魚人種の国
異世界転生85日目の朝。
俺は艦艇の部屋で起きた。
皆は海から昇る朝日を見に行っていたので、今は寝ている。
「我が神よ。報告書です。」
俺は船の改造点を確認する。
装甲が薄くなっていたり、艦橋が高くなったり、
俺が思いつきで改造した部分が改良されている。
昨夜一番の改良点は、甲板生活だった奴隷兵に大部屋が与えられたことかな。
まぁ、良い船になったならいいんだけど。
後々直すことが分かっていても、アインは遊ばせてくれる。
俺は艦橋から砲撃を見ているんだが、一向に止む気配がない。
魔獣に次々襲われていて、奴隷兵のレベルが順調に上がっているらしい。
他船が近海しか航行しない理由がよく分かる。
「こ、ここは、地上の者が、来るところではない。」
書類仕事をしていたら、魔獣に紛れて魔族が攻撃してくる。
俺が甲板に着くまでに、殆ど殲滅してしまったらしいが。
いや、恐怖を植えつける為にやったのかな。
「見た目が半漁人だから、半漁人種だよな?」
セイレーンとは違って、人と魚を合わせた感じだ。
「ご主人様、半漁人種ではなく魚人種です。
既に滅んだと思われていましたが。」
まぁ、こんな遠洋には誰も来なかっただろう。
彼らが陸地に近付かなければ、気づかれないしな。
「ねぇ、魚人種。魚人種の国、何処かな?」
「……教えることは、出来ません。」
「仕方ないなぁ。」
頑強な魔族相手だ、誘拐犯達の手法を真似しよう。
身体的な傷は光魔法で癒やし、精神的な傷は闇魔法で癒やす。
壊れず死なず、辛い時間が続くだけ。
もちろん、彼ら自身に魔法は使わせない。
「アイン、進路を魚人種の首都へ。」
「仰せのままに。」
直ぐさま巫女天狗が、偵察の為海中に突撃していく。
氷魔法を用いれば、海水の抵抗は抑えられるからな。
まず、兵士運搬用にコンテナ兼シェルターを作る。
本来機関銃が必要なんだろうが、研究施設に要請しておこう。
異世界転生85日目の昼。
俺は魚人種の残りの尋問を任せて、釣を楽しんでいる。
「我が神よ。明後日の朝に到着致します。」
「セシには予定通り着きたいから、
準備が出来次第、転移魔法で行こう。」
「仰せのままに。」
ここからセシに行くよりは近いが、往復するのが面倒な距離だ。
作業の残りは、兵を詰め込んでドラゴンを呼ぶだけだしな。
異世界転生85日目の昼過ぎ。
俺たちは魚人種の首都にやってきた。
まだ海上だけど。
まず氷魔法を用いて船底の海流を循環させ、船をこの位置に留まらせる。
次に、周囲の海水以外を地底まで含めて円柱状に取り除き、海底都市を露出させる。
要は海を割ったわけだが、深くて光が届かない場所もあるな。
兎に角、先に攻撃してきた国に、宣戦布告は必要ないよな?
まぁ、海水がなくなったことで落下している魚人種が一杯いるんだが。
「攻撃開始!」
榴弾砲により、魔法等遠距離攻撃をしてくる魚人種を狩っていく。
その間に散弾銃を装備させた奴隷兵を、アイスドラゴンが各地点に運搬する。
運搬後は、アイスブレスによって、集団行動を取ろうとしている敵兵を殲滅させる。
中心部の高い建物は、自重で崩れだしている。
逃れようと高官達が一斉に脱出しているが、着地地点には奴隷兵が待っている。
うん、急に陸に打ち上げられたら困るよな。
ありがとうございました。




