ドラゴンの値段
異世界四日目の朝。
俺は宿屋で起きた。
この宿屋も今日までか。
まぁ、今日中に大金が手に入る予定だからな。
朝食を頂きながら、昨日の事を聞いてみる。
どうやら、俺がやらかした惑星破壊は神の天罰と言うことで落ち着いたらしい。
他にどのような説明も不可能だから、仕方ないのかも。
いくら現代地球だって、地殻内まで一度に破壊する兵器はないのだし。
核兵器を連続使用すれば可能だろうけど。
別れの時間だ。
「おやっさん。大変お世話になりました!」
「元気でな。」
相変わらず、いいおやっさんだな。
この宿「鎚の亭」絶対に忘れない。
まぁ、先払いしたお金は帰って来ないが。
商業ギルドの周りは、まさに戦場だった。
怒号も飛び交ってるし。
まぁ、それだけの発注をしたわけであるが。
ギルドの中に入ると、既にシュッタルト氏は待ち構えていた。
「遅くなり申し訳ありません。すでに出発の時間でしょうか?」
「いえいいえ。こちらが早く来すぎただけですので。出発は今すぐでも構いませんよ。」
うん、そんなに笑顔にならないでシュッタルト氏。
気持ち悪いから。
「では、参りましょう!」
「こ、これほどとは…」
シュッタルト氏は言葉もないようだ。
まぁ、一頭につき金貨一万枚にもなるドラゴンが12匹じゃねぇ。
昨日のことから分かるように、ドラゴンは強大だが弱気でもあるらしい。
多少の手傷を負わせるだけでは、逃げられてしまって狩ることはできない。
うん、分かるよ。
転生初日に、俺の頭上を通って行ったよ。
今生において、最大の敵はドラゴンかもしれない。
そんな人生嫌だ…。
俺の最大の敵は、ハーレム要員間の調整にしたいんだ!!
「ほぼ無傷のドラゴン12匹、いくらになりますでしょうか?」
俺はとっても笑顔で催促した。
「そうですな…。一頭につき、金貨一万五千枚で如何でしょうか?ただ、分割払いを前提とした値段ですが。」
「半分の金貨九万枚については、すぐにお支払い頂けるのであれば構いません。」
因みに、金貨の上には白金貨、魔金貨とあるようだが、
ランクが高い商人じゃないと扱うことすらできないらしい。
「残りは、来年と再来年に半分ずつでよろしければ…」
シュッタルト氏、顔色が悪いよ。
まぁ、分からなくもない。
要は俺がこれだけのドラゴンを狩る武力と関係があることが証明されたのだ。
機嫌を損ねたら、都市ごと消えることも分かっているだろう。
そんなシュッタルト氏を脅すのも可哀想だ。
でもねぇー。
「実は、欲しい物がありましてね。」
「なんで、ございますですでしょうか?」
うん、言葉がおかしいよシュッタルト。
「近々、王都で奴隷オークションが開催されるとか。特に今年は近年希に見る商品がそろっているとかで、VIP用の招待状が欲しいのです。」
「喜んで、手配させて頂きます。」
お、案外あっさりと。
VIP用招待状とは、オークション前に現物及び略歴を知ることが出来る特別なものだ。
まぁ、これらの情報の殆どが宿屋のおやっさん経由だがな。
食事しながら質問するって、割と効率的。
「いつ、頂けますでしょうか?あと一週間ほどで開催と小耳に挟みましたが」
「商業ギルドでは、お得意様用に常に準備がございます。ギルドに戻りましたら、金貨9万枚と共にお渡しすることができます。」
こんなところで点数を稼いでくるとは。
恐るべしシュッタルト氏。
でも、その勘定の中に俺の移動速度は計算に入っているのかな?
入っているか。
アバストスから王都まで、普通に行けば三ヶ月はかかるんだし。
「では、その条件でお譲りいたしましょう!」
「ありがとうございます。ジン様は商業ギルドの発展に大いに貢献頂けると確信しております!」
まぁ、その後が大変なわけだが。
そもそもドラゴンをどうやって運ぶのか。
牛や猪の進化版のような従魔に引かせるのだが、ドラゴンは大きすぎる。
そこで、職人が片っ端からばらばらにしていく。
まぁ、職人だけあって価値を損ねるようなことはしないと思うが。
うん、俺はシュッタルト氏と先に帰ろう。
嫌とは言わないだろう。
商業ギルドの応接室に通された。
これは、取引相手として正式に認められたと言うことだろう。
「では、こちらが代金と招待状になります。サインをお願いできますでしょうか?」
「はい。確かに頂きました。」
同一の書類二枚にサインをして、お互いが保管する。
このあたりは、日本と変わりは無いらしい。
「来年、再来年の分につきましてはジン様の口座に入金と言うことでよろしいでしょうか?」
「はい。そのようにお願いいたします。」
商業ギルドでは、商人毎に口座を開設している。
要は銀行みたいな物だ。
俺は、金貨9万枚は現物で持って行くが、残りは口座に入れて貰う事にした。
結局特別に、魔金貨9枚にしてもらったがな。
商業ギルドであっても、9万枚の金貨なんてすぐに用意できなかったらしい。
そこで俺の商業ギルドカードはこうなっている。
ランク1(魔金貨使用許可)
うん、分かりやすい。
「それでは、」
と、席を立とうとしたところ、シュッタルト氏が何やら懐から取り出した。
「実は、王都には商業ギルドの王都本部がございまして、ジン様のように聡明なお方には紹介状が必要と持参させて頂いた次第です。」
利権に巻き込むなよな。
まぁ、貰っていくけど。
「では、ありがたく頂戴いたします。また、いつの日にか」
「本日は、ありがとうございました。」
さて、力もお金も手に入れた。
次は奴隷ハーレムだな!
ありがとうございました。