地下迷宮の最深部
異世界転生22日目の昼過ぎ。
俺達は迷宮地下十五階の転移部屋にいた。
この転移部屋も、問題なく使える。
そもそも、オーガ集団は転移部屋を利用しているようだ。
地下十一階からここまで、オーガの集団と立て続けに戦闘になった。
既に、イリンとマイは疲れ果てている。
リルエルすら、魔法の発動に時間がかかるようになった。
ここからは、奴隷娘達はネプに任せて、俺が戦うことにしよう。
地下十階から十一階と同じように、地下十六階への階段は存在しない。
五階毎に、階段がなくなっていそうだ。
床を蒸発させて、十六階に降りていく。
攻略気分も味わったので、探査系の魔法を用いて、地下への最短距離を目指す。
一応、階段がある場合は使うようにするが。
迷宮地下十六階~二十階。自動車サイズの熊の魔獣、所謂ビックベア。
突進してくる巨体を、ファイヤーストームで丸焼きに。
ネプが一口ずつ味見をしているが、何処を食べているかは見たくなかった。
迷宮地下21階~25階。トラックサイズの狼の魔獣、所謂ウルフ系。
倍以上に広くなった通路を活用して攻撃される。
前後左右の連係に対して、高温の空気を撒き散らす。
もちろん、真空と氷の壁を周囲に作っているから、俺達には僅かな音しか届かない。
迷宮地下26階~30階。大型トラックサイズの象の魔獣、所謂ヘビーモス。
……攻撃してこなかったので、放置!
迷宮地下31階~35階。十一階から現れたオーガ。
前衛後衛関係なく、次から次へと襲ってくる。
無駄撃ちが多くなるが、アイスレインを発動し続ける。
俺は迷宮地下36階にいる。
奴隷娘達とネプは、地下35階の転移部屋を使って、迷宮から帰した。
少しでもレベルを上げようと、石を投げたりしていたがな。
36階の魔獣は、所謂ハイオーガだろう。
オーガよりもやや小柄ながら、筋肉のつき方がマッチョだ。
鎧は魔法金属製に変わり、斧と盾を装備して、俺を取り囲もうと移動している。
目の前のハイオーガに、雷魔法を用いて直撃雷を食らわせる。
眩しい…。
うん、残りはペッタンにしよう。
雷の轟音のせいで、ハイオーガが集まってくる。
まぁ、ペッタンするだけだからいいんだけどさ。
移動速度を上げて振り切ろう。
俺はハイオーガの索敵から逃れた。
もう地下38階だがな。
迷宮攻略も飽きてきた…。
魔獣を倒しながら階段を降りて、また魔獣を倒しての繰り返し。
自身以上に強力な武器防具が考えられず、宝箱も全スルーだしな。
ごく希に、レアアイテムがあるらしいが、そこまで探す気にならない。
あと、鉱物を採掘するなら、石魔法を用いて生成した方が楽だ。
床を蒸発させて、さっさと最深部まで降りてしまおう。
階を降りるに従って、通路の幅も高さも広くなっていく。
ここまで広いと、壁がぼんやり光るだけではよく見えない。
何か大きい魔獣が近くにいても、ただペッタンの餌食だ。
迷宮地下80階…110階かも?
数えるのが面倒になって、もう何階か分からないんだがな。
この階でも床を蒸発させようと、ファイヤーボードを下方に向かわせると、鱗が見える。
鱗一枚だけで、二階建て程の高さがある。
炎を周囲に発生させ、状況を確認すると、蛇がいた。
トンネルを何本括ったら、この太さになるんだろうか。
おっと。
蛇さんはお怒りのようだ。
俺を食べようと、襲ってくる。
「んがっ」
蛇の攻撃は、音速を超えているようだ。
頭を避けたら、衝撃波に襲われた。
ああ、俺の服が…。
とりあえず、頭と首を少し残して、ペッタンする。
……いやいや、効いてないってどういうこと!?
鱗が綺麗に輝いたり、少し煙が出たりしか変化がないよ!
えっと、温度を上げればいいのか?
<新たなスキルを獲得しました。>
うん、どれ程ペッタンの温度が上がったかは分からないが、
蛇の大部分を蒸発させることができた。
周辺の空間、迷宮の壁と地盤?も、一緒に蒸発しているが。
俺の周囲は、量子魔法を用いて、温度を固定していたから平気だ。
スキル確認っと。
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スキル:健脚(1)
剣術(1)
炎魔法(10)
氷魔法(10)
雷魔法(10)
石魔法(10)
<未選択>
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ぽちっと。
選択肢を確認したが、「鑑定」や「予知」などのレアスキルばかりだ。
人や物、魔獣の名前が分かる「鑑定」も欲しい。
未来を知ることが出来る「予知」も欲しい。
だが、俺が選んだのは「眷属召喚」だ。
異世界において、信頼できる人間は限られている。
領地を開拓するにせよ、商売をするにせよ、人材不足は深刻だ。
本来は、魔族の中でも悪魔に分類される種族が持つスキルなんだろう。
自身の血と魔力によって、異世界から眷属を召喚するスキルだ。
まぁ、俺の眷属は天狗らしいがな。
とりあえず、西の離宮に帰って服を着よう。
ありがとうございました。




