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”のんこ”といた夏  作者: 夏みかん
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第5話

電柱を兼ねた外灯は、よく見れば木製だった。来た直後はパニくっていたのと、冷静に周囲を見渡す余裕なんかなかったからだ。俺たちは今、俺が飛ばされた場所の十字路に来ている。おじさんが現場を見たいと言ったからだった。夕方三時とはいえ日差しはかなりきつい。日を遮るものなどないこの場所はまさに灼熱地獄だ。おじさんは大きなテレビのリモコンのようなものを操作して何かを調べている。空へ向けたり地面に向けたりした後、ゆっくりと俺のズボンのポケットの方にその機械を向けた。


「そこに何が入ってる?」


そう聞くので携帯電話だと答えたら、それを出せと言う。言われるがまま電話を出すとその機械を電話に向けた。その瞬間、おじさんがうなるような声を上げるんで、のんこも俺も少し驚いた。


「こりゃ凄いな、数値がハンパない」


どうやらこの周囲にある磁場とは比べ物にならないパワーを発しているみたいだ。おじさんは俺から携帯を受け取るとまじまじとそれを見つめた。そのあまりに真剣な目に俺は声を出せないぐらいだ。


「全・・・このソフトワンクって、どこの会社だ?まさかインターネットプロバイダのあの会社か?」


おいおい、真剣に考えてたのはそこかよ。


「あぁそうだよ。携帯にも進出してる。この時代だと、モーダフォンかな?」

「モーダ・・・?」

「なんせデコモ、アーウー、ソフワンが日本の携帯電話会社ビッグ3」

「そうなのか・・・トゥーカーとか、なくなるのか?」

「そのうちわかるじゃん」


だんだんめんどくさくなってきた。俺はそう言うとため息をついて額の汗を拭う。横でのんこも暑そうにしていた。上空には太陽を隠す雲すらない。


「どうでもいいが、充電が残り少ないぞ」


ぼうっと空を見ていた俺はあわてて携帯を受け取る。未来のおじさんが携帯は未来と繋がっているから絶対に電源を切るなと言っていたのを思い出したからだ。あわててズボンのポケットから緊急充電用の電池パックを取り出し、充電口にそれを差し込んだ。これであと数時間はもつだろう。ホッとしたのもつかの間、このまま電池パックで持ち歩くのはかなりリスクが高いと思い途方に暮れる。この機種に合う充電器はこの時代にはまだないからだ。


「ほぅ、便利だな」


のん気な発言だよ、おい。まぁ、おじさんはそんな俺の心を知らないからな。


「この携帯は未来と繋がってるんだぜ?この電源落ちたらおしまい。時空崩壊ってことだよ!」

「わかってるさ。後で即席充電器、作ってやるから」


ムカツク。いつになく冷静にそう言うとにんまりと笑った。脱力しきりだよ。おじさんといたらいつもこう、疲れるんだよ。手玉に取られるってのか、なんというか。疲れた顔をしている俺を横目で見つつ、おじさんは機械をポケットにしまいこんだ。


「次元のトンネルというべき歪みはまだここにあるし、未来と繋がっている。あとは機材を揃えておけばいいかな。あとはその携帯さえ無事なら帰れるだろう」


その言葉にホッとしつつ、ある疑問が浮かんだ。俺は携帯を見ながらおじさんにその疑問をぶつける。


「あのさ、未来から電話かかってきたってことはさ、俺、無事に帰ったってことだよな?」


だってそうだろう?おじさんはいろいろ知ってる上に緊急充電用電池パックを送りつけ、過去のおじさんに指示をした。その時点の未来なら、俺は事故に遭った後ということになる。帰った後だとも思える。


「どうだろうな・・・事故の直前ってことも考えられるぞ」

「でも時間、時刻は過去も未来もほぼピッタリ同じだし」

「日付も何もかも同じ十年前ってなら説得力もあるけどな」

「じゃぁこの充電パックを送った事故の2日前にってことか?」

「それもある。もしくは事故から随分経ってからかもしれん」


あまりに否定的なため、イラついてきた。ここは嘘でも絶対帰れるという言葉が欲しい。


「俺は今のお前を前にして、結果として経験で全てを知ることができるわけだ。そして未来から過去の俺や、飛ばされたお前にアドバイスができる。だが、どの時点から電話をかければ通じるのかもわからない。そもそも、俺以外の相手から電話やメールが来ないのも不可解だ」

「う・・・」


そうだ。確かにそうだ。おじさんから電話はあったけど、それ以降メールも来ないし、連れからの電話もない。一方通行の電話だと言っていたけど、本当か確かめても無い。俺は携帯をいじって仲のいい友達に電話をかけてみた。けど、うんともすんとも言わない。まるで電源が落ちているかのように無音だ。


「あんまりいじると電池を食うぞ。とにかく今日は帰ろう。充電器作らないといけないし、いろいろやることもある」


おじさんはそう言うと俺に背中を向けてさっさと歩き出した。いろいろ不安になってきたけど、とにかく七日間乗り切ればいいんだ。そうすりゃ帰れるはずだ。俺は何も無いこの田舎の景色を見つつ、どう過ごしていこうかと考えていた。


「のんこちゃん、明日こいつと竜神川に釣りに行くといい。道具はあるからさ」


唐突になんだよ。大体竜神川ってなんちゅうありがちな名前だ。でもまぁ、暇つぶしにはいいか。


「わかった。行く」


のんこはあっさりと承諾した。しかしつくづく不思議な子だ。わけのわからない俺の世話をしてくれた上に、よく知らないおじさんの頼みごとまで聞いてくれる。素直なのだろうけど、ホント、一歩間違ったら事件や事故に巻き込まれるぞ。


「本当にいいのか?俺、君に変なことするかもしれないぞ?」


脅しじゃないが、一応そう注意を促す。もちろんする気はない。今のところは、だけど。


「うーん・・・そんな感じしないもん。するならもうされてるでしょう?」


ごもっとも。俺はロリコンではないし、はっきり言って巨乳好きだ。小学生の無い胸に興味は無い。でも、美少女なのんこにいつどうなるかはわからない。豹変しちゃうかもしれない、自分で言うのもなんだけど。


「ま、そう言うならいいさ」


少なくとも今後十年、この一週間の出来事は誰にも話せない。普通でもつらいこの事態に一番冷静に対応できているのはこののんこだけのような気がする。既におじさんの後ろについて歩くのんこの背中を見ながら、ただただ感心するばかりだった。だから前を行くおじさんの小さな独り言が聞こえなかった。


「案外、この子に会う為に飛ばされて来たのかもしれないな」


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