだな、趣味が同じじゃん。


 趣味が同じですよ!! これはあれか、運命的な共通点だとは言えないかね諸君!?


 よし、本を買って来よう。 恋愛小説が良かろう、そんで二人で一冊の本を寄り添ってお互いに本を支えながら読むんだ。

 それから「あ、まだめくらないでこのページ読み終わってない」「ふふっ、早くしてくださいね、続きが気になるんですから」「はは、ゴメン、でも本の主人公がここからどうするのかも気になるけど、俺はソフィの気持ちの方が気になるな」「もうっ、ご主人さまのばかっ」的な展開をだな!!



「若旦那様、準備しなくてもよろしいのですか?」


「……?」


「おっといかん、そんじゃすぐに出発するからよろしく」


「畏まりました」


「はい、頑張ります」



 いかんいかん、また妄想でノリノリになってしまう所だった。 想像力豊か過ぎるのも考えものだよね。


 揃ってお辞儀をしてから馬小屋へと向かった二人を見送ってから自室へ向かい、それから少しして、俺は二人を残し街へと向かったのだった。


 言ったようにもしかしたら数日帰れないかもしれないが仕方がない。 リオナに任せておけばソフィちゃんを悪いようにはしないだろうし。



「……ただ、何か忘れているような気がするんだよな……まあ、いいか」



 何か忘れてはいけない事を忘れている気がするのだが、俺はその事を帰宅出来るまで思い出す事は無かった。





 ◇◆◇






 街の繁華街とは別方向、主に倉庫や業者向けの卸売業を商う店や建物が集中する一角に俺は顔を出している。


 老いぼれ(ディモティ)という俺の持ち馬は老馬だけあって走るのは遅いわ歩くのも遅いわなのだが、歳のわりには人を乗せても嫌がらないし、わりと安定した歩き方をする。 軽い物なら荷馬車も引けるので悪い馬では無いのだ。

 性格も落ち着いてて優しいしな、まごうことなくおじいちゃんである。


 え、そんな年老いた馬を働かせるな? いやね、新しい若い馬も確かに買えてるんだが、働きたがるのだ本人が……じゃなくて本馬が。


 別に死ぬまで食っちゃ寝してても文句は言わんのだがね、なんだろ役立たずは肉にされるとでも思ってんのかね。



「まあ、一般常識としては働けない馬はシチューになる運命だが」


「………………ヒ、ヒィン……」


「馬肉って旨いけど流通量は少ないからな~、リオナもたまに食べたいって言うし……」


「………………………ヒィン……」


 カッポカッポと歩きながら何故かブルブル震えてる老いぼれ(ディモティ)。 まさか言葉を理解しているとは思わんが……お前は食べないよ? 一応愛馬だもの。



「着いた」


「ブルルッ……」



 目的地に到着し、俺はディモティを馬用の杭に係留してから首を撫でてやる。 そうするとディモティは俺にすり寄り首を擦り付けて、襟や裾を甘噛みしてくる。


 ただ、親愛行為の筈のそれらがやたら必死でちょっとウザいぐらいなのが気になる。


 そうか、そんな激しくすり寄るほど俺が好きなのか、はっはっはっ、後で旨い人参を与えてやろう。



 あまりにもすり寄りがしつこいので無理矢理中断させて、建物の中へと入る。



「おーい」


「……は、はーい!!」



 カウンターに寄りかかり、店員を呼ぶと、奥から声が聞こえ、足音と共に近付いて来るのが分かった。



「いらっしゃいませ、ご用件は……あっ!!」


「うぃす」



 出て来たのは黒髪を後ろでおさげにした眼鏡の女で、名前をモニカと言う。



「アレク!! あんた色々丸投げしといて来るのが遅くない!? 無茶振りされてこっちは大変だったんだけど!?」


「いや、スマン、忘れてた」


「忘っ……はぁ……」


「いや、モニカなら問題無いだろうし、そんで?」


「……貴方ねぇ、一応ここの仕切り役でしょう? もっときちっとしなさいよ」


「んなこと言われても」



 説明すると、この建物は俺の所有物件であり、このモニカという女は従業員である。 つまりこの店、“アレックス商会”の本店は俺が立ち上げた場所なのだ。


 まあ、詳しい説明は割愛するとして、俺の商人としての仕事とは、まあつまり、ここの大旦那様という奴なのだ。



「それで、どうなった?」


「……すぐに聞きに来なさいよそれを……とりあえず、帰還希望者は送っていったわ」


「残りは?」


「急だったから倉庫の掃除ぐらいしかさせられてないわよ、予定崩すのはもうやめてよね」


「すまん」


「……それで、連れ帰った子は? どうするか決めたの?」


「一緒にずっと住む事にしましたがなにか」


「……はぁ!? なんで!?」


「まあ、色々と」



 この従業員であるモニカは、俺の学生時代からの知り合いで、雑用と事務仕事がなんか得意そうな顔してたので雇った奴である。

 偏見で決めた割には本当に事務仕事得意だったという期待を裏切らない奴である。学友だったのでわりと気安い間柄なのだが、雇ってからこっち、言葉の節々に棘があるのが気になる。


 で、このモニカ、一応俺の事情を知る数少ない奴なので色々と重宝するのだ。 ソフィちゃんを衝動買いした事も知っている……というか現場に遭遇している。


 そして、実はソフィちゃん以外にもついでと言うか勢いに任せて購入しているのだ。 三十人ぐらい。


 要は、奴隷として連れてこられた連中の、ソフィちゃん以外の奴らへの対応を任せて、俺は遊んでいたという事になる。



「……色々とか言ってるけど、貴方リオナちゃん以外は屋敷で使おうとした事無かったじゃないの、どういうつもり?」


「ひみつ」



 言わせようとすんない恥ずかしい。



「…………まあ良いわ、とにかく急な出費もあったし連れて来た人たちの働き口も手配しなきゃだし、当分帰れると思わないように!!」


「うへぇ、やっぱり?」


「当たり前でしょう? まったく、いつもは順序守ってるのになんであんな突発的な行動に出たのか……」


「悪いな、迷惑かけた」


「……別に良いけど、こっちは貴方に雇われてる身分な訳だし、本当はこんな口聞いたりしたら駄目な訳だし……」



 モニカはそう言うが、正直衝動買いで使って良い額では無かったのも事実。 後悔も反省もしないと決めた訳だし今更俺がグチグチ言って、ソフィちゃんが気負ったりしても面白く無い。


 まあ、それでも大金使ってしまったのだ。 その埋め合わせぐらいは普段よりも働いて取り返さなきゃならないだろうけどね。


 そう考えてから、俺はモニカとやらなくてはならない事への打ち合わせを続けた。




※馬の名前を老いぼれにしようと決めて翻訳したら英語だと「ドーナード」……(´・ω・`)


ドナドナドーナードーナード……笑えるシャレでは無かったのでフランス語から引用しました。

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