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売られてた奴隷少女にガチ惚れして衝動買いしてしまった  作者: しょー
1章『青年商人と奴隷の少女とメイドさん』
15/46

1-12『故郷へ』

 


 ◇◆◇ソフィ視点◇◆◇




「……よいしょ」



 わたしは今、ご主人さま……アレクさんのお屋敷を出て、レナータの街までの道を歩いています。 抜け出して来たのは誰にも言っていません。

 言えば止められると思ったし、結局ズルズルといつまでもあのお屋敷に居る事になりそうだったから。


 食べ物と荷物は黙って持ち出して来ました。 ごめんなさい、わかってくれるよね、あの人達なら。 本当にごめんなさい。



「……どれくらいかかるかな? 出来れば馬車……馬が居れば良かったんだけど、そもそも乗れないし」



 わたしの故郷、フォレスタまでは馬車で十日程です。 連れて来られた時にきちんと日数は数えていたし、道のりについてもおおよそは把握しています。

 だから、あとは移動手段だけをどうにか出来れば、辿り着けない場所ではないから。



「………街まで行けば、行商をしてる人達が居るだろうから、その人達に頼んで、北西の方へ乗せて貰おう、そうすれば早く帰れるし」



 国境付近にも小さな村があるのは確認していたので、行商の人が居ないという事は無いはずでした。 だから、そういう人をまずは探そうと、街へ向かっていたのだけど。



「……ふぇ?」



 歩いてきた方角、つまりお屋敷の方から、パカパカと軽快な馬の走る音と嘶き、それとやけに響く高笑いが……。



「はーっはっはっはっ!! どうしたのだ娘よ!!」


「ヒヒーン!!」


「ふあっ!?」



 先程、ご主じ……アレクさんと話していたこの国の変た……じゃない、王子さまがご自身の白馬にまたがって駆け寄って来ました。



「そんな遠足のような出で立ちで何処へ行くと言うのだ娘よ!! ピクニックならば幼子は保護者同伴が絶対必要であろう!!」


「ぴ、ピクニックじゃありません!! 帰る途中なんです!!」



 死んじゃっても構わないぐらいの決意で飛び出して来た事をピクニックなんて言われて、ちょっとムッと来てしまいました。

 わたしは帰る為に飛び出して来たのに、事情を知っている人なんだから、察してくれればいいのに。



「ほう、帰る途中か!! ならば方向が違うぞ娘よ、そなたの帰る所はあの屋敷であろう!?」


「ち、違います!! わたしの家はこっちですから!!」



 相手にしていられないので、駆け足で王子さまから離れようとするけど、やっぱり馬に乗っているし、普通に隣を早足で並ばれちゃいました。

 たぶん馬に乗っていなくても追い付かれてますけどね。 わたし、足は遅いから。



「ふむ? つまり国へ帰ると言うのか」



 逃げても無駄なので、走るのをやめて、歩きながら王子さまの問い掛けに答えます。


「……そうです」


「何も残っておらぬぞ、行くだけ無駄だ」



 ……どうしてそんな事言うんだろう。



「そんなの信じません」



 嫌な事ばっかり言って、わたしが悲しむのを楽しんでいるのかと思ってしまう。



「ふむ、そうか、自ら確かめねば信じぬと言うことか、よし」


「へっ?」



 横を並んで馬を操っていた王子さまは突然なにか納得したような顔をしたかと思えば、馬の上に乗ったまま、わたしを器用に掴んで……こう、ポイって感じで馬の背中へと投げて載せました。


 乗せられたじゃなくて、載せられたです。 すごく雑に扱われた筈なのに何故かちっとも痛くなかったんですけど、どうやったんですかホントに。



「振り落とされたらいかんな、縛っておこう」


「えっ、やっ!?」



 簀巻きにされました。 なんて早業……。




「それに馬は揺れるので舌を噛むかも知れぬ、猿ぐつわをしておこう」


「むーっ!? うーーっ!?」



 喋れないように布で口を縛られました。 これ、誘拐ですよね?



「これで良かろう、では我が愛馬エクストリームリベンジデスファレーナ号よ!! 我が脚となりて駆けよ!! ハイヨーー!!」


「…………………………………ヒヒン」


「むーっ!?」



 わたしは、訳が分からない内に荷物のように載せられて、ご主じ……アレクさんのお屋敷まで連れ戻されて行きました。






 ◇◆◇アレク視点◇◆◇





「…………ソフィちゃんが居ない? 本当か?」


「……えと、はい、食事の準備中までは居たのですけれど、それからは何処にも」



 時刻は夕刻。 リュカ王子との話し合いとソフィちゃんに事情を盗み聞きされてしまってから暫くしてからの事だ。


 あの後、ソフィちゃんの事は心配だったのだが、傍目からは特におかしい所は見あたらないと感じ、すぐにおかしな行動はしないだろうと判断して、そっとしておいたのが不味かったのかもしれない。



「…………確かに何処にも居ないんだな?」


「あの、これが部屋に置いてありまして、今日は二人で身に付けていたのですけど」


「俺が土産で買った髪留めか、そうか……」



 リオナが手に持って見せてきた髪留めは、昨日俺がフリッツから帰宅した際に土産として渡した物だ。

 今日の朝、二人して身に付けているのを確認してほくそ笑んでいたので覚えている。 気に入っていたように見えていたのだが、それを外して姿を眩ますとはどういう訳があるのか、考えなくとも分かる。



「……他に消えていた物とか、あったか?」


「まだ調べていないので、それはなんとも」


「急いで調べてくれ、俺は外を見てくる」


「は、はいっ」



 リオナに色々と無くなっているものを調べさせて、俺は玄関へと向かう。 馬鹿で無謀な考えだと思うが、もし故郷へ戻ろうとするなら手荷物ぐらいは失敬しようとすると思ったからだ。 俺ならそうする。




「………さて、どっちへ行ったか……冷静に考えられるなら街へまず行くだろうが」



 とはいえ、俺はソフィちゃんの事はよく知らないのだ。 一緒に住み始めたと言っても俺は外出ばかりだったし、ソフィちゃんがこの屋敷に来てから、それほど長い訳ではない。


 そしてその内、俺が接していられた時間はかなり短い。 リオナはずっと付きっきりだったわけだから仲良くなっていてもおかしくはないが。


 俺からすれば、これからだったのだ。


 後始末に追われて時間が割けなかったが、これからゆっくり仲良くなって、それでいて、どうにか傷付かないようにゆっくり事実を受け入れる準備をしてもらうつもりだった。


 何もかもまだ早かったのだ。 心に出来た傷はそう簡単には癒えない。 リオナがそうであるように。



 外に出て、街の方角へと目を向ける。 今すぐ追い掛ければ間に合うかと考え、ディモティへ乗って行こうと馬屋へ向かおうとしたのだが…………。



「…………ん? 蹄の音とバカっぽい高笑いが……」



 何処からともなく、リュカ王子の高笑いと、馬の嘶きと蹄が駆ける音が聞こえて来た。


 そういえばあのバカ王子、いつの間にか居なかったな、何処にいってたんだ。




「はーっはっはっはっ!! 我が友よ、少女を捕まえて来たぞ!!」



「むーっ!? うーーっ!?」


「なにしてんのあんたぁーーーー!?!?」



 白馬に乗ったバカ王子は、何故かソフィちゃんを簀巻きにして戻ってきた。



「ふっ……流石と思わぬか? こんな幼子だとしても女の行いを理解してこうして虜にしてしまうのだからな」



「虜が字面そのものだよ!! 恋の虜とかでなく普通に捕縛してるよ!! なんで縛ってんの!?」


「……むー……」



 そんなきらめく金髪をファサァって払いながらアホな事言わないで欲しい。 何処からツッコミ入れたら良いのかわかんねーよこのお方。




「馬は素人には危険なのでな、そんな事より我が友よ、この娘、暫し預かるぞ」


「は?」



 なにいってんのこのお方は、見た目通り誘拐か?



「心配は要らぬ、少々遠出になるが必ず連れて帰るからな」


「ちょ……待ってくださいよ、どういう……」


「故郷を見るまでは信じぬと言うのでな、確認させる」



 訳が分からないアホな行動かと思いきや、明白な理由があったらしい。

 簀巻きにしたのはともかく、飛び出して行ったソフィちゃんを見掛けたか何かで、追い掛けて連れ戻してくれたのだ。

 そして、ソフィちゃんの意思も汲み取って、彼女を自分が連れて行ってやると、そうリュカ王子は言っているのだ。


「…………ソフィちゃん」


「…………」



 何も告げずに飛び出したソフィちゃん。 今は荷物のように白馬のお尻辺りに積載され、悲しそうに目を伏せている。


 ……うん、そろそろほどいて降ろして上げて欲しい。 荷物扱いは女の子的にダメだろうに。



「分かっておる我が友よ、そなたは私がこの娘をたらしこみ横取りするのを恐れておるのだろう? 私は素晴らしく美形だからな」


「その逆ならすげぇ心配なんですが。 というか降ろしてあげて」


「安心しろ我が友よ!! 我が純潔はセクシーなお姉様に色々手解きされながらと決めている!!」


「聞いてねえよ!?」


「故にこの娘は守備範囲外だ、五年後は分からぬがな!! ふはははははは!!」


「話を聞いて!! 泣きそうになってるから降ろして上げてってばぁ!!」


「…………むうー……」


「では我が友よ、暫しの別れだ!! 行くぞ我が愛馬アインシュピーゲルディザスター号よ!! 目指すは広野の果て、地平線の彼方だ!!」


「……ヒン」


「だあああああ!! 話を聞けバカ王子!! ソフィちゃんをちゃんと扱え勝手に連れてくな!! どうしても連れてくなら俺も行くから待ってくれってば!?」


「む?」


「……んん……むー?」



 自分のペースでどんどん話を進めていくバカ王子だったが、俺が怒鳴ってようやく聞く耳を持ったらしい。



「我が友よ、そなたもついて来るのか」


「……はい、任せっきりは不安ですし、こうなった以上、ソフィちゃんは意地でも国へ戻ろうとするだろうし」


「…………」



 動きが止まった白馬から、ソフィちゃんをほどいて地面に降ろしてあげる。 勢いで言ったが、正直これしか選択肢は無いだろう。


「……ぷは……あ、あの……」


「いいよ何も言わなくて、もう確認しに行かないと、全部ダメなんだろ?」


「…………はい、ごめんなさい」


「うん………それでは王子、色々準備しなきゃいけないですし、というか、もう夜になります、出発は改めて明日の朝にしませんか? ソフィちゃんも、それで良い?」


「そうだな、それがよかろう」


「……はい」


「…………よし、ならまずは夕食だ、みんなで食べよう、王子も御一緒に」


「おお、ありがたいな、頂くとしよう」




 ソフィちゃんの故郷、フォレスタへは、日を改めて明日の朝に出発する事に決定し、俺とソフィちゃん、そしてリュカ王子はひとまず屋敷へと戻った。





 そして翌日、リオナに事情を説明してから屋敷を後にする。



「お気をつけて、若旦那様。 それにソフィも、行ってらっしゃいませ」


「悪いな、なるべく早く戻るから留守は頼む」


「はい、大丈夫です」



 ……リオナには屋敷に残って貰った。 往復となるとそこそこ長期間留守にする事になるが、屋敷に誰も居なくなるのは少し問題があったし、リオナにまであまり嫌な風景を見せたくなかったから。

 何かあればモニカにも対応は頼んだので大丈夫な筈だ。



 そして、順調に道を進み十日後、俺達はソフィちゃんの故郷、フォレスタへと足を踏み入れる。




※作中経過時間を間違うという失態(´・ω・`)


ソフィが奴隷になってから一ヶ月←×

ソフィが奴隷になってから半月程←○


該当部分は既に修正致しました、既に読まれていた方、混乱させて申し訳ありませんでした。

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