騎士と王国軍
異世界転生79日目の昼。
俺達は街を目指して、森の外周部を進んでいる。
偵察中の騎士達を倒しながらな。
伯爵ら御一行は、あと一刻ほどで街に到着する予定だ。
ドラゴンからは降ろして、今は公国の紋章付馬車で運んでいる。
正確には、ケンタウルス車だが。
「ジン!行くぞ!?」
「はい!」
此度の騎士達も、無事に片付けて街に向かう。
まぁ、そろそろ隠れるのも難しくなってきた。
<スキルがレベルアップしました。>
お、スキル確認っと。
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スキル:健脚(1)
剣術(1)→(2)
炎魔法(10)
氷魔法(10)
雷魔法(10)
石魔法(10)
眷属召喚
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剣術のスキルレベルが上がっている。
初心者から初級者になっただけで、そんなに上手くなったわけではないが。
要した期間は、二ヶ月ほどか。
まぁ、あまり剣を使っていない割には、早かった気がする。
成長補正がスキルに及ぼす影響は、ごく僅かなのだろう。
「ジン、迂回して他の街に行きましょう?」
俺達は街の城壁が見える距離まで辿り着いた。
見えてきたのは城壁だけでなく、王国軍もだが。
四男は相当入れ込んでいるらしい。
巫女天狗を誤魔化すために、僅かな騎士を残しただけなのだろう。
もちろん、巫女天狗は演技しているだけだが。
「迂回するのは難しいと思います。
時間をかければ、後ろからの追っ手に見つかりますよ。」
「やっぱりそうよね…。
強行突破かぁ、ちょっと自信ないかも。」
僅かに震えていても、前に立ってくれている。
うん、アヤさん格好いいです!!
「本陣、落としちゃいましょう!」
「はあ、貴方ねぇ!少しは真面目に考えなさいよ!?
絶体絶命の危機なのよ!!」
「そこはほら、指揮官落としたら暫く追撃はないかなと?」
「確かに時間稼ぎにはなるかもしれないけど……。
無事切り抜けたら、責任取って貰うわよ?」
えっと、どういった責任でしょうか。
既に、アヤさんは走り出しているんだけどな。
まさかの逆プロポーズか…?
まぁ、そんなつもりだったからいいけどさ。
俺達が本陣に向かって走れば、王国軍としてはいい的だ。
まずは遠距離から、魔法によって攻撃されている。
氷の盾を使って逸らすが、接触時に効果を撒き散らす類いは面倒だな。
まぁ、魔法使いの数が少ないみたいだからいいけど。
魔法を処理しつつ距離を詰めれば、今度は弓矢によって攻撃される。
一斉射撃されるが、矢を強風で薙ぎ払う。
魔法と弓等が入り乱れる攻撃になっても、進む速度は変わらない。
走っているだけのアヤさんも、ちょっと辛そうだ。
3分の1程消化した頃から、騎乗した騎士に突撃されるようになった。
数人で攻撃してくるこれらとは別に、周辺を索敵していた騎士達が、
本陣前に呼び戻されているようだ。
おっと、集まった騎士達が三列横隊で突撃してくる。
馬の運動エネルギーも利用して、押しつぶすつもりだろう。
「ジン、どうするの!?」
「正面から受け止めます。」
「無理だからー!!」
そんなこと言っていても、どこかアヤさんは楽しそうだ。
剣と槍では間合いが違うが、俺の剣と騎士の槍では速度が違い過ぎる。
突進してくる馬も、適当に放り投げる。
半分ほど蹴散らすと、警戒して俺達の周りを回り出した。
「アヤさん、少しずつ進みましょう。」
アヤさんにも、少し休憩が必要だろう。
返事もないしな。
アヤさんの周りに、酸素を生成してあげよう。
騎士達は複数の方向から、同時に攻撃することにしたようだ。
頭上からは、魔法による攻撃を加えてな。
まぁ、交互に撃退するだけだが。
更に半数ほど数を減らすと、騎士達は逃げていった。
馬を捕まえて、アヤさんの後ろに乗る。
これで、本陣までさっさと行こう。
伯爵も到着したようだしな。
騎士は諦めたが、王国軍は諦めていない。
遠距離攻撃をしながらも、歩兵が槍を構えて迎え撃つ体制を整えている。
歩兵の間からは、バリスタが狙っている。
四男と揉めていた伯爵は、強硬手段に出たようだ。
側近同士が争っている姿が見える。
それでも、歩兵は前進を始めた。
伯爵が来たことで、命令系統が混乱しているのだろう。
俺は歩兵が乗る地面を、石魔法を用いて左右に移動させる。
王国軍が割れ、伯爵達が丸見えだな。
「アヤさん、行きましょう!」
「任せて!!」
混乱の中、最後の抵抗をしてくる兵もいるが、氷の盾で防ぐ。
伯爵達は諍いを中断して、俺達を迎え撃つようだな。
俺達は馬を下りて、側近達の相手をする。
魔法を撃ってきた者には、より強力な魔法を撃ち返す。
武器を持って立ち塞がる者には、間合いを詰めて前蹴りをお見舞いする。
伯爵達の顔色が悪くなっていく。
残りは伯爵家と文官だけかな。
こちらに頭を垂れる巫女天狗によって、伯爵は事態を悟ったようだ。
腰、抜けちゃってるよ?
ありがとうございました。




