同族は嫌悪の素
「あれー?お前、インコ!インコじゃね?」
私の顔を見て、驚いた様子のちんちくりん君。然り。緋色員子は私の名ですが、何か?
「オレ!オレオレ!天賦の本家の!」
オレオレ詐欺はすぐに警察に。
「だーっ。わっかんねーかなー。オレだよ、王道!天賦王道!」
!!!
王道君とな?天賦王道、それはザッツ美少年。柔らか金髪猫っ毛に華奢な肢体。大きく潤む瞳はスカイブルー。可愛い男の子大好きのオバサマ連中は勿論、ショタに興味の無い堅物までもがその麗しい姿に軒並み道を踏み外したってんだからそりゃあ怖ろしい。ジャン・コクトーも真っ青のアンファン・テリブルが天賦王道なわけで。私がここ天賦麗学園の理事長の嫁の妹の娘なら、この天賦王道は理事長の兄の息子。遠くはあるが、親戚です。まあ、10歳までしか会ってないから、その後の成長っぷりは知らんがな。いや、だがしかし。いくらなんでも目の前のちんちくりんが、あの愛らしかった王道君の成れの果てだとは、神様は悪戯しすぎなのではなかろうか。ちらりと天賦王道(仮)のほうを見遣ると、無い胸をますます大きくはっている。その姿は見るからに貧弱ガリ勉君で、虚勢を張る様が痛々しい。それにしても、性格も全くの別人じゃないか?王道君はもっとこう、そう、私の兄の後ろに隠れていつもグズグズ泣いているような、内気でたおやかな性格だったような?
「てめー、インコ!覚えてないとは言わせねーぞ?お前が俺にしてきた嫌がらせの数々。オレのポケットにカナヘビを入れたり、オレのスニーカーの紐をザリガニ釣りに使ったり、おれのお気に入りのマグカップを女王蟻の巣にしたり…。」
そうそう、私、幼いながらに可愛い可愛いと周囲からチヤホヤされる王道が許せなかったんだよねー。いや、私って可愛いじゃん?だから今まで私が一番可愛がってもらっていたのに、それを全部取られたて悔しかったというのか、なんというか。まあ、お恥ずかしながらそういうことです。いやあ、我ながら子どもだったわぁ。
「え、えーっと?あなた王道君?本当にあの王道君?何か悪い物が取り憑いてない?お祓い、ちゃんとお祓い行った?あ、それとも、未確認飛行物体に連れ去られてITチップ埋め込められて、別人に乗り替わられたとか?あー、それとも、それとも。」
「あ?お前、本当に教職免許持ってんだろな?頭大丈夫か?こんなんが教師とか、世も末だな…。」
「なっ!あなたが変わりすぎなのが悪いんでしょう?あ、それともあなた、天賦王道の名を騙る悪いヤツでしょ?」
「ワルイヤツって…。このガッコで教師続けたいなら語彙増やしたほうがいんじゃね?インコおねえちゃん?」
インコおねえちゃん。そうだった。いつも王道はそう言いながら私のあとを付いてきてたんだ。グズグズ泣きながらも。なのに、なのに、
「なんで、こんなになっちゃったのーっ?」