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転生先は鳥居強右衛門1

私「では代理のモノをそちらへ向かわせますので、彼に現金をお渡しください。失礼します。」


私「私は名も無い役者。『名も無い』と言いいますと、収入の全てがバイトの『自称役者』と思われるかたも多いことかと思われますが、私の場合はそうでは無く。幸いにしまして『役者』としての報酬。それも『弁護士役』のみで生活をすることの出来ています。ただ世間にその名を知られているわけではありません。何故か?それは私が役者としての活動の場が特殊な場所でありまして。具体的に何処なのか?につきましては、ここで申し上げるわけには参りません。この仕事を始めて10年。この仕事が嫌いなわけではありませんが、そろそろ良い意味で。世間に私の名を知って頂きたいものであります。」 


 そんなある日の朝。フト目を覚ました私は、見慣れぬ光景に目を円くするのでありました。

私「なんだこの木造の建物は……。しかもあちらこちらに穴が開いているぞ……。それに私の格好は何だ。薄汚れ、血に染まった鎧に身を包んでいるのではないか!!……時代劇のオーディションに参加した記憶は無いし……。別段ヘマをしたわけでも無い……。仮にヘマをしたとしても……こんな格好になることも無い……。いったいここは何処なのだ?」

天「目を覚ましたか。」

私「お前は誰だ!!」

天「私か……。名乗るようなものではない。ただそなたの願いを叶えてやろうと思ったまでのことよ。」

私「どう言う事だ!?」

天「お前は世間に名を売りたいと考えておろう。」

私「そうであるが。」

天「ただ。今お前がやっていることで世間に名を売ることは望んではいない。」

私「……確かに。」

天「本当は今の関係を清算したいと思っている。だが、それは一筋縄にはいかないこともお前は知っている。」

私(……無言でうなずく)

天「そこで私は今回。お前の望みである『良い意味で世間に名前を売る』チャンスを与えることにした。」

私「どう言う事だ?」

天「お前をこれまでとは全く異なる立場の場所に移し。しかもその移した先のモノが最も光り輝いた場面にお前を転生させることにより、お前を良い意味で後世に名を遺す。絶好の機会を与えることにした。」

私「それは有難い。で。いったい誰に転生したというのだ?」

天「お前が転生した先。それは……。」

私「それは……。」

天「鳥居強右衛門勝商。」

私「……とりいすねえもん……かつあき……?」

天「場所は……長篠。」

私「……ながしの……って、あの鉄砲の……。」

天「時代は戦国。天正3年の5月13日。」

私「……え。もしかして戦いの真っ只中。」

天「左様。」

私「左様って!!城主の奥平が武田家見限って徳川に寝返った報復で取り囲まれた。」

天「そう。まさにその時である。5日前から始まった武田軍の攻城をなんとか凌ぐも、武田軍の火矢により北側の食糧庫が焼かれたまさにその日に今。お前は居るのである。」

私「大ピンチも大ピンチじゃないですか!!」

天「そのピンチがあったからこその鳥居強右衛門である。さあ思う存分世に名を知らしめるのだ!!!」


私「こうして私は、最悪の状況下の長篠城内に放り込まれたのでありました。」

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