迷宮攻略(55層)
本日二話目です。
異世界転生96日目の朝。
俺は獣公爵領の屋敷で起きた。
本日も皆、既に準備完了で待っている。
「……競争してる?」
「はい、ご主人様。
最初に最深部を攻略したパーティには、莫大な報奨が出されるとか。」
セントが狙っているのはそれか。
他にも色々と無駄な物を買っていそうだしな。
「配分比率は変えていないが、いいのか?」
「ジン様、当然のことです!
私は自分たちの力で解放されたいのです!!」
イリンは既に解放されても戻ってきたから、この話には関係ないよな?
「遅いぞ!ほら、シャキッと歩け!」
俺は迷宮前に来たわけだが、三人とも揃っている。
そのまま転移部屋に向かう。
「何かあったのか?」
「昨夜、別のパーティが60層を攻略したそうです。
つまり、私たちの記録に並ばれたと言うことです。」
「急がなくても、追い越せるんじゃないか?」
「それが新進気鋭のパーティらしく、Aランクもいるとか。
詳しいことが何も聞こえてこない所が、更に不気味ですし。」
それはアヤさん達だろうなー。
誰も噂をしないのは、初日の印象が強すぎたんだろう。
ってか、冒険者ギルドにいれば分かったんじゃないか?
「そのパーティを見てはいないのか?」
「なんでも早朝から深夜まで潜っているとか。
今日は深夜まで待つつもりですけどね。」
あー……ツヴァイに連絡させよう。
別に毎回冒険者ギルドに寄らないといけない訳じゃないからな。
俺は地下迷宮の40層を攻略している。
通路の突き当たりには、今までとは違い、
前方だけではなく、左右にも扉が設置されている。
「どっちに進む?」
「好きな方でいいぜ。」
あれ?ダイスには聞かないのか?
「直進が確かだが、今回は右かもしれない。
ここからは、扉が閉まる度に構造が変わる。」
「そういうことだ。右に行くぞ。」
「……あぁ。」
難易度上がり過ぎだな。
アヤさん達はよくこんな迷路を20層分も攻略できた物だ。
扉を開けて、全員が通路に入る。
後方の扉が閉まったと思ったら、照明が落ちた。
その瞬間に、絵画から矢が襲ってくる。
まるで見えているかのように、セントは盾で、
クーペは短剣、ダイスに至っては屈んで避けている。
「厄介な罠かと思ったが、セント達には楽勝かな。」
「初見殺しなだけで、分かっていれば簡単だ。」
簡単って言い切れるのは、俺やアヤさんのように、
事情があってAランクになったわけではない彼らだから言えることだな。
まぁ、俺には暗さなんて関係ないが。
この通路の先も、先程と同様に三つの分岐がある。
ダイスに期待するしかないな。
異世界転生96日目の夜。
俺は地下迷宮55層の転移部屋から帰還した。
「今夜は、件のパーティが来るまで待つんだよな?」
「そのつもりだぜ!ジンも一緒にどうだ?」
「セントに奢って貰うとしよう。」
「おい!なんのことだ!?」
「我は当然覚えているし、ジンだって忘れるわけないだろう。」
「でも昨日は!」
「クーペ、ギルドの飲み屋って何があるんだ?
利用したことないんだよな。」
「そうなのですか?
一般的なお店よりは安いですよ、高い物はありませんが。」
「今は厳しいって言ってるだろ!」
「マリンちゃんも呼んでやるからいいだろ?」
「よし行こう!走るぞ!!」
ありがとうございました。




