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売られてた奴隷少女にガチ惚れして衝動買いしてしまった  作者: しょー
1章『青年商人と奴隷の少女とメイドさん』
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プロローグ『衝動買いから始まる恋愛事情』




 とある王国の西方にある地方都市に俺は居る。 とはいえ街の中に住んでいる訳では無く、街の郊外の林の中に屋敷があって、そこに使用人(メイド)と共に住んでいる訳なのだが。



「……あの、何処へ……」



 俺の後ろを歩く者から声が掛かる。 その声は幼く、聞き心地の良い音色で俺の耳と心を蕩けさせる。

 軽やかでいて甘く、もっと聴きたいと切なくなるほどに身体を芯から痺れさせるその声の主は、先程俺が大枚はたいて購入した“奴隷”の声だ。


 その美しい声には戸惑いと、不安が入り交じり悲哀というアレンジを加えて更に俺の心を刺激するのだ。



「黙って付いて来なさい」


「……はい」



 そんな悲しげな声を出さないで欲しい。 勘違いしないで頂きたいのだが、俺は断じてこの娘に酷い真似をしたくて買った訳では無い。


 彼女は奴隷だ。 この国では奴隷の流通が盛んであり、人口の約三割がこの娘のような奴隷となる。


 用途は様々だ、奴隷という存在は人権を認められておらず、まさしく道具として扱われるものだ。 エロい事をする対象として、様々な労働力として、戦争の道具として、エロい事をする対象として。



「……………………」


「…………ぅ……」



 大事な事なので二回認識してから俺は立ち止まり、奴隷の少女の方へ振り向く。



 長い銀髪と華奢で痩せた身体。 身長は低く、顔立ちは幼いが目鼻立ちは間違い無く端麗であり、魅力的だ。



「…………えと……」



 そして何よりもその瞳。


 俺はこの幼い少女の、奴隷となっていても尚、色褪せず輝く宝石のような紫の瞳に魅了されたのだ。



 そう、一目惚れだ。



 マジのガチの一目惚れ、つまりガチ惚れである。


 偶然見掛けた幼い女の子の奴隷にガチ惚れして衝動買いしてしまったのだ。


 後先なんぞ考えていない、まさしく衝動買いで女の子買っちまったバカ野郎が俺だ。


 仕方がないじゃないか、可愛かったんだもの!!


 奴隷の仕事、役割というのは多々あるとは先程述べたな? ならばだ、あれだよ諸君、恋愛事だって役割として入っても良いとは思わんかね?


 ……え、思わない? ああそう、俺は否定なんかされても関係ないがな!!


 そうさ関係ないね、俺はこの娘をめちゃくちゃに愛したいと思っているのだ、めちゃくちゃに愛してめちゃくちゃに愛されてめちゃめちゃになっちゃうのを希望しているのだ。


 年齢? ああ、奴隷にそういうの関係ないので、まあ確認取ってもいないのですけどもね?


 ともかくですよ、俺はこの子と添い遂げようと思います。 この子とのイチャイチャの果てに幸せ家族計画が待っています。


 ただし只の肉便器、愛の無いエロにはわたくし興味ございません。 いちゃラブ、ラブえっち、だいしゅき子作り以外は認められませんのですよ。

  凌辱とか強姦とか強権発動命令ックスとか要らないんですよ。 童貞なんで志高いんですよ俺。



「……ふん、もう少し掛かる、黙って付いて来なさい」


「は、はい…………わかりました……」



 さて、なんで心の中はこんなにもこの娘への愛欲に満たされているというのにこんな冷淡な態度を取っているかと言うとね、恥ずかしいからに決まっている。


 アレだ、緊張し過ぎて言葉がまともに出て来ないの。



「…………」


「………………」



 そんな脅えたように震えないて欲しい。

 大丈夫よ?  俺は誠実で真摯な紳士だよ? 食べたりしないから安心して? 食べてって乞われたら喜び勇んでいただきますしちゃうけど。 むしろそう言って貰えるように努力するんだけど。


 まあ怖がるのも仕方がないと言えば仕方がない。 だって俺は奴隷を購入するような奴なのだ、そんな奴が内心を必死に隠すようにしかめっ面で睨みつけ、全身舐め回すように観察してくるのだ。

 さぞ怖かろう、俺の不器用フェイスが全て悪い、ごめんよ怖がらせて。



「…………」


「…………」



 そんな感じでビビられビビりつつ無言で道を歩いて向かうは我が家なり。 人の行き交いが盛んな道を外れて、過疎で寂れた道へ進んで郊外へ。


 街を囲う外壁を門から抜けて、別の街や村へと向かう街道を更に外れて私道へと、俺以外はほとんど使わない屋敷への道に入る。



「……ああ、そうだ」


「……?」



 色々とテンパって大事な事を聞くのを忘れていたし、伝えるのを忘れていた。


 こんな道の途中で聞くのも変かも知れないが、思い至ったのならすぐに済ませておいてしまおう。



「キミの名前は? 聞くのを忘れていた」


「あ、はい……えと……」



 そのかわいらしい唇から紡がれる名をしっかりと心に刻みつける為、俺はしっかりと向き直り、真っ直ぐに奴隷の少女を見詰めながら問い掛けた。



「……ソフィです、ソフィア・マッケンジー」


「そうか、俺はアレク……アレクシス・カウフマン、一応商人やってる」


「はい、よろしくお願いします、ご主人さま」


 自己紹介を終えて、ぺこりとおじぎをする奴隷の少女ソフィ。


 その仕草の愛らしさに俺の魂は慟哭するしか無かった。



 んあああああぁぁぁあああぁぁぁあああぁぁぁあああぁぁぁあああぁぁぁあああぁぁぁあああ!!!!

  かぁぁぁぁぁわぁぁぁぁぁぁいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉッッ!!!!



「…………さあ、もう少しだ、さっさと行こう」


「あ……はい……」



 ……と、そんな風に内心吹き荒れる喜びの嵐を他所に、俺は努めてクールな表情を取り繕って再び歩き出した。







 ◇◆◇





「どういう事ですか?」



 自宅である屋敷へと、奴隷の少女ソフィと共に帰宅した俺は、玄関を開いてすぐの所で出迎えの挨拶をしに来た使用人(メイド)のリオナが放った言葉に硬直した。


 もっと詳しく言うと、殺気じみた気配と撲殺を狙っていそうな眼力と、右手に持っている握り潰されてぐしゃっとなっている林檎を目の当たりにして怯えている。


 怖いわーうちのメイドさんめっちゃ怖いわー。



「その子誰ですか、若旦那様?」


「……いや、そのぅ……」


「……えと……?」



 ほら、威嚇するからソフィちゃんが困惑しちゃってるじゃないか怖いから怒るの止めてくれません?



「……えへっ」


「笑ってないで教えて下さい」



 ……と心の中の毅然とした言葉が口から出てくれればどんなに良いことか。 俺に出来たのは卑屈に笑みを浮かべるのみでこんなもん相手の神経を逆撫でするだけだろう。


 だが待って欲しい、俺はリオナが呼んだように若旦那……いや本来は既に先代である糞親父は他界しているので正式にはまごうことなく旦那様なのだが、その辺りの呼び方には別にツッコミを入れるつもりは無いし実際まだ二十歳なので俺ぜんぜん若いし、それで構わないのだが、どちらにせよ俺はリオナの主人である。


 つまり本来ならばこんな殺気まみれの雰囲気で問い質される謂れはない筈なのだ。


 まったくなんて理不尽だ、おかしいと思わないかね諸君。



「黙っていないで教えて下さい」


「…………」




 まあ、何度も同じ事を繰り返し悪いが敢えて述べよう。


 そんな毅然とした態度が取れるならもっとずっと以前から取っているんだけどねっ!!


 とはいえこのままだんまり決め込んでいても時間の無駄なのでちゃちゃっと説明しよう。


 俺がいかに正当でまっとうで善意に満ちた心暖まる理由で現状に至ったかを、奴隷少女衝動買いの顛末をはっきりと伝えよう!!



「買っちゃった、てへっ」


「……は?」


「…………えと……」


「衝動買いしちゃいました、後悔はしていません反省もしません」


「……………………………」


 言いました。 言い訳なんて致しません、結果こそが重要でありそこに如何なる想いがあったのか、そんな事よりも後悔しているのかしていないのか、反省するのかしないのかが重要なのですよ、ええ。


 結論として俺は誰に何を言われようが決して自身の選択が過ちなどとは思ったりしない所存であり、つまり俺がムカつくならムカつくで構わん。



「お、おおお怒ったって手放さないからなっ!! この子、ソフィは今日からここで暮らしますこれ決定事項!! わかった!? わかったらお互いに挨拶だ!!」



 脚を生まれたての小鹿の如く震わせながらも、意を決して叫んだ俺の言葉を聞いて、ソフィちゃんは戸惑うように視線をさまよわせ、リオナの方はなんか百面相かよとツッコミたくなる程に表情を変化させた後、俯いてからぼそっと挨拶の言葉を呟いた。



「…………畏まりました、えと……ソフィ、ですね、これからよろしくお願いします」


「あ、え……はい、ソフィアです、よろしくお願いしますリオナさん」


「…………」


「……えと……」



 おう、なんかぎこちないんだぜっ!!


  ちょっと心配だが上手く仲良くなってくれると俺は信じてる。 大丈夫、たぶん、きっと。



 ……と言う訳で、商人として働く俺ことアレクシス・カウフマンはメイドちゃんことリオナと、それに加え新入りの同居人な奴隷少女ソフィちゃんとの三人での生活を始める事になったのだ。




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