エルフ王族の結末
異世界転生20日目の深夜。
俺は王城の上空に転移した。
敷地の内外に、多くの騎士団が見える。
この数も減らさないと、エルフがハイエルフを奪還できても、脱出できないな。
雷魔法を用いて、騎士周辺の酸素を上空に集めよう。
酸素濃度を下げすぎると、一呼吸で死ぬって聞いた事もある。
徐々に減らしていこう。
お、騎士達が倒れだした。そろそろ、止めよう。
殆どの騎士を倒れ込ませたから、これで十分だと思いたい。
俺には次の仕事があるからな。
「ネプ、フーリゲが何か言っていたか?」
俺は西の離宮に借りた部屋に戻ってきた。
当然と言うべきか、ドアが新しい物に変わっていた。
豪華な装飾がなされていたはずの天井も、一部差し替えられたようだ。
奴隷娘達は、やや寒そうに寝ている。
あれ?絨毯が全部変わっているような?
「ジンへの報酬に悩むことになりそうだと、い、言っておったぞ??」
ネプは小刻みに震えている。
まぁ、俺が蜜を味わっているからなんだが。いい香りだ。
皆の無事も確認できた。
次は、フーリゲに会いに行く。
まだ、あのテラスがある部屋にいるだろう。
「ジン!父達は……どうなりました?」
「会議室に、生き残りはいない。それで、王城に行く準備は?」
フーリゲも覚悟はしていたんだろうが、言葉に詰まっているようだ。
深呼吸しだしたが、ここは待つことにする。
「すいません。準備は出来ていますが、ジンには騎士の出で立ちで同行して貰いたいのです。」
「…顔を隠せるなら是非そうしたい所だが、俺には騎士の剣技なんて出来ないぞ?」
「基礎だけ身につけて貰えれば構いません。その間に、最終確認をしてますので。
それと、ステファー公爵はジンの事について、口出ししないと約束して下さいました。」
<新たなスキルを獲得しました。>
フーリゲ達が、人員や荷物の確認をしている間に、
近衛隊長から基礎の型を習っているところだ。
ステータス確認っと。
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名前:ジン・アサイ神様
種族:表記不可能
レベル:4643
生命力:表記不可能
魔力 :表記不可能
体力 :表記不可能
知力 :表記不可能
俊敏力:表記不可能
スキル:健脚(1)
new 剣術(1)
炎魔法(10)
氷魔法(10)
雷魔法(10)
石魔法(10)
ギフト:成長補正(10→10→10→10乗)
魔神
空間魔法(10)
時魔法(10)
量子魔法(10)
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うん、名前がおかしいのはいつからだ…。
隠せるからいいけどさ、名前じゃなくなってるよ?
分かっていたことだが、獲得したスキルは「剣術」だ。
つまり、ただ剣を振り回すだけだと「術」ではないということか。
「健脚」のレベルが上がっていないのは、根本的に運動不足だからだな。
魔法は嬉々として発動している間に、レベル10になったが。
スキルを覚えてからは、順調に消化した。
スキルは技術を認定するだけではなく、技術に補正を与える効果もあるようだ。
異世界転生21日目の明け方。
俺は騎士の剣と鎧を身に着け、馬に乗って王城を目指している。
隣のフーリゲと後ろの公爵、及び第二王妃は礼服だが、周りの騎兵達は完全装備だ。
もちろん、俺の馬は近衛隊長に先導して貰っている。
乗馬が出来る日本人なんて、少ないだろ?
ある休日明け、先輩社員様の顔に酷い痣があった。
俺が旅行している間に、落馬したとかで痛いと仰る。
俺は頻繁に氷を買いに行かされ、集中できないと仰せになる先輩社員様のスケジュールを押しつけられた。
俺の旅行は続く。馬に乗れないなら乗るんじゃねぇ!
止めよう、昔を思い出すのは。
俺は時々現れるエルフを狩りながら、順調に王城近くまで来た。
近くとはいっても、遠目に現状が分かる程度の距離だが。
エルフは脱出を試みているらしい。
騎士達の妨害を突破できないようだが……もう騎士は回復したのか。
人工呼吸があるかも分からず、手加減し過ぎたな。
まぁ、よく知りもしないガス中毒の難易度自体が高かったが。
麻酔薬!と魔力に念じて発生すれば良かったんだが、自然に存在する物しか発生させられないらしい。
単に石と念じて発生させても、その辺の石と変わらないしな。
莫大な魔力を消費すれば、自然物である限り、要望通り作り出せるが。
因みに、周辺に存在する物を操作するのは、それほど魔力を消費しない。
兎に角、騎士達にもう一度酸欠を味わって貰う。
崩れた騎士に構うこと無く、エルフ達は王都の外へ向かっていく。
担がれた二人が、ハイエルフだろうか。
その二人を担ぐエルフだけ女だ…残念、ハイエルフは逃がしてやりたいからな。
「我が騎士よ!賊を捕らえろ!!」
騎士達は、フーリゲの存在に気付いたようだ。
気付いただけで、足下も覚束ないがな。
エルフに、フーリゲが重要人物だと感づかれたか。
攻撃しようとしたエルフだけ、狩っておく。
一応、フーリゲの護衛としてここにいるしな。
騎士団が追撃するよりも速く、エルフは見えなくなった。
ありがとうございました。
作中に過激な表現がありますが、創作上のことです。




