「万能薬の材料」
本日一話目です。
異世界転生64日目の夕方。
俺達は材料の生息地に辿り着いたわけだが、
目の前には見上げる高さの城壁がある。
まぁ、魔領域深くまで馬車が通れる道が整備されていることが、
おかしいなとは思っていたが。
道自体は、城壁を囲うように続いている。
「何これ?貴方知ってた?」
「いえ、どういうことでしょうか。」
「もう日が暮れるから、今日は休んで詳しくは明日ね。」
「分かりました。
枯れ枝拾ってきますね。」
「待ちなさいよ!
少なくとも、城壁から見えない場所まで離れてからよ!」
「アイン、補助よろしく。」
「仰せのままに。」
まぁ、アインから報告がなかったという事は、
その方が俺が喜ぶと判断したからだろう。
既に調査済だろうしな。
異世界転生65日目の朝。
俺は獣公爵領南方の魔領域で起きている。
そろそろ、アヤを起こさないとな。
「アヤさん、朝ですよ?」
「ジンか、おはよう。」
「朝食にしましょう。」
「…美味しい。」
俺達は城塞都市を観察中だ。
城壁からかなり距離を取り、木々に紛れてな。
「貴方、あの門の大きさについて説明しなさい。」
「大きな種族なのでしょう。」
「そんなこと分かってるわよ!
さっさと逃げるわよ。」
アヤは何がしたいんだ…。
でも、逃げると言っても無理だと思うけどな。
既に銃眼から監視されている。
道に出る頃には、巨大な門が動き出している。
門が完全に開く前に、魔族達が飛び出してきた。
「ちょ、ちょっと…。
ジン、貴方はケンタウルスに乗って先に行きなさい。
馬車は勿体ないけど、捨てて行くのよ?」
うん、アヤさん格好いい。
剣先が震えているけどな。
涙目は見せてくれないらしい。
「分かりました。先に行きます!」
「ええ、すぐ追いつくから前だけ見てなさい!
って、ちがうーっ!!」
俺はケンタウルスを駆り、魔族に向かって突撃する。
アヤさんの罵声は聞き流そう。
あとで、こっぴどく叱られそうだ。
魔族の身長は三階建てはある。
武器はハルバード、身軽に走ってくる。
「アヤさんを守ってあげてて。」
アヤさんとの距離が開いたので、ケンタウルスには戻って貰う。
近くにいても邪魔だからな。
俺は先頭の魔族に向かって、ゆっくりと走り出す。
普通の冒険者らしく、チクチクいってみよう!
盾は持ってないけどな。
アヤさんまで到達しないように、出てくる全員をチクチクする。
チクチク、チクチク。面倒だな、チクチク。チクチク。
あ、剣折れた。
アヤさんの悲鳴も聞こえたが、俺の剣が折れたからだ。
それでも、自身の剣を投げてくれる辺り、しっかりしている。
…俺まで届かないけど、ここはアヤさんの剣を使わせて貰おう。
十体ほど行動不能にすると、一回り大きな魔族が出てきた。
「我らの都市を知られた以上、生きて帰すわけにはいかぬ!」
いやいや、獣公爵領から道続いているから。
「万能薬の材料があると言われて、来ただけですよ?」
「っ!それを早くいわんか!!」
魔族に怒られた。
ありがとうございました。




