報酬は伯爵領
異世界転生23日目の朝。
俺は西の離宮で起きた。
昨夜、全裸で帰って来たら、ネプに浮気を疑われた。
弁明していると、リルエルまで参戦してきたが、俺はさっさと寝た。
起きたら、リルエルと一つになっていたが。
そういえば、領地を貰うまで退屈しないように、迷宮攻略してたよな?
僅か、一日で攻略してしまったよ…。
あの蛇の鱗を何枚か持って帰って来たんだが、加工できる人間いないよな。
何万、いや何億度になって、初めて蒸発する鱗なんて考えられない。
俺と同じように、レベルが高かったんだだろう。
奴隷娘達のウインドドラゴンの防具を、この鱗を使ってスケイルアーマーに改造しよう。
余った物は、ネプのは住処にでも隠しておけば安全だ。
防具を装着させながら改造したのが悪かったのか、既に昼過ぎだ。
俺達は「眷属召喚」を試そうと、西の離宮の庭園に来ている。
西洋風の異世界で、眷属が天狗なのは、俺が日本人だからだろう。
国内で外国人に話しかける時、「こんにちは」というのは常識だろう?
なぜ国内で「ハロー」と最初に言わないといけないんだ。
いや、ここは異世界だがな。
痛いのは嫌だが、指を噛み切ろう。
血の量と魔力の量で、眷属の強弱が決まるらしいので、血は少なめ魔力多めで召喚しようと思う。
出てきた血を半分にして、それぞれを更に半分にして、を繰り返して、
1024個に分かれた血一つ一つに、見える限り全ての恒星を消し飛ばせる魔力を注ぐ。
血が膨張して形作ったのは、巫女服を着た天狗だった…。
天狗は山の神で、巫女は依り代だけども。
つまり、俺の従属神かつ依り代だから巫女天狗なのか?
どっちかにして欲しかった…女だけど抱く気になれない。
いや、だからシンクロして舞わないで!
言うことは聞くけれど、俺に言葉を発してくれない1024人に対して、
俺は待機しか命じられなかった。
まぁ、食料とか必要ないからいいけどさ。
これは、領地を早く貰うしかない。
異世界転生24日目の朝。
俺は西の離宮で起きた。
今朝は珍しく、ネプが誘ってきた。
ネプの上半身、リルエルの下半身、イリンの声がお気に入りだ。
もちろん、マイの笑顔が一番だがな。
「領地をくれ。」
俺は王の執務室に乗り込んでいる。
もちろん、王族の生活空間にある私的な方だ。
護衛は俺を知っている騎士ばかりだから、手出ししていない。
宰相になったらしい公爵は無視だ。
「ジン…。僕に時間をくれるはずじゃなかったかい?」
「事情が変わってな。偉い奴の伝手を辿ればできるだろう?」
「この部屋ではなく、公式な執務室に行こう。
文官達を集めれば、なんとかなると思う。」
「報酬には、この準男爵領が適当かと。」
フーリゲのお茶を頂きながら、壮年の文官の話を、
大まかな地図を見ながら聞いている。
価値の低い領地を宛がうのが普通だろうな。
俺が何をしたのか、この文官達は知る由も無い。
まぁ、フーリゲ自身が俺にお茶を煎れた事実を、
消化できていないだけかもしれんが。
「俺は水量の多い川の、源流から河口までの領地が欲しい。」
「ジンは難しいことを言うね。該当する直轄領はあるかい?」
「該当致しますのは、王都近くのメールン直轄領しかございません。
山から海まで、馬車で二日ほどの急流を持つ領地になります。
しかし、王都から五日の要所にございます。」
「良さそうだ。詳細を教えてくれ。」
文官は一旦王をみるが、フーリゲは頷くだけだ。
渋々であろうが、文官の説明をまとめると以下の通りだ。
1.メールン川の源流は未踏峰の山々。
2.急流のため氾濫が多く、河口にある城塞都市ルーメンも、一千人程しか住んでいない。
3.しかし、王都からルーメンまで馬車で五日、重要な防衛拠点であること。
「僕にはジンの要望を満たす領地だと思うけど、他に要望はある?」
何度も何度も「防衛拠点」である点を強調した文官が哀れだが、
確かに要望に沿った領地だ。
「王都とは逆側、ルーメンの東側の領地も欲しいな。」
「それなら、この辺も纏めて報酬ということでどうかな?」
フーリゲの「この辺」とは、ルーメン東側にある次の山々までだ。
つまり、ルーメン川流域一帯を貰えるらしい。
「異存はないよ。ただ、文官と騎士をかなり調達して欲しい。」
「もちろん構わないよ。騒動の処分として、左遷するのはよくあることだからね。
文官は新規に伯爵領が運営できる数、騎士団は一つか二つ、準備できると思う。
今日は、ジン伯爵誕生の記念日だ。」
「ま、よろしく頼むよ。」
こうして俺は、伯爵領を貰った。
ありがとうございました。




