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私立天賦麗学園二年S組  作者: のの
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千里の道も一歩からという名のプロローグ

ここは何処?私は誰?というのは冗談で、やってまいりましたよ、天賦麗学園。

パッチリとした二重瞼にハートマーク入りのクリクリした瞳、ほんわりピーチ色に色付く頬っぺはペコちゃんよりもツヤツヤ。透けるような美肌に、流れるピンクブロンドの髪の毛、握りこぶしほどしかない小さな頭…と人並み外れたカワイイ容姿には恵まれたものの、頭脳は平々凡々、並の大学に並の成績の私。カワイイは正義!ではなかった。就職活動開始とともに、当然のように舞い込んできた不採用通知の嵐。とびきりカワイイが特技の私は就職氷河期を乗り越えられず、自宅で不採用通知に囲まれながら悶々とする日々。そんな私にも現れましたよ、一条の光が!いやはや、教職免許を取っておいて良かった。そして、持つべきものはお金持ちの親戚だね。母親の姉の夫、平たく言えば叔父さんが、天下に轟くお金持ち学園、この天賦麗学園の理事長だったのです。そして、その紹介で、育休をとる先生の代わりにこの度めでたく私が採用されたってわけ。完全なるコネ採用でございます。でも、採用は採用!さらば、暗黒の日々よ。夜空を見上げると死兆星が見えたこともありました。でも!でもでも!これで私も勝ち組の仲間入りよ。ヒャッハー!

いやあ、採用が決まった時は、祝杯をあげたね。テキーラにテキーラ、テキーラ、テキーラ、テキーラ。悪友達に煽られて、テキーラショットの嵐。ラティーノもドン引きの呑みっぷりで、地獄の就活生活にお別れの雄叫びをあげたところまでは覚えているのだけれど、それからはふわふわ、ふわふわ。ところどころ思い出すのが、私を見つめる優しくて蕩けるような蜂蜜のように甘い甘い甘い笑み…。あれは一体誰だったのかしら。あの視線の主こそが私の小さな頃から憧れ続けた白馬に乗った王子様?

ああ、いけない、いけない。また現実逃避するところだった。ダメダメ。そんなことはさておき、今、目の前にそびえ立つコルビュジェ建築を彷彿とさせる白亜の豪奢な建物こそが、私のこれからの戦場、天賦麗学園なのです。私はこれから企業戦士として、学園の歯車の一端として、この煌びやかな戦場で戦っていかねばなりません。いざ行かん。

「おい。」

ん?

「おい。」

ん?

「おいって言ってるんだ。」

私はおいって名前ではありませんよ〜。

「おい、あんただよ。そこの頭悪そうなピンクの鳥の巣頭!」

えーと、それは、ツヤツヤキューティクルのピンクブロンドを砂糖菓子のようにふわふわと風に靡かせている私のことかしら?いや、まさか、ね?

「あんた、ここの教師だろ?…です。この門、早く開けろよ…です。」

……。

「おい、聞こえてるのかよ!…です。早くしねーと、しょっぱなから遅刻じゃんかよ…です。」

……。いや、あなた、口の悪さが文末の無理矢理な敬語もどきで覆い隠せてないから。

振り返ると、ん?なんだ、このちっちゃい子。ぶかぶかの制服に、美容院になど行ったこともないのだろうごわごわの真っ黒な髪の毛で顔の半分程までが覆われている。その下には今時どこで売っているんだろう?◯テレツ君のベンゾウさんでお馴染み、牛乳瓶底メガネが鈍い光を放っている。しかしながら、そんな軟弱な見た目とは反対に、胸を思い切り反らしている彼の態度は尊大だ。ええーと、ちょっと変わった子なのかな?私のクラスの生徒じゃないといいのだけれど。

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