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売られてた奴隷少女にガチ惚れして衝動買いしてしまった  作者: しょー
1章『青年商人と奴隷の少女とメイドさん』
3/46

1-1『変態とお澄ませ切れてないメイドと合法ロリ』

※旧第3部、第4部と統合致しました。

※2019/5/27

推敲作業済(描写、一部設定変更)

 


「……汚いですね、まずはお風呂に入りましょうか」


「え?」


「むっ?」



 挨拶の後、ソフィちゃんをつぶさに眺めたリオナの呟きである。


 言われずとも気付いていたが、ソフィちゃんは現在、言ってはアレだがちょっとバッチい。


 当たり前ではあるのだが、奴隷というのはぞんざいに扱われるもので不潔な環境に押し込められてたりするのだ。 当然身体を洗うなど出来たりしない。


 まあ、そうは言っても愛玩奴隷なんかの、いわゆるエロい事する目的の奴隷なんかは綺麗に洗っておめかしさせられたりするものなのだが、ソフィちゃんについては事情があるのだ。

 商品として綺麗に並べられる前に無理矢理購入したので、服装はぼろっちい布切れだし何日も身体を洗えていない状態だったりする。

 ぶっちゃけちょっと芳醇な香りが漂ってたりするので、リオナが顔をしかめて入浴を促すのも仕方がないと言える。


 ちなみに俺はちょっとくらいバッチくても平気なのだがね。女の子の匂いは多少キツくてもアクセントだよチミ。



「お風呂場はこっちです、付いてきてください」


「あ、はいっ」



 リオナが先導して風呂へと案内する。 どうやら準備は出来ているようですぐにも入浴は可能らしい。


 家の風呂場はこの地域では珍しく、浴槽に湯を張るタイプである。

 そんな準備に手間の掛かる設備を何故、しがない商人である俺が自宅に設置出来ているかと言うと、答えはひとつ、糞親父の道楽のひとつと答えるしかない。 有効利用はさせて貰ってはいるがね。



「ここです、まず身体を入念に洗ってから湯に浸かってくださいね」


「……えと……」



 ソフィちゃんは戸惑うように浴室への扉と、俺の顔を交互に見詰めている。 はて、なんでしょうかね?



「…………あ、あの、本当にお風呂場を使わせて頂いてよろしいのでしょうか?」


「ああ、そういう事? 平気だけど」



 風呂に入れと言われても本当に入って良いのか迷っていたと、こっちから言い出しているのだから遠慮無く入れば良いのにね?


 ただまあ、身分的に主人や先輩使用人より先に、贅沢な設備を利用するのに気が引けるというのも分からなくもないのだけどね。

 本来こういうのは序列があるものだし、人が人なら先に何々しろと命令したのに主人や先輩より先に何々するとは何事だぁ!! と、理不尽な叱責や折檻をする連中だって存在するのだ。 胸糞だけど。


 ふむ、なるほど、そこまで考えが至ったらこの状況でソフィちゃんが戸惑うのは当然だと理解も出来るな。


 むしろソフィちゃんかしこい。 身を守る為の警戒心バリバリかわいい。


 ならば良かろう、ここは主人たる俺が一肌脱ごうではないか。


 物理的に。



「わかった、なら俺と一緒にお風呂はいr「私が同伴しますので若旦那様はお呼びじゃないです」……あ、うん、そお? そうなの……」



 なんなの? 扱いひどくない? ご主人さまだよ俺? 邪な感情なんかちょっとしかない完全な善意での提案なのにそんな犯罪者予備軍を見るような目付きで睨まなくてよくない?



「では着替えの準備をして来ますので待っていて下さい、それと若旦那様ちょっと……」


「うん?」


「付いてきて貰えますか?」


「え、ああまあ、良いけど」


「……あ、あの……」


「あなたはここで待っていて下さいね、すぐに戻りますから」


「……はい」



 着替えの準備をするというリオナが手招きするので付いて行く。 なんだろうかと考えながらも特に警戒せずに従ったのだが、ソフィちゃんを独りにして大丈夫だろうか?

 まだ招いたばかりで右も左も分からない幼い少女を独りにするとか良心が痛むんだけど?



「若旦那様、こちらへ」


「ううん?」



 リオナが誘導してきた場所は、現在は使っていない使用人用の空き部屋だ。 清掃こそリオナが怠らずに頻繁にしている為に埃っぽかったりはしないのだが、家具が一切存在しない正しく空室なので薄ら寒い所である。


 こんな所に呼びつけて何をするんだよ。



「では後ほど」


「は?」



 空き部屋に俺が入るや否や、リオナは扉を強く閉めて、おまけに何やらガチャガチャと……外側から施錠しやがった。ついでに内側から開けられないように歯止め仕込んでる物音までしやがる!



「ちょっ!? おいなんで閉じ込めた開けろバカ!!」


「………………」


「おーいもしもーし!?」



 閉じ込められる理由など存在しないのでこの状況は大変に不服である。

 なんでこのメイドさんはこう主人の扱いが不当で雑なのか……抗議もこめて必死に扉を叩くものの開けてくれる気配は皆無だった。



「覗きますよね? 絶対に」


「…………はて、なんの事やら」



 覗く? いやいやまさかそんな。女の子の入浴を浅ましく覗こうなんて破廉恥な真似がわたしに出来るとでも? そんな紳士にあるまじき行為に至るなど有り得ませんよ、諸君もそう思うだろう?



「……とにかく、お風呂入り終わったら開けに来ますからそこで大人しく待っていて下さいね若旦那様」


「えぇー!?」



 有無を言わさぬ口調で告げて、リオナは扉の近くから去って行こうとする。


 待って。 いや本当に覗かないんだが!?



「お前が一緒に入るっつってんのに覗くわきゃねーだろばーかばーか!! 後が怖いわ!!」


「……………ッッ…」



 俺の訴えが聞こえたのか去って行く足音がピタリと止まり、それからダンダンダンッッ、と地団駄のような確実に床にダメージ入りそうな勢いの音が戻ってきた。



「な、なんだよ怒ったのか? いや覗かないって言ってんだから良くね!?」


「………………ふんッ……!!」



 で、ちょっとの間扉の前で立ち止まっていたのだが、結局何もせずに戻って行った……地団駄で。


 なんなの。










 ◇◆◇リオナ視点◇◆◇




 今日は仕事でお屋敷を空けていた若旦那様……アイツが数日振りに戻るという事で、いつもよりも気合いをいれて出迎えるつもりだった。


 せっかくだからといつもよりも腕によりを掛けて、アイツの好物である料理を作ったり、留守中もキチンとやっていたと思って貰えるように普段は手を入れない場所まで掃除をしたり。


 疲れて戻って来るだろうからと、事前にお風呂の用意をしていたりとか、思い付く限りの事を済ませて使用人として恥ずかしくない状態で帰りを待っていたのだ。


 最近はようやくひとりでお屋敷の仕事をこなすのにも慣れて、忙しいけれどさして辛いとも思わずにやれている。そういう姿を見せるのも大事かなと、ちょっと思ってたのもある。


 そして、帰宅予定の時間を少し遅れているのかアイツが帰って来ないので、すこしそわそわしながら待ちぼうけしていた。


 やる事も全て終わって手透きで、ただ待っているのに飽きはじめて、余ってしまった林檎をつまみ食いしようと手に取ったその時だ。玄関がゆっくりと開く音が聞こえて来たのは。


 その時はなんでそんなこっそりと、帰宅がバレないように開いたりするのか分からなかったけれど、向かった先の玄関にアイツと、それともうひとり居る事に気付いてそれに察した。


 気まずそうにそっぽを向いているアイツと、オドオドした態度で視線をさまよわせているチビッ子。


 それを見た瞬間、手に持ったままだった林檎が何故か弾け飛んだ。 力入れたつもりないのに。




 ◇◆◇



 アイツを空き部屋に閉じ込めた後、残してあったあたしの子供の頃の服を引っ張りだして、浴場で待っている筈のチビッ子の所へ戻る。


 自分で言うのもあれだが、あたしは今物凄く機嫌が悪い。


 ここ最近は子供じゃないんだし物に八つ当たりなんかしていなかったのについ足に力が入って、床に穴が一ヶ所開いてしまった。 どうしよう。



「…………はぁ……」



 床を踏み抜いてしまったのは反省して後ほど直すとして、今は急いで浴場へと向かおう。 あのソフィというチビッ子を洗わねばならないのだ。

 無性に腹が立つのだが、ここの主人はアイツだし、アイツが一緒に住まわせると言うのなら従うのが使用人の務めだ。



「……ぁ」


「ちゃんと待っていたのですね」



 浴場の扉の前で律儀に待っていたチビッ子。 どうやらかなり従順な性格なようで、逃げ出すとかは考えなかったらしい。


 通常、奴隷身分の者は首や腕、足の何処かに枷を付けられている。 でもこのチビッ子についてはアイツは買ってすぐに枷を外したようで、僅かに首と手首に痣が浮き出てはいるけど、拘束する道具には縛られていない。


 まあ、ガチガチに拘束された状態で連れてきていたら内心軽蔑していたかもしれないから、これで良いのだけれど。



「さあ、入りましょうか」


「あの、ご主人さまは?」


「閉じ込めて来ました」


「へっ?」


「良いですか? アイツ……じゃなくて、若旦那様は変態なんです、ほんっっっっとに、どうしようも無いほどド変態なんです」


「は、はあ……」



 とりあえず、一緒に暮らすと言うのなら、これだけは最初に伝えなくてはいけない筈だ。 絶対にったら絶対に。


 いまいち理解出来ないのかキョトンとしているが、ちゃんと理解させなくてはいけない。


 ……こんな小さい子供なんか手ぇ出そうものならホントどうしてくれようかホントありえない何を考えてんのあのバカは!!



「……ともかく!! お風呂入りながらしっかり教えてあげます、絶対に変な事されそうになったらちゃんと抵抗したり助け呼んだりするんですからね?」


「えーと……はい……」


「よし、それじゃ脱いで下さい、洗っちゃいますから」


「……あ、あの、自分で出来ます……子供じゃ無いですから……」


「はい?」


 脱衣室でぼろっちい布切れを脱がそうと、手を出したら何故か頑なに拒否をされ、どういう意味なのか自分は子供じゃないとか言い出すチビッ子。


 いや、子供じゃないの、どうみても。



「……?……子供扱いし過ぎました? それなら謝りますけど、恥ずかしがらなくても良いですよ?」


「いや、恥ずかしいのはそうですけれど……一応これでも成人して……」


「はい? ……いや、大人ぶりたい年頃なんでしょうけど、十二歳ぐらいですよね?」


「十七歳です……」


「え?」


「だから、わたしは十七歳なんですってば、確かに小さいですけど成人してますっ!!」




 え、同い年なの? このチビッ子。





◇◆◇アレク視点◇◆◇

 



「お待たせしました、もう良いですよ」


「ああそう……」



 リオナとソフィちゃんが入浴を終えたようで、俺はようやく薄ら寒い空き部屋から解放された。


 殺風景でいて、何処かに経年劣化による亀裂が出来ているのであろう事を伝える隙間風に身を震わせていた俺と違い、リオナは湯上がりでポカポカしてそうな雰囲気で姿を見せた。


 ちくしょう無駄に色っぽい気配漂わせやがって。



「…………」


「……な、なんですか? 見ないで下さい」



 コイツはコイツで無茶苦茶美人である。 やや童顔ではあるものの、キリッとした表情をしているとどっちが歳上なのか分からなくなる程に色気と整った造りの顔が映える。

 しかもスタイルは抜群だ。俺は他にこれほど男が群がりそうなボンッキュッボンッを知らない。


 敢えて言おう、魔性(ドスケベボディ)であると。


 まあ、俺には関係ないが。



「風呂入るわ、食事の用意よろしく。 人数ひとり増えちゃったけど平気?」


「え、ああ、はい平気ですけど……」


「なら良いや、ソフィちゃんは?」


「着替えさせた後、私の部屋で待たせてありますけど……」


「ふーん? そんで、何か問題あった? 仲良くやれそう?」


「えと、大丈夫……かな?」


「そ、なら良かった、最初ぎこちなかったからちょっと心配だったんだよね」



 いきなり新入り連れて来たら怒るんじゃないかとは予想はしていたのだが、リオナの反応は想像以上だったのが現実である。


 やはりあれか、ロリコンは死ねよと女性ならば言うのだろうか。


 だよね、知ってた。 でも仕方がないじゃないか、かわいかったんだもの。



「あ……ごめんなさい、悪い子じゃないのは分かりましたからそれも大丈夫なんですけど……ええと……」


「うん? 何か問題あった?」



 何かつっかえるように言い淀むリオナに疑問を感じたので聞いてみる。 はて、問題無いと言いつつ何か問題があるんでしょうかね?



「問題なのか問題にならない子だったのか、なんというか、えーと……」


「はっきりしないな、ホントになんだよ?」


「……ひとつ聞きますけど、どういう理由であの子を?」


「…………言わないとダメ? それ」



 理由はひとつしかないよ? 一目見た瞬間に運命感じちゃったからだよ?


 でもさ、そういう感情をさ、人に言うの恥ずかしいじゃないか。 出来ればそっとしておいて欲しい。



「別になんだっていいでしょ」


「言えない理由が?」


「人の尊厳に関わる重要な理由がございます」


「…………」


「なんで睨むのさ」



 そこまで知りたい事かねえ? そんな弱い生物なら視線だけで殺せるような威圧感を出すのは止めて欲しい。

 俺は知ってるんだぞ、お前とバッタリ遭遇したネズミがその殺意の視線を受けて死んだふりをしたのを。


 そんなもん人に向けちゃいけません、おしっこちびったらどうする、パンツ洗うのお前だぞ。



「……もう良いです、分かりました」


「え、ああうん、そお?」



 一体なんなのか。別にお前に迷惑は掛けんぞ。

 仕事は増えるかもしれないがソフィちゃんにも使用人の仕事させるつもりだし、大変なのは教えてる間だけよ? たぶん。


 かなり久しぶりに見た気がするリオナの膨れっ面なのだが、事情があれだし膨れられても困る。


 リオナ不機嫌気味に調理場の方へ向かって行き、俺は釈然としないまま浴場へと向かうのだった。


 まあそのうち機嫌直るだろう。


 それより今は風呂である。 女の子二人の残り湯なのだ。無駄に興奮してしまいそうだよね。はっはっはっはっ!!




 ◇◆◇




 中々に最高な気分でひとっ風呂浴びた後、俺は食堂へと向かった。


 けっこう遅い時刻の夕食になってしまったが、今日はまあ仕方がないだろう。 普段はランプの油代が云々とリオナが愚痴るので早めに夕食は済ませてしまうのだが、遅くなったからと言って食事抜きという訳にもいくまい、準備は出来てるだろうし。



「ご主人さま」


「おぉう?」



 食堂で出迎えてくれたのは、髪や肌の汚れを落とし、清潔な服へと着替えたソフィちゃんだった。



 かわいい。



 いや、一言で表すのは不遜なのではと思いたくなる程に愛らしい姿をしているのだが、今の俺の心境でソフィちゃんの可愛さを表現しようとしたらきっと痛くて臭いポエミーな表現しか出来ないので割愛しておく。


 絶対にキミに捧げる愛の唄(ラブソング)とか言って即興で作詞作曲しちゃう。


 あれは地雷だ。



 それはともかく現在ソフィちゃんは、リオナの子供の頃のお下がりを着ているようだ。

 見覚えのある簡素な白いワンピースと、同じく白い生地のカーディガンを羽織っている。 長い銀髪は邪魔にならないように後ろで緩く編まれてまとめられており、ちょっと大人しめな背伸びファッションである。


 実にイイ、抱きしめられて背中ポンポンされたい。



「余所行きの服しか残ってなくて、これを着て貰いました」


「ん、ああ、そうか」



 テーブルに料理を配膳していたリオナがそう説明し、かわいいけど普段着ではないなと感じていた疑問を解決してくれる。



「……ホントによろしかったのでしょうか?」


「ああ、リオナが着るように渡したなら問題無いよ、それは彼女の服だから」


「その、ありがとうございます」


「お礼はしなくて良いですよ、当然の事ですから」


「……はい」


「うんうん、そうだね服ぐらい着るのは当たり前だ、まさかすっぽんぽんでうろつかれる訳にもいかないし、ほら、アレだ、きっとパンツもリオナとはサイズ合わないから履けてなぶべべべべべべべっ!?」


「……黙って下さい変態」


「……え、あのリオナさん!?」


「あがががががががあぎょが、あぎょがみひみひいっひぇう!?」



 反応出来ない早さで口を塞ぐように片手で頬を掴まれ強制的に黙らされた。 顎がミシミシと嫌な音を立てて悲鳴を上げるがコイツの握力は尋常じゃないのでなすがままである。



「……ふんっ!!」


「ぐふっ」


「ご、ご主人さま!!」



 数十秒の握撃の末に解放されるも、苦痛と顎が砕かれるんじゃないかという恐怖により崩れ落ちる俺。


 床に顔をへばりつかせるようにうずくまり痛みが去って行くまでの時間を耐えるのだ。 あー怖かった、うっかり心の声が漏れてしまった。


 でもパンツ履いてるかどうかは気になるじゃないか、俺悪くないもん。



「だ、大丈夫ですか?」



 床に倒れ伏した俺に、ソフィちゃんは気遣うように寄り添ってくれた。

 なんて良い子で優しい子なんだ、もうちょい頭の方にしゃがみこんで欲しいな膝下ちょいの長さなワンピースの都合で真実と真理が垣間見れそう。



「大丈夫だいじょーぶ、この程度何時もの事だし」


「は、はあ……」


「………………」



 だがまあ残念な事に魅惑のヒラヒラはガードが堅かった。

 アングル的に絶対に覗かれない位置に座り込んで来てたし、そのちっちゃいおてては隙間をきっちり押さえておられる。 残念無念。



「……えと、けっこう痛そうだったんですけど」


「そう? でもまあ気にしなくていいよ、子供の頃からこんなだし」


「そ、そうですか」


「あなたも変な事されたり言われたりしたら遠慮無く一発入れて良いですよ」


「ええ……?」



 止めたまえ、ソフィちゃんがお前みたいな野生の戦士になったらどうするつもりだ。



「……はあ、やれやれ」



 とりあえず秘密の花園を覗きこむのが不可能なので、残念だが諦めて立ち上がって、自分の席へと着席する。



「いい加減食事にしよう、二人とも席について」


「はい」


「あ、えと、わたしもでしょうか?」


「当たり前じゃん、ウチは家主も使用人も食事の場は同じだよ、キミもそれは同じ」


「……えと、分かりました」



 他はこんな食卓なんてまずやっていないだろうが、そんな事は俺は知らないのでこれで良いのだ。

 だいたいだ、うちは使用人もリオナひとりだが家系の者も俺ひとりなのだ。 つまり家の者とその下の使用人とで食卓を別けると俺がひとりになってしまう。


 なにそれ寂しくて死んじゃう、無理。



「そんな事よりせっかく作って貰えてるんだ、早く食べよう」


「は、はいっ」


「お祈りしてからですよ、若旦那様」


「わかってるよ」



 配膳された食事を前に、手を組んで目を瞑る。


「…………」

「…………」

「…………」



 この辺りに広く布教されてる聖母教のしきたりだが、まあみんなやってるから合わせてるぐらいにしか俺は思ってない。


 神様とか信じてないからな。 無宗教派のリアリストなのだよ、俺は。




◇◆◇





 



 時は夜分、行うは団欒なり。 食事の時間は楽しく食べて、他愛のない話をするのが人生楽しむ秘訣ってな。



「見た目通り少食だな、もっと遠慮無く食べていいんだけど」


「え、えと……元からこのぐらいしか食べられなくて」



 ソフィちゃんの食べた量を見れば、俺のだいたい半分ぐらいだ。 椀に一杯のシチューとパンがひとつ、それと生野菜のサラダ。


 いや女の子ならこんなもんなのだろうか? いやしかしリオナを見ると……。



「なんでしょうか」


「…………いや」



 シチュー大盛り三杯目、パン六個、サラダたくさん。 うん、食い過ぎだコイツ、なんで男の俺の倍以上食えんのさ。


 まあ、今までも良く食うなコイツとは思ってたよ? でも比べる対象が居ると……うむ。



「……よく太らんなお前」


「…………!!」


「あの、ご主人さま……」


「ん?」



 何かまずかっただろうか。 別に太っているとは言っていない、それだけの量を食べて尚、余計な所に肉が付かない事をむしろ称賛するつもりで言ったのだが。



「…………やっぱり小さい方が良いんですか」


「なにが?」


「えと、あの……」


「なに、どしたのさ」


「あ、あの、気にしているようなのでそういう事は……」


「……気にしてる? ああ……」



 身長か、こそっとソフィちゃんが指摘してくれたので察する事が出来た。 確かにリオナは背が高い、並んで立って背比べをすると、俺の頭頂部がヤツの鼻辺りに来る。


 そのくせ並んで座るとな、目線がピッタリ合うんだぜ。 くやしい。


 魔法の厚底靴(シークレットブーツ)の購入を検討せねばなるまい。


 だが俺が低身長なのとリオナの魅惑の高身長(グラマラスボディ)は関係あるまい。 別に気にする事じゃなかろうに。



「別にデカいのはデカいで良いと思うけど、見栄え的にはそっちの方が映えるだろうし」


「……スケベ」


「なんでっ!? あ、もしかして身長じゃなくてむn……」


「違います!!」


「……えと」



 なんだおっぱいの話だったのか、そんな隠すように両手で押さえなくてもなんもしないよ。 だって殴るじゃん。


 ただまあ、言わせてもらうなら俺は巨乳もイケる口よ? おっぱいに貴賤は存在しないのだ。



「まあふざけるのはこれぐらいにしておいて」


「えっ」


「ソフィはもう少し食べようか? 胸云々は別にどうでもいいが成長期は栄養取らねば」


「えと……あの……」


「ど、どうでも……」



 変態とかスケベとか罵る癖に何を落ち込むのかコイツは。 どうすりゃ良いのさ。


 まあいいや、それより今は食事だ、楽しい団欒を享受するのだ。



「あの、わたし成長期はほとんど終わっていると思うんでそこまで心配されなくても……」


「うん? いや、何を言ってんの」


「彼女、私と同い年ですよ、十七歳だそうです」


「…………うん?」


「成人年齢はこの国も十五歳ですよね? でしたらわたし、成人してます」


「なんと」



 ……マジで? 幼い女の子かと思ったら幼い風貌の女性だったと?



「……なん……なんだと……そんなバカな……」


「……若旦那様?」


「えーと……」



 そんなの、そんなの、犯罪じゃないって事じゃないか。


 いやね? 自分でも本当に良いのかとは思っていたのよ、児童、童女、幼女、ロリータ、言い方は数あれど、本来ならば手を出したらいけない可愛くても愛でるのみに留めなくてはいけない存在じゃないですか。

 まあ奴隷に関してはそういう未成年保護の云々は無視されているのが現状なんですが、俺の場合は愛が重要なのでその辺りどうしようかと密かに悩んでいたりしたもので、ええ。


 まあ、最終的に育つまで数年待ってそれから本番(ファイナル)行為(ミッション)へ至ろうかと考えていたのですが、待つ必要が無い!! 即時発動可能と!!


 素晴らしい。 真性ロリ野郎からすれば偽ロリなど評価に値しないとか言いそうですが、わたしはこう言える。


 かわいいならなんでもよくね? と。



「…………」


「…………」


「……ん? なに、なんかドン引きしてない?」


「…………い、いえ……」


「ものすごく気持ち悪いにやけ顔してますよ」


「あらやだ」



 どうやら内心の喜びが顔に表れていたらしい。 うん、リオナもそうだが、ソフィちゃんまで口の端が僅かにひきつっておられる。



 なんてこったい。








 ◇◆◇リオナ視点◇◆◇




「よいしょ……っと」



 食事の後、後片付けをしてからチビッ子……じゃなくて、ソフィを連れて自室としてあてがわれている使用人室へと戻って来た。


 一人部屋を初日から与えるのも不安だし、アイツが妙にイヤらしい目付きでチラチラ視てたりしたので、同室とすることにしたのだ。


 勿論文句を言われたが黙らせた。 殴ってはいない、ちょっと睨んだだけだ。



「ふう……空いているベッド処分していなくて良かったです、ちょっと重かったですけど」


「……すごい重そうなベッドひとりで担いでましたね、ちょっとなんだ……」


「このぐらいは平気ですけど?」


「……力持ちですね」



 ……そこまで驚く事だろうか? 確かに他の人よりはちょっと力があるほうだけれど。


 ちょっと……いや、けっこうあるのかな? 散々アイツにバカにされてはいたけれど、流石にもっと力持ちの人とかは居るはず……会った事ないけど。



「えーと、お屋敷のお仕事のお手伝いをするように聞かされていますけど……わたし、体力にはあんまり自信が……」


「平気ですよ? 基本的に女性でもこなせる仕事しか任されていませんし」


「例えばどんな事ですか?」


「例えば? えと、そうですね……料理、洗濯、お掃除……」


「はい、はい」


「お買い物に簡単な縫い物とか、あと薪割り……あ、林から木の伐採も斧でするか……それと、えーと」


「はい、はい、えっ……?」


「あとは馬の世話とか……あっ、それからお屋敷の傷んでる所の修繕とか」


「……おかしいところたくさんあるんですけど」


「え、そうなの……ごほんっ、そうなのですか?」



 ダメ出しされてしまった。 どれが変だったのだろうか。



「あの、木こりのお仕事とか、大工さんのお仕事とかは普通女性はやらないで専門職の男性が行うかと」


「えー、でも自分でやった方が安く済みますし」


「……確かに自分で出来るならそうでしょうけど」



 実際、毎日使う薪なんか購入していると馬鹿にならない出費だし、修繕についても大工工事の職人さんを呼ぶとお金払わなくちゃいけないのだ。

 まあでも大工さんに限ってはどうしようもない損傷の場合は泣く泣く呼ぶのだが。 あ、明日踏み抜いた床を修繕しなくちゃ……。



「それ、ご主人さまがリオナさんにやるように命じているんですか?」


「え、えと……言われた事はないですよ? 若旦那様はお屋敷の維持管理については私に丸投げなので」



 実は薪代も貰っているのだが節約してへそくりしている。

 二人で暮らしながらあたしに給金支払うぐらいはなんとかして貰っているし、一応アイツが自分の商会を立ち上げているのは知っている。

 詳しい事までは教えて貰っていないけど、なんとなく余裕があるようには見えないのだ。


 だから節約出来る所は節約しておきたい。


 ……この子を買って来た事については、文句は言わないつもりだが金銭的には非常に不安だったりする。


 最悪、二年間コツコツ貯めたへそくりを生活費にまわさなくてはいけないかもしれない……不安だ、でも財政的にどうなっているのか聞くのは怖い、お先真っ暗だったらどうしよう。


「ともかく私が自主的に仕事は行っているので、あなたも教え終わったらそのような感じで」


「え、はい……なんというか、ずいぶん自由ですね……」


「若旦那様は本来、奴隷の使役に関しては大嫌いですから、あなたは……」


「…………」



 ……まあ、良いか。 あまり考えたくない。



「……明日、仕事の前に街へ行きましょうか、使用人用の服を仕立てて貰わなくてはいけないですし」


「えと、はい、分かりましたリオナさん」



 一応、子供の頃に来ていた使用人用の服が無いか確認したのだけれど、ボロボロになるまで着ていたものしか無かったので諦めた。 仕事服なので擦りきれてしまったやつではすぐに破けてしまう。



「それと、私の事はリオナで良いですよ? 同い年なのですし」


「……その、良いんですか?」


「もちろん、変に畏まられても困りますから」


「それじゃあ、えと……リオナ、ありがとう」


「はい、よろしくお願いしますね、ソフィ」



 それからしばらく話をしてから、あたしとソフィはベッドに入り眠りに付いた。



 色々思う事はあるけれど、初めて同性の友達が出来た気がして、ちょっとうれしかった。





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